2019.08.26
医療ビッグデータの分析でがん医療の質向上を目指す「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会 ※1」(代表世話人:望月泉・八幡平市病院事業管理者・岩手県立病院名誉院長、事務局:グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン=GHC)は8月24日、第14回会合を開催。がん医療の質向上を担う全国の「がん診療連携拠点病院 ※2」などが112病院集結しました。
会員病院の診療内容(プロセス)や経営指標の値を、実名でベンチマーク分析できる同研究会の会員専用ツールを用いて議論。国のがん対策推進官による日本のがん対策に関する講演や、全国の病院のがん診療実績を誰でも簡単にウェブ上で検索できるサービスの紹介など、国、病院、国民のさまざまな視点から、がん医療の質向上の方策について検討しました。
CQI研究会は、がん拠点病院が集い、お互いの診療内容のデータを実名で比較、検証することで、診療内容の改善点を探り、医療の質を向上させることが目的です。まずは会員間で医療の質向上に励み、その努力を地域の医療の質向上につなげ、最終的には日本全体の「がん医療の均てん化」を目指すことが狙いです。
2019年8月時点の会員数は190病院で、2007年設立以来、過去最高を更新しました。
今回、従来の会合と大きく異なるのは、より充実したデータ分析ができるよう、会員専用の自動分析ツールを大きくブラッシュアップしたことです。これまで、紙資料で配布していたデータをウェブ上に移管。がん種や術式を自由に選択し、それぞれの診療内容や経営指標のデータを簡単かつ自由に他病院と比較できるようになりました。
これを受けて、今回は会場に集まった会員全員が、この会員専用ツールにアクセスしながら議論を展開。同じがん種や術式のベンチマーク結果を閲覧しながら、例えば診療内容が優れている病院がどのような取り組みをしているのかなどを共有し合いました。
講演には厚生労働省健康局がん・疾病対策課の丸山慧がん対策推進官が登壇し、「がん対策と医療の質の確保について」と題して講演しました。がんの拠点病院制度やがん患者の就労支援など国の対応状況を解説するとともに、会場の会員病院との質疑応答の中で活発に議論されました。
東洋経済新報社が運営するビジネスニュースサイト「東洋経済オンライン」が8月3日に公開した「全国『がん医療病院』診療実績マップ」も紹介。これはDPCデータを提出する全国3701病院におけるがん診療実績をマッピングし、疾患の種類や手術の有無などから病院を検索できるサービスです(関連記事『がん診療「実績データ」マップで見る病院選び 疾患、手術有無から診療件数・入院日数を比較』)。厚生労働省の公開データを利用し、必要なデータの抽出と集計はGHCが実施しました。
また、GHCはCQI研究会の開催直前に、「地域連携戦略による増患とPFM(Patient Flow Management)」と題したセミナーを開催。がん医療を担う急性期病院において、今後、地域における増患・集患戦略が重要になることから、その戦略の要になり得る地域連携と、外来時点から患者の入退院を支援するPFMを成功させるためのポイントを、GHCコンサルタントが解説しました。
医療の質向上と経営効率化を、国、病院、国民の視点で検討し続けるCQI研究会は、今後も毎年8月をメドに、会員専用自動分析ツールを最新データに更新し、会員の医療の質向上と経営効率化を支援していきます。今回のような会合も2年に一度の頻度で開催予定です(次回会合は2021年8月を予定)。
(※1)CQI研究会
CQI研究会は、がん医療の質向上を目指す有志が集まり、2007年に設立しました。参加病院の診療内容(プロセス)について、医療ビッグデータを用いてベンチマーク分析し、お互いの施設名を開示した形で病院間比較を行っています。分析結果をフィードバックすることで、各施設での医療の質改善活動を支援し、その結果として“がん医療の均てん化”を目指しています。世話人病院は、愛知県がんセンター、岩手県立中央病院、神奈川県立がんセンター、九州がんセンター、四国がんセンター、千葉県がんセンター、栃木県立がんセンター(あいうえお順)
(※2)がん診療連携拠点病院
日本全国のどの地域に住んでいても、優れたがん医療を受けられる体制を整える方針の下、厚生労働省は高度ながん医療を提供する病院を▼国立がん研究センター▼都道府県がん診療連携拠点病院▼地域がん診療連携拠点病院(高度型、特例型を含む3類型)▼地域がん診療病院▼特定領域がん診療連携拠点病院―として指定しています。また、都道府県でも独自に指定したがん拠点病院(名称は各都道府県で異なる)があります
(※3)DPCデータ
包括支払い方式で入院医療費を請求する「DPC(診療群分類別包括払い)制度」に基づくデータのこと。診療報酬の請求データのため、個票の診療内容を細かく分析するのに適している。DPC制度は、従来型の出来高制度と比較して、1日当たりの報酬が決まっているため、過剰な診療の抑制や必要なコスト削減を促すことが期待できる。主に病床数が多く、重症患者を診療する急性期病院の多くが導入している
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