お知らせ

2020.09.30

【PRESS RELEASE】有識者研究会の政策提⾔をGHCがデータ分析で協⼒

新型コロナで「医療資源配分に課題」「専⾨医不在」病院が半数


 「医療崩壊の阻⽌と経済の両⽴」を掲げる有識者ら有志で構成される「コロナ危機下の医療提供体制と医療機関の経営問題についての研究会」(コロナ医療体制研究会 ※1=座⻑:⼩宮⼭宏・三菱総研理事⻑兼プラチナ構想ネットワーク会⻑)の活動において、病院経営のコンサルティングなどを⾏う株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC ※2=本社:東京都新宿区、代表取締役社⻑:渡辺幸⼦)はこのほど、データ分析の側⾯で⽀援を⾏いました。コロナ医療体制研究会は9⽉25⽇、「医療提供体制崩壊の防⽌と経済社会活動への影響最⼩化のための6つの提⾔」とした政策提⾔を発表。この中に、新型コロナの重症患者がICU(集中治療室)以外の病床で治療を受けたり、軽症患者が重症患者向け病床に⼊院していたりする状況や、重症患者に対応できる専⾨医が不在だったりする病院が全体の半数であるなどとするGHCのデータ分析結果が盛り込まれました。


医療崩壊防⽌へ6つの提⾔


 コロナ医療体制研究会は、新型コロナウィルス感染症の感染拡⼤を防⽌し、犠牲者を最⼤限抑えながら、経済社会活動への悪影響を極⼒最⼩化して⾏くための政策提⾔を⾏うことが⽬的です。医療・看護の現場の専⾨家、経済学者、知事、医療コンサルタント、政策経験者らが結集し、客観的かつ豊富なデータ分析をもとに、多⾓的な視点から精⼒的な議論を重ねてきました。GHCは医療コンサルタントという⽴場から、客観的かつ豊富なデータ分析の提供を⾏っています。


 今回、コロナ医療体制研究会が提⾔したのは以下の6つです(詳細・記者会⾒の様⼦は
https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/35715/report」)。


1. 医療機関の集約化・役割分担・連携を⼤胆に推進
2. 診療所等の⼒を活かし、病院・保健所の負担を軽減し、検査を迅速化
3. メリハリのある財政⽀援によりコロナに対応する医療提供体制を強化
4. ⾼リスク者を重点的に防御
5. 検査体制を増強し、迅速な検査実施を実現
6. リスクを踏まえた合理的な⾏動抑制を進め、偏⾒・社会的⾮難を解消


 ここでは当社が特にキーとなるデータ分析結果を提供した「1.」の「医療機関の集約化・役割分担・連携を⼤胆に推進」についてご紹介します。


⼊院患者の7割は軽症


 GHCはこのたび、コロナ医療体制研究会の協⼒要請を受けて、新型コロナ感染者の診療データを分析。分析対象は重篤な患者に対応する「急性期」の機能を備えた「DPC対象病院 ※3」で、GHCがデータを保有する対象567病院のうち、データの連続性を加味した341病院の計5801症例のデータを分析しました(分析対象期間は2020年2〜6⽉)。


データ分析の結果、⼊院患者の65.5%が呼吸管理の治療が必要ない軽症でした(図表1)。


図表1 コロナ関連の入院患者のうち3分の2は軽症者
コロナ関連の入院患者のうち3分の2は軽症者


 新型コロナ患者への医療機関の対応は、軽症、中等症、重症で異なります。今春の感染拡⼤当初は、すべての感染者を⼊院させる対応をしていましたが、感染拡⼤の中盤以降、軽症はホテルや⾃宅で隔離する対応が⼀般的になりつつあります。そのため、軽症患者の⼊院は徐々に減少するはずですが、⼊院に占める軽症患者の割合の推移を⾒てみると、5⽉7割、6⽉8割、7⽉9割とむしろ増えています。必ずしも⼊院が必要ではない患者が多数を占めていたという結果です(図表2=このデータのみ追跡可能な直近までのデータを確認するため分析期間は2020年2〜7⽉。対象数は372病院6641症例で、データの連続性は考慮していない)。


図表2 4月第2~3週がピーク 軽症割合は6-7月に増えている
(退院データなので7月患者数は過小評価)
4月第2~3週がピーク 軽症割合は6-7月に増えている


ICUの平均稼働率は5〜6割


 重症患者の対応はどうでしょうか。重症はICU・HCU(⾼度治療室)・救命救急室(ER)など「ユニット」と呼ばれる重症患者を治療するための専⾨病床で、集中治療専⾨医が⼈⼯⼼肺装置(ECMO)などの医療機器を⽤いて治療に当たることが多いです。


 データ分析の結果、新型コロナ患者を受け⼊れる病院が所有するICUの平均稼働率は、感染拡⼤の今年2⽉では7割弱、4〜5⽉で5〜6割という状況でした(図表3)。データからはICU病床数⾃体が逼迫していたとは読み取れません。稼働率の低さは、感染防⽌のため予定⼿術を延期したり、ICUでコロナ感染者と⼀般患者を⼀緒に受け⼊れることができないという構造的な問題が影響したりしていたことなどが考えられます。


図表3 ICU稼働率全体は低下し、5月はコロナ受入れ病院において平均約5割
ICU稼働率全体は低下し、5月はコロナ受入れ病院において平均約5割


重症患者を「⼀般病床」で治療24%


 その⼀⽅で、軽症、中等症、重症それぞれの受け⼊れ病床を機能別に⾒ると、分析対象の341病院のICU病床数が必ずしも逼迫していないという状況の中で、集中治療が必要な重症患者のうち「⼀般病床」で治療を受けた症例が全体の24%ありました(図表4)。逆に軽症者の17%がユニットに⼊院しており、これに感染症病床を含めると軽症者の55%が重症あるいは中等症の専⾨病床に⼊院しているという状況でした。


図表4 重症患者の24%が一般病棟のみで治療されている。
軽症患者の17%がユニットに入棟、感染症病床を含めると55%に上る
重症患者の24%が一般病棟のみで治療されている。軽症患者の17%がユニットに入棟、感染症病床を含めると55%に上る


 重症患者の治療は、病床などハード⾯のほか、ソフト⾯である専⾨の治療ができる集中治療専⾨医の確保も⽋かせません。データ分析の結果、コロナ受⼊れ病院で集中治療専⾨医が在籍する病院は48%。集中治療専⾨医が治療に使うECMOを保有する病院は73%でした(図表5)。


図表5 受入あり病院で、集中治療専門医がいるのは48%にとどまる。
受け入れなし病院でも39%に集中治療専門医あるいは呼吸器内科専門医が存在
受入あり病院で、集中治療専門医がいるのは48%にとどまる。受け入れなし病院でも39%に集中治療専門医あるいは呼吸器内科専門医が存在


 コロナ医療体制研究会はこうした状況を踏まえて、ICUやECOMなどのハード⾯の不⾜以上に専⾨医の不⾜を指摘。その上で⽇本は病院数が多く、医師が各病院に分散してしまっており、重症患者の対応が⼗分でないケースが少なくないとしています。そのため、「医療機関の集約化・役割分担・連携を⼤胆に推進」と政策提⾔しているわけです。


 GHCは引き続きコロナ医療体制研究会をデータ分析の側⾯でご⽀援し、⽇本の持続可能な医療提供体制に必要な政策提⾔を⽀えていきます。また、新型コロナはもちろん、それ以外にも⽇本の医療政策にかかわる重要なデータ分析結果について、随時、情報公開してまいります。


(※1)コロナ危機下の医療提供体制と医療機関の経営問題についての研究会
(1)医療提供体制の崩壊防⽌、(2)新型コロナのリスクの正確な理解の普及と感染防護の重点化、(3)リスクを踏ま えた合理的な⾏動抑制の設計と感染防護策の改善――が必要との観点から、各界の有識者らで構成されている。メンバーは以下の通り(五⼗⾳順)。▼井伊雅⼦(⼀橋⼤学 国際・公共政策⼤学院 教授)▼⼤橋博樹(多摩ファミリークリニック 院⻑)▼草場鉄周(⽇本プライマリ・ケア連合学会 理事⻑)▼⼩林慶⼀郎(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/東京財団政策研究所 研究主幹)▼座⻑・⼩宮⼭宏(三菱総合研究所 理事⻑/プラチナ構想ネットワーク 会⻑)▼佐藤主光(⼀橋⼤学⼤学院経済研究科 教授)▼鈴⽊富雄(⼤阪医科⼤学地域総合医療科学寄附講座 特任教授)▼寺澤達也(東京理科⼤学 上席特任教授)▼⼟居丈朗(慶應義塾⼤学経済学部 教授)▼南郷栄秀(地域医療推進機構 東京城東病院 総合診療科科⻑)▼森⼭美知⼦(広島⼤学⼤学院医系科学研究科 成⼈看護開発学 教授)▼湯﨑英彦(広島県知事)▼渡辺幸⼦(グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン 代表取締役社⻑)


(※2)株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
医療専門職、ヘルスケア企業出身者、IT専門家らで構成される経営コンサルティングファーム。急速な高齢化で社会保障財政の破たんが懸念される中、「質の高い医療を最適なコストで」という理念を実践する具体的な手法として、米国流の医療マネジメント手法「ベンチマーク分析」を日本に初めて持ち込み、広めたパイオニアです。http://www.ghc-j.com/


(※3)DPC対象病院
包括支払い方式で入院医療費を請求する「DPC(診療群分類別包括払い)制度」の対象病院。DPC制度は、従来型の出来高制度と比較して、1日当たりの報酬が決まっているため、過剰な診療の抑制や必要なコスト削減を促すことが期待できる。主に病床数が多く、重症患者を診療する急性期病院の多くが導入している。対象病院は1757病院(2020年4月時点)。


【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】

株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン 広報担当:島田
TEL:03-6380-2401(代表) mail:nshimada●ghc-j.com 
※●を@へ変換してご連絡ください


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広報部
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。