お知らせ

2024.11.01

中小出来高病院のサイバーセキュリティ対策とは、日本病院会が経営管理者向け研修会を開催

 日本病院会は9月24日、「中小出来高病院経営管理者向け研修会」をオンラインによるweb形式で開催。79施設、104人が参加しました。


 演者は、群馬大学医学部附属病院システム統合センター准教授で防衛医科大学校情報戦略官兼デジタル化推進本部推進補佐官の鳥飼幸太氏、公益財団法人操風会岡山旭東病院IT推進センターCIO(最高情報責任者)兼情報システム室室長の榊原祥裕氏、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)のコンサルタントでマネジャーのグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)のコンサルタントでマネジャーの中村伸太郎が務めました。


 講演では、中小出来高病院がどのようにサイバーセキュリティ対策をするべきかをテーマに、各演者がさまざまな見解を述べました。


サイバーセキュリティ対策のポイント


 研修会では、鳥飼氏(以下写真)が「医療情報システムの安全管理に関するガイドラインと院内IT-BCPの作成」と題して講演。サイバーセキュリティの強化を目的に2024年度診療報酬改定で見直された「診療録管理体制加算1」を軸に、医療サイバーセキュリティの強化について実例を交えて解説しました。




 政府が進める医療デジタルトランスフォーメーション(DX)、その中にある「電子カルテ情報共有サービス」の概観を確認した上で、関連加算等の算定に欠かせない「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」の概要も確認。続いて鳥飼氏らが作成したIT-BCP(ITシステムの事業継続計画)のチェックリストの活用方法について解説しました。事例としては、群馬大学医学部附属病院における記録媒体の管理事例や「CSF(Cyber Security Framework)」の活用事例などを紹介しました。


サイバーセキュリティ対策の中小病院事例を紹介


 続いて、榊原氏(以下写真)が「中小病院でのサイバーセキュリティ対策の進め方」と題して講演。さまざまなビジネスシーンでDXの推進が急務であることを背景に、医療・介護施設でもDX推進が始まっていることを踏まえて、操風会の事例などに触れながらDX推進に欠かせないセキュリティ対策について解説しました。





 同会は2021年にIT推進センターを創設。独立したセンターとして部門の枠を超えてDX知財を集約し、積極的なIT活用の推進とともに、先進的病院としてのブランディングも視野に活動を行っています。DXはインターネットなどのコンピュータネットワークを経由してコンピュータ資源を活用する「クラウドコンピューティング」が中心となるため、セキュリティ対策の強化が不可欠です。悪意のあるソフトウェアやコードなど「マルウェア」による攻撃が多発していることなどを挙げた上で、これからの病院は(1)セキュリティ教育(2)侵入検知(3)バックアップ(4)サーバー保険-の大きく4つのセキュリティ対策が必要であるとして、同院の事例を交えながら各項目の対策手順について詳しく紹介しました。


経営改善などに結びつくDX推進が重要


 中村は「DX対応と経営改善の両立に向けて~キーワードは標準化~」と題して講演。診療録管理体制加算の算定状況や医療DX推進体制整備加算など関連加算を解説した上で、「経営改善、医療の質向上」や「働き方改革」に結びつくDX推進が重要と指摘しました。その上で事務作業の効率化につながった具体的な病院のDX推進事例などを数件紹介。JHAstisを活用した経営改善もDX推進の一つと考えられることから、経営分析レポートを活用した薬剤管理指導料の算定最適化の事例なども紹介しました。


5種類のレポートと動画解説、分析ツール提供の「JHAstis」


 同研修会は、日本病院会の会員病院で、出来高算定病院が対象です。


 は、出来高算定病院が重要な経営判断を行う際に活用できる経営分析レポートです。JHAstisユーザーは、専用ソフトを用いて、匿名化した診療データを日本病院会へ提供するだけで、経営の改善に資する情報を掲載した以下のレポートを受け取ることができます。


●経営重要指標レポート:毎月把握すべき主要な経営指標
●病床機能別レポート:個別の病床機能に特化した分析。入棟中の診療状況等を他病院比較
●増収対策レポート:加算等算定強化、増患などの具体的な手法を病院経営の専門家が解説
●エグゼクティブレポート:時間のない院長など病院幹部が改善状況を俯瞰
●診療報酬改定レポート:診療報酬改定に必要な情報を提供


 レセプトデータのみではなく、より詳しく精度の高いベンチマークデータを示せるDPCデータも活用。経営分析レポートの動画解説や、分析用の新ツール「JHAs+(ジャスタス)」も提供しています。




中村 伸太郎(なかむら・しんたろう)

コンサルティング部門マネジャー。東京工業大学 大学院 理工学研究科 材料工学専攻 修士課程卒業。DPC分析、財務分析、事業戦略立案、看護必要度分析、リハ分析、病床戦略検討などを得意とし、全国の病院改善プロジェクトに従事。日本病院会が出来高算定病院向けに提供するシステム「」の社内プロジェクトリーダーも務める。