2023.09.06
日本病院会は8月22日、「中小出来高病院経営管理者向け研修会」を開催しました。新型コロナウイルス感染拡大期から引き続き、今回もオンラインによるweb形式で開催。76病院、132人の申込みがありました。
演者は、医療法人社団東陽会 東病院(熊本市・63床)理事長の東謙二氏(日本病院会熊本県支部支部長)、社会医療法人大道会 森之宮病院(大阪市城東区、355床)院長代理の宮井一郎氏、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)のコンサルタントでマネジャーの中村伸太郎が務めました。
講演では、新型コロナウイルス感染症の患者対応に対する補助金がなくなって以降、中小出来高病院がどのような戦略で生き残れるのか、などについて見解が述べられました。
同研修会は、日本病院会の会員病院で、出来高算定病院が対象です。
は、出来高算定病院が重要な経営判断を行う際に活用できる経営分析レポートです。JHAstisユーザーは、専用ソフトを用いて、匿名化した診療データを日本病院会へ提供するだけで、経営の改善に資する情報を掲載した以下のレポートを受け取ることができます。
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また、本年度より、経営分析レポートの活用方法について解説を行う「レポート解説動画」や自病院で自由に「分析年月」や「疾患名」、「病棟」などの分析条件を設定し、加算ごとの算定分析が可能となる「簡易分析機能(JHAs+)」(図表)など新機能を追加いたしました。
研修会ではまず、東氏が「新型コロナウイルス感染症禍での医療経営とこれからの医療需要を見据えた上での医療経営」と題して講演。新型コロナウイルス感染症拡大による医療経営への影響や医療需要変化と病院経営、中小病院の生き残り戦略などについて解説しました。
医療需要の変化については、外来患者が減少傾向にあると言及。患者数の先細りが予想される中、コロナ補助金がなくなって以降、中小病院がどのような方向性で経営していくかが大きな問題であるとしました。
中でも注目しているのは、救急搬送の患者が今後、2035年をピークに増加減少にあること(以下図表参照)。現時点でも2024年からスタートする医師の働き方改革への対応で、救急搬送の患者を受け入れられない病院が増えており、「このままではすぐに治療が必要な救急搬送の患者が行列を作るような状況にもなりかねない」(東氏)と予測。特に、今後は在宅患者の急変による夜間救急の医療需要が高まると考えられるため、中小病院の生き残り戦略の一つの方法として、夜間救急の受け入れ体制整備を軸に置いた働き方改革推進の可能性を示しました。
続いて、宮井氏が「中小病院における『回復期機能』の現状と課題、新型コロナ5類移行と24年度トリプル改定を踏まえて」と題して講演。回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟の役割と現状、回復期リハビリテーション病棟の特性を踏まえた運営などについて解説しました。
回復期リハビリテーション病棟協会によると、回復期リハビリテーションの病床利用率は、2年に1回の改定年度に病床利用率が微減する傾向を繰り返しつつ、年々増加する回復期リハビリテーション病床数とともに、時系列で見ると病床利用率は減少傾向にあります(2015年までは87%前後、詳細は以下図表)。ただ、2016年の実績指数導入後の病床利用率は大きな振れ幅を示し、直近では83%台にまで大幅低下。実績指数の厳格化とコロナ禍の影響が要因と見られます。
こうした背景の中、政令指定都市で日本一人口密度が高い城東区にある森之宮病院は、大阪脳卒中連携ネットワークの中で主導的役割を果たし、特に脳卒中リハを推進。全病棟内にリハ室を配置することで、医療の質と生産性を向上するチーム医療の推進を促しています。また、組織のさらなる成長を担う「新人管理職教育」の重要性に着目し、課題解決ワークショップでの問題解決力向上を目指しています。城東区役所とUR西日本と組んで地域包括ケアシステムの構築を目指す「スマートエイジング・シティ」にも取り組んでいることなども紹介しました。
中村は「中小出来高病院におけるwithコロナの取り組み」と題して講演。with/afterコロナにおける大きな課題として、働き方改革への対応を指摘。経営改善や医療の質向上を担保しながら働き方改革を推進する方法の一つとして、PFM(Patient Flow Management、詳細はこちら)の必要性を指摘しました。PFMは大規模病院での導入が多く、中小病院にはそぐわない戦略と思われがちですが、中村は「より多くの患者に標準的な医療を効率的に現場スタッフの負担を増やすことなく提供できる考え方・仕組みがPFM。どの業務を、どの部署、どのタイミングで実施し、それらをどのように院内で共有・連携するか、現状と今後を整理・検討することは、中小病院でも必要」と述べました。
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