2024.12.06
グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)は12月6日からSAGAアリーナ(佐賀市)で開催の医療マネジメント学会第21回九州・山口連合大会(樗木等会長=佐賀県医療センター好生館理事長)のランチョンセミナーで、「アフターコロナ、働き方改革を踏まえた病院経営戦略」と題して講演しました。演者はGHCシニアマネジャーの湯原淳平(写真上)、座長は多久小城医療組合顧問の佐藤清治氏(写真下)が務めました。
賃上げ、物価高騰、診療報酬改定などにより、病院経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。2024年度の「病院経営定期調査中間報告」(3病院団体:日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会)によると、100床あたり医業利益は対前年比でマイナス240万円/月。500床規模では年間で約1.4億円の医業損失という状況です。厳しい経営環境の中で病院が生き残るためには、「経営改善、医療の質向上」と「働き方改革」を両立し続けることが欠かせません。
そのためには、問題解決のPDCAサイクルを高速で回し続けることが重要です。これができないと、日々の業務に忙殺され、経営会議はただの報告の場にしかなりません。データ分析をして現状を把握した気になっても改善が進まず、PDCAサイクルをゆっくり確実に回すことに注力しすぎても改善はなかなか進みません。データ分析は経営改善のきっかけであり、入口に過ぎないからです。
湯原はデータを軸にしっかりとPDCAサイクルを回す具体的な方法について、(1)戦略的な「集患対策」と「病床管理」(2)多職種協働による「生産性向上」(3)全体最適を推進する「医療介護連携」――の3つのアジェンダにそって、具体的な事例や分析結果を交えながら解説しました。
本稿では(2)多職種協働による「生産性向上」についてご紹介します。
働き方改革は、「やらなければならないこと」である法令順守から始まり、次いで勤務環境・負担軽減、業務改善・効率化、生産性向上の順に「やりたいが難しいこと」として難易度が高くなっていきます。まずは法令順守がマストではあるものの、より本質的な「働き方の改革」を推進し、医療の質を担保しながら効率的な診療や業務を継続的に行っていくには、業務改善・効率化や生産性向上を見据えた取り組みも欠かせません。
具体的な業務改善・効率化や生産性向上について、タスクシフトやタスクシェアなども重要ですが、そもそもの医療職の生産性に問題はないかという視点も重要です。
こうした生産性について、データを軸に確認していく手順を、1000病院超のDPC病院のデータに基づくベンチマーク分析を交えながら、分かりやすく、詳しく解説しました。データ分析にはGHCが開発・販売する病院経営支援システム「(カイ)」あるいは完全無料の経営分析ツール「病院ダッシュボードχ ZERO」を用いました。
「」は、診療科や疾患別に全国の病院の診療プロセスを比較し、青(上位25%タイル)、黄(中位)、赤(下位25%タイトル)のシグナルで自病院の立ち位置を確認することができます。講演では、「」のオプション機能で加算・指導料等の算定状況を可視化する「チーム医療plus」にある「生産性分析」を用いて、薬剤師などの一人当たり生産性を確認する方法を紹介しました(図表)。
上記図表は、横軸に病院がずらりと並んでおり、左の縦軸で一人当たり「薬剤管理指導料」の算定額/月(棒グラフ)、右の縦軸で100床あたりの薬剤師数(点)を示しています。図表の左側の病院を見ると、少ない薬剤師数でも上位の金額を算定している一方、右側の病院は左側と比べて薬剤師一人当たりの算定金額が低いです。このように他病院とベンチマークすることで、自病院の医療職の生産性に課題があるか否かを発見することにつながります。こうして課題の可能性を発見した上で、さらに診療科別や病棟別、疾患別などで課題を掘り下げて見つけていくことができるのが「」の強みです。
当社は2025年1月から初回申し込みの病院に限り、薬剤師、栄養管理士、療法士、さらには医師の生産性について、ベンチマーク分析結果のフィードバックを行うキャンペーンを実施します。キャンペーンのお申し込みを希望される方は、「info●ghc-j.com」(「●」を「@」に変換)までご連絡下さい。フィードバックに必要なデータは、▼様式1,EF,D,H▼外来EF▼財務諸表▼各職種常勤換算人数(診療科別医師数)―となります。
当日の会場で配布した本講演内容の一部スライドをまとめた資料(「アフターコロナ、働き方改革を踏まえた病院経営戦略」参照、ダウンロード形式)を当社ホームページで配布しています(上記の生産性分析のスライドは含まれていません。ご希望の方は生産性ベンチマークフィードバックのキャンペーンをお申し込みください)。上記ページへアクセスいただき、必要情報をご記入の上、是非、資料をダウンロードしてください。上記メールアドレスへご連絡いただいても講演配布資料もお送りします。
なお、DPC分析ソフト「EVE」や「」、「病院ダッシュボードχ ZERO」を利用する病院は、毎月発行する経営分析レポート「」を無料で購読することが可能です。ご購読がまだの方はこちらよりお申し込みください。「病院ダッシュボードχ ZERO」のお申し込みはこちら。
湯原は最後に、「とにかく、考えてみることである。工夫してみることである。そして、やってみることである。失敗すればやり直せばいい」とのパナソニックグループ創業者である松下幸之助氏の名言を引用し、改めてPDCAサイクルを高速で回すことの重要性を強調し、講演を締めくくりました。
湯原 淳平 (ゆはら・じゅんぺい) | |
コンサルティング部門シニアマネジャー。看護師、保健師。神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、GHC入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。日本経済新聞や週刊ダイヤモンドなどメディアの取材協力も多数。総務省 経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー。 |
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