2025.04.14
日本病院会は3月10日、「中小出来高病院経営管理者向け研修会」をオンラインによるweb形式で開催。75施設、85人が参加しました。
演者は、日本病院会の島弘志 副会長(社会医療法人天神会 総病院長)、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)のコンサルタントでマネジャーの中村伸太郎が務めました。
島氏の講演では、目下の厳しい病院経営の現状に触れて、「病院経営は破綻寸前、地域医療崩壊の危機」と訴えました。
研修会では、島氏(以下画像右)が「2024年度病院経営定期調査に基づいた中小病院の課題と今後の経営について」と題して講演。2024年度診療報酬改定の概要を振り返った上で、病院経営定期調査の内容を確認しました。病床区分別の年度比較では、赤字病院割合が精神を除き大幅増加。一般病院の黒字病院割合は、2022年度の79.4%から23年度の40.6%へとほぼ半減しています。
こうした状況を受けて、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会・日本慢性期医療協会は、政府に向けて▼直近の病院の経営状況を考慮し、地域医療を守るため、緊急的な財政支援措置を講ずること▼病院の診療報酬について、物価・賃金の上昇に適切に対応できる仕組みを導入すること▼社会保障予算に関して、財政フレームの見直しを行い、「社会保障関係費の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という取扱いを改めること――などを緊急要望しました。
こうした厳しい病院経営の現状について、島氏は状況が予測不可能な「VUCA時代」と指摘。VUCA時代における医業経営には、従来の方法論では対応しきれない多くの課題が存在するとした上で、今後の医業経営にはリーダーの明確なビジョンを持ち続けることが必要で、さらには経済的価値(利益の獲得)と社会的価値(社会課題の解決)を両立する「CSV(Creating SharedValue)経営」が欠かせないとしました。
島氏は「VUCAな時代の医業経営は、迅速な適応力と持続可能な成長を両立させることが求められる。そのためには、革新的なテクノロジーの導入や多職種連携の強化、継続的なリスク管理が不可欠。CSV経営を行う事により変動の激しい環境の中でも良質の医療を提供し、健全経営が可能になる」として講演を締めくくりました。
中村は「中小出来高病院における経営改善と生産性向上~職員の行動変容に繋がるデータ分析とは~」と題して講演。(1)現状の業務をリストアップする(2)課題を洗い出す(3)解決策を検討する(4)改善に取り組むスケジュールを決める(5)改善策実行+効果測定――の5つに分けて業務効率化に向けた具体的な手順を解説。その上で経営改善に向けたレポートと分析ツール、使い方動画で構成されるJHAstisを紹介しました。
JHAstisは、出来高算定病院が重要な経営判断を行う際に活用できる経営分析レポートです。JHAstisユーザーは、専用ソフトを用いて、匿名化した診療データを日本病院会へ提供するだけで、経営の改善に資する情報を掲載した以下のレポートを受け取ることができます。
●経営重要指標レポート:毎月把握すべき主要な経営指標
●病床機能別レポート:個別の病床機能に特化した分析。入棟中の診療状況等を他病院比較
●増収対策レポート:加算等算定強化、増患などの具体的な手法を病院経営の専門家が解説
●エグゼクティブレポート:時間のない院長など病院幹部が改善状況を俯瞰
●診療報酬改定レポート:診療報酬改定に必要な情報を提供
レセプトデータのみではなく、より詳しく精度の高いベンチマークデータを示せるDPCデータも活用。経営分析レポートの動画解説や、分析用の新ツール「JHAs+(ジャスタス)」も提供しています。
中村 伸太郎(なかむら・しんたろう) | |
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コンサルティング部門マネジャー。東京工業大学 大学院 理工学研究科 材料工学専攻 修士課程卒業。DPC分析、財務分析、事業戦略立案、看護必要度分析、リハ分析、病床戦略検討などを得意とし、全国の病院改善プロジェクトに従事。日本病院会が出来高算定病院向けに提供するシステム「JHAstis」の社内プロジェクトリーダーも務める。 |
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