2021年12月17日
どの病院にも、知られざる経営の裏舞台がある。その裏舞台では日々、データと向き合い、院内を動かすため奔走する「経営企画」の担当者が存在する。本コーナーでは、こうした担当者たちの「Story」にスポットを当てる。初回は静岡市立静岡病院(506床)・医事経営部部長兼医事経営室長の小林恵美子さん。
この20年で医療事務の業務内容が大きく変わった――。
自らのキャリアをこう振り返るのは、静岡市立静岡病院の小林恵美子医事経営部部長兼医事経営室長。医療事務の世界に入った1997年以来、時代の流れとともに、医療事務における業務内容の変遷を、最前線で見つめてきました。
「当時、医事の大きな仕事は、2年に1度の診療報酬改定がほとんど。それが今では、集患のための地域連携をどうするとか、人事案件のはずの働き方改革まで、ありとあらゆる経営案件に首を突っ込んでいます。時代は変わりました」
民間の大手医事業務委託会社でキャリアを重ねてきた小林さん。いくつもの病院を掛け持ちで担当し、病院経営のさまざまな課題を目の当たりにしてきました。そのうち、どの病院の経営改善活動にも当てはまる共通項のようなものが見えてきたと言います。
●経営に対する病院幹部の意識の差が、改善活動の成果を左右する
●当事者意識の強い職員が一人もいなければ、どんな支援があっても病院は変われない
●灯り始めた職員たちの改善意識も、時とともに「守り」に入り、いずれ薄れていく
このほかの共通項も含めて、豊富なキャリアから先回りして改善活動の結果を予測し、経営陣や現場の医師や看護師たちへ繰り返し、「改善」の必要性を訴えてきました。その過程で、時には数々の「バトル」も経験してきました。
委託職員としてさまざまな医事の現場で活躍するスタイルを貫いてきた小林さん。それが2015年、静岡市立静岡病院が独立行政法人化するタイミングで一転、病院の正規職員として業務に当たることを決意しました。
「やはり病院の『中』に入らないと、やりたいことのすべてはできません。独立行政法人化するというタイミングなら、思い切ったことができるのではないかと。また、私のような『民間出身で荒波に耐えられそうな人』が求められているのかなとも感じ、定年までの限られた中、私なりに次の世代へつなげられる何かを残したいと思ったんです」
入職後、これまで必要最低限の開催頻度だったDPC委員会を、毎月開催に変更。さまざまなテーマを議論できる多職種の委員会メンバーを選出し、毎月さまざまな切り口で経営の課題を訴え続けてきました。粘り強い「訴え」は、やがて院内の経営に対する意識を向上させたほか、機能評価係数IIの向上など重要な経営指標の改善にも寄与してきました。
小林さんにとって、病院の経営企画を担う自らの立ち位置は、どのような役割を担うと考えているのでしょうか。
「前例や型がないものに、人は恐怖心を覚えがちです。それでも、『とりあえずやってみよう』と一歩踏み出せることが、何よりも私たちに求められているのではないでしょうか」
DPC委員会では、毎月、タイムリーなテーマを分析して改善提案する小林さんのプレゼン枠があります。選ぶテーマによっては「炎上」するリスクもあるこの枠を、いずれは若手職員に担ってもらいたいと、小林さんはその日を待ち望み、自らの背中で「一歩踏み出す勇気」の大切さを毎回、伝え続けています。
もう一つ、小林さんは若手に期待していることがあります。
「若手職員は皆、パソコンやインターネットの扱いが得意。例えば、『病院ダッシュボードχ(カイ)』には、とても分かりやすい経営分析の進め方のマニュアルもあるので、こうした『教材』を使いながら自分たちのペースでしっかりと勉強してもらいたい。『自分で考える時間』こそが若手の能力を伸ばすと思うので、私自身ITは苦手だけど、若手の能力を伸ばすという意味ではITに一番期待しています」
さまざまな病院経営の現場を駆け抜けてきた小林さん。これまでの自身の仕事を振り返り、困ったように、楽しそうに、また愛おしそうに、こう語ります。
「今の病院は3年務めるつもりでしたが、気がついたら6年もいます。だって、どこの病院も一緒ですけれど、病院って、本当に次から次へと課題が出てくるものですから」
広報部 | |
事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。 |
Copyright 2022 GLOBAL HEALTH CONSULTING All rights reserved.