2021年12月17日
病院の経営企画の現場にフォーカスする連載コラム「わたしの病院の」シリーズ。個々の病院がどのような仕組みで、どのように経営分析ツールを活用しているのか、その事例をいくつかのテーマに沿って紹介する。初回のテーマは「DPC委員会」。
2019年に創立150周年を迎えた静岡市立静岡病院(506床)は、救急・急性期医療、専門医療などを主に行う地域の中核病院です。同院のDPC委員会は、どのように運営されているのでしょうか。その概要とポイントを解説します。
目 的 | DPC全般についての情報共有・検討 DPC委員会の検討内容を病院運営会議(幹部会議)にて報告 院内広報誌「コンパス」を医師全員と各部署に配布 |
開催回数 | 12回/年 |
開催時間 | 45分以内 |
参加人数 | 10人 |
委員構成 |
委員長 副病院長 副委員長 医事経営部部長兼室長 委員 医師1人 看護師1人 薬剤師1人 放射線科1人 事務2人(幹事) 委託業者2人 (その月のコーディング検証症例の担当医師) |
資料作成 | 約10ページ(後述のDPC統計のみ) 所要時間は約60分(作成は事務) |
同院は以前、委員会の開催回数は最低限で、開催内容についても課題を抱えていました。それが大きく変わったきっかけは、2016年の地方独立行政法人化です。
当時、入職したばかりだった医事経営部長兼医事経営室長の小林恵美子氏(当時は医事係長、写真右)ら8割近くの入れ替わったばかりの医事職員が中心となり、独法化を機にDPC委員会の運営方針の見直しを提案。委員の構成から開催回数、内容に至るまで一から見直しました。
結果、現在は以下の3部構成でDPC委員会を運営しています。
① コーディング検討会(委託業者が報告)
— コーディング検証 1症例
— コーディング適正化改善症例 15症例前後
② DPC統計(院内の事務職員が報告)
— 症例サマリー
— DPC期間比率
— 部位不明・詳細不明コード率推移
— 診療科別DPC収益統計
— 診療科別収益・平均在院日数グラフ
— 予定・救急医療別件数
③ トピックス(副委員長が報告)
— 内容は毎月異なる
このうち、①のコーディング検討会は、担当医師との関係性も考慮すると、院内の職員からよりも「外部の第三者からの報告」の形である方が、円滑な運営がしやすい点が一つのポイントです。②については通常であればメインである重要経営指標の確認で、これが重要であることに変わりはないのですが、同院では③のトピックスこそがメインアジェンダです。
トピックスは病院経営において「今」議論すべきテーマを毎回取り上げます。パス分析など以下のようなテーマを取り上げ、「病院ダッシュボードχ(カイ)」などを用いて一つひとつをデータで検証しながら、何が問題でどう対策していくべきかを検証していきます(分析資料のイメージ下記図表)
・パス分析
・機能評価係数Ⅰ、Ⅱ 向上について
・病院情報の公表について
・地域連携スコア分析
・入院患者紹介元医療機関別(循環器系DPC)について
・外部環境分析 など
DPC委員会の「外」の活動も重視しています。中でも好評なのは、院内の医療従事者向け勉強会です。
DPCの知識やルールは、医療現場のスタッフからすると、現場から遠い情報のように感じられ、具体的に自分たちが何をすべきか、それをやったことで医療現場や経営がどう変わるのかが想像しづらいです。そこで考えたのが、DPCの知識だけではなく、医療現場向けのストーリーにアレンジされたDPC勉強会です。
例えば、直近で開催した病棟看護師向けの勉強会では、DPCの知識とそれを使った行動がどう経営改善につながっていくのかを、医療現場のストーリーにまで落とし込み、それらを一つひとつ丁寧に解説しました。
参加した看護師たちからは「分かりやすい」と好評で、小林氏は「イメージできない事務の知識やルールを、医療現場のスタッフがイメージできるまで落とし込んで繰り返し説明することが大切」と話しています。
連載◆わたしの病院の「DPC委員会」
(1) 変われる機会見極め、「今」の検証こそ重視を|静岡市立静岡病院
(2) 院内の理解と創意工夫で好循環、他病院アイデアも積極活用|いまきいれ総合病院
広報部 | |
事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。 |
Copyright 2022 GLOBAL HEALTH CONSULTING All rights reserved.