お知らせ

2020.07.01

【PRESS RELEASE】新型コロナ第2波、対策済みの病院14%
半数が未だマスクなど調達に支障(GHC調査)

 病院経営のコンサルティングなどを行う株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC※1=本社・東京都新宿区、代表取締役社長・渡辺幸子)はこのほど、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う病院経営への影響について、アンケート調査とデータ分析を実施しました。


 アンケート調査は137病院が回答。回答結果を集計したところ、新型コロナ感染者拡大の「第2波」に備えた対策を実施済みとしたのは13.6%と全体の約1割でした。新型コロナ感染者の診療に必要なマスクなど消耗品調達に支障があると回答した病院は全体の約半数で、未だ診療に必要な物資が行き渡っていない状況が明らかになりました。


 また、合わせて新型コロナ患者を受け入れた179の急性期病院のデータを分析。重症患者の死亡率は7.5%であることなども分かりました。


入院患者の面会制限、「解除時期未定」8割


 今回の調査結果は、GHCが実施している「医療機関特別支援企画:新型コロナの影響 分析・レポート」の第1弾です(詳細はこちら ※2)。以下は本企画におけるアンケート結果とデータ分析の一部抜粋になります。


 アンケートは、調査結果にタイムラグが生じやすい病院の経営データ分析と比較し、病院経営の「今」を知るのに適した調査方法であることに加えて、データ分析から読み取ることができない定性情報を収集することを目的に実施(最新の定量情報の分析結果はこちら)。有効回答数は140件(回答病院数は137件)。アンケートの実施期間は6月1日から22日まで。回答した病院は、比較的病床規模が大きく、重症患者に対応する急性期病院で、「DPC対象病院(※3)」と呼ばれています。


 調査結果によると、回答病院の9割は新型コロナの疑いがある患者を受け入れており、専用の発熱外来などを設置しています(図表1)。


図表1「新型コロナウイルス感染患者を受け入れている場合、
発熱外来など疑い患者のための外来を設置していますか」


 「新型コロナウイルスによる影響は落ち着きましたか」の質問には、約7割の病院が「落ち着いた、少し落ち着いた」と回答(図表2)。一方で、「不安感は残る」との回答が目立ったほか(図表3)、約8割の病院は感染拡大防止のため、入院における面会制限は原則禁止しており、「制限解除の時期は未定」と回答しています(図表4)。


図表2「新型コロナウイルス感染症による影響は落ち着きましたか」


図表3「不安レベルの最高値を『5』とした場合、現状の不安レベルの値を教えて下さい」



図表4「面会制限はいつ頃まで続ける予定ですか」



 また、未だマスク・防護服・アルコールの調達に影響が出ていると回答した病院が約半数という結果でした(図表5)。


図表5「マスクなど消耗品の調達状況に支障はありますか」



「業務量増えた」7割、「IT活用で効率化」4割


 新型コロナ対策を進めていく上で重要な院内の業務量については、「業務が増えた」という声が7割を超えました(図表6)。一方、「業務効率化が進んだ」とする病院は4割に満たない状況で、改めて医療従事者の献身的な姿勢がコロナ禍の医療現場を支えられていることが浮き彫りになりました(図表7)。業務効率化に向けた具体的な取り組みとしては、リモート会議や院内の情報共有などのIT技術を活用した内容が多く見られました。


図表6「新型コロナウイルス感染症による影響で職員の業務量は変化しましたか」



図表7「新型コロナウイルス感染症の対策をきっかけに効率化が進んだ業務はありますか」



意見分かれたオンライン診療推進


 「新型コロナの第2波、第3波に備えた対策を立てているか」との質問については、「立てている途中」が72.9%と最も多く、次いで「すでに立てた」13.6%、「今後立てる予定」12.9%、「立てる予定はない」0.7%の順でした(図表8)。


図表8「新型コロナウイルス感染症の第2波、第3波に備えて対策を立てていますか」



 具体的な対策の内容としては、▼現在の対策を効率化させた対応をする▼改めてマニュアルを作成する▼地域の感染レベルに応じた対策目安を明確にする――などがありました。院内の会議形態や情報共有方法について再検討をしている病院も見受けられました。


 ただし、「今後オンライン診療を進めていくか」という質問については、半々に意見が分かれる結果になりました(図表9)。


図表9「オンライン診療を進めていく予定ですか」



重症患者の死亡率7.5%


 続いて「医療機関特別支援企画:新型コロナの影響 分析・レポート」の中から、新型コロナの症例データ分析の結果を記します。


 調査対象は、新型コロナを診療した実績のある179のDPCデータ提出病院。このうち最新の4月のデータを分析しました。分析したのは、医薬品や検査など資料資源を最も多く投入した傷病が「2019年新型コロナウイルス急性呼吸器疾患」と診断された1671症例です。これによると、新型コロナの重症患者の死亡率(図表10)は7.5%。同じく重症患者の医療費(医業収益)で200万円超の割合(図表11)は、軽症・中等症と比べて顕著に高く、重症患者全体の約8%になっています。


図表10:重症度別の救急搬送割合(左)と死亡割合



図表11:重症度別の医療費分布



インフルより入院日数長く医療費高い


 今回のデータ分析では、新型コロナと同様に、重症化すると深刻な呼吸器疾患を罹患するリスクの高いインフルエンザとの比較も実施。インフルエンザの場合、肺炎になった場合でも5~10日程度で多くの症例は退院しています(図表12)。一方、新型コロナの入院日数は1~20日程度とボリュームゾーンが幅広く、インフルエンザと比較すると長いことが分かりました。医療資源についても、新型コロナの医療費はインフルエンザと比較して高い傾向を示しています(図表13)。特に、処置については大きな差が出ました(図表14)。


図表12:インフルエンザは肺炎になった場合でも10日程度で退院



図表13:全体的に新型コロナの医療費は高く、特に処置金額に差



図表14:重症度別の処置実施状況



 当社では新型コロナを含む病院経営に関係するアンケート調査を実施するとともに、医療ビッグデータの分析を定期的に実施しています。今後も引き続き、コロナ禍の医療現場の実態を明らかにするための情報提供を行っていきます。


(※1)株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
医療専門職、ヘルスケア企業出身者、IT専門家らで構成される経営コンサルティングファーム。急速な高齢化で社会保障財政の破たんが懸念される中、「質の高い医療を最適なコストで」という理念を実践する具体的な手法として、米国流の医療マネジメント手法「ベンチマーク分析」を日本に初めて持ち込み、広めたパイオニアです。http://www.ghc-j.com/


(※2)医療機関特別支援企画:新型コロナの影響 分析・レポート
DPCデータを提出する医療機関に向けて、無償で提供している分析・レポート。新型コロナ関連のアンケート調査結果のほか、有償の病院向けデータ分析サービスの一部機能の無償開放、専門コンサルタントによるデータ分析レポートなどで構成されている。参加病院数は419病院で、新型コロナの症例を診療した病院は179病院(4月末日時点)。https://www.ghc-j.com/event/dashboard/202005/


(※3)DPC対象病院
包括支払い方式で入院医療費を請求する「DPC(診療群分類別包括払い)制度」の対象病院。DPC制度は、従来型の出来高制度と比較して、1日当たりの報酬が決まっているため、過剰な診療の抑制や必要なコスト削減を促すことが期待できる。主に病床数が多く、重症患者を診療する急性期病院の多くが導入している。対象病院は1730病院。


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【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】

株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン 広報担当:島田
TEL:03-6380-2401(代表) mail:nshimada●ghc-j.com 
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広報部
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。