2018年09月26日
病院名 | 名寄市立総合病院 | 設立母体 | 公立病院 |
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エリア | 北海道地方 | 病床数 | 359 |
病院名 | 名寄市立総合病院 |
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設立母体 | 公立病院 |
エリア | 北海道地方 |
病床数 | 359 |
コンサルティング期間 | 6年間 |
Hospital Management - Consulting Services |
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北海道北部の寒冷地である名寄(なよろ)盆地の急性期医療を支える名寄市立総合病院(北海道名寄市、359床:一般300床、精神55床、感染症4床)。救命救急センターを有する道北三次医療圏の地方センター病院として、担当する二次医療圏の「上川北部」のみならず、宗谷・留萌・網走支庁の一部を含む広域な医療をカバーしています。
広大な二次医療圏の地域医療を支えながら、急性期医療の指標である「機能評価係数II」は毎年ランクアップ。2018年は堂々の17位にランクされています。広大な地域医療を支えながら、どのようにして「急性期病院らしさ」を毎年アップしていくことができたのか。和泉裕一病院長(写真中央が和泉裕一病院長、右が岡村弘重事務部長。左は塚越)にお聞きしました。
――グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンは2012年から経営のお手伝いをさせていただいています。2013年の院長就任から、どういった課題の認識を持ち、課題をクリアしていったのかを教えてください。
院長就任を機に、急激な改革をしたわけではありません。前院長の佐古和廣先生の時代から考えてきたことを引き継ぎ推進したまでで、ちょうど私の時代に色々な改革をしなければならないことが重なっただけのことです(笑)。
まず、最初に行ったのは10対1だった入院基本料を7対1(現・急性期一般入院料1)にしたことです。看護師の人手が足りず、これまで手付かずでしたが、この問題になんとか着手し、推進しました。
もう一つは、救急科を新設したことです。それまでは各科で救急を行っていたのですが、これもずっと手付かずの課題でした。やりたいけれど、医師が足りなかったのです。これも「人」の問題ですよね。救急科新設後、さまざまなつながりで何とか医師も獲得できて、「救命救急センター」の施設基準を取得しました。
それと前院長の時代に、小児科と産婦人科を集約化して母子周産期地域センターを取得しています。
ですから、当院の「機能評価係数II」の数値が高く、中でも特に今も「地域医療係数」が高いのは、7対1入院基本料を取得した上で、小児と周産期を一手に引き受け、救急もやっているところかと思います。
――機能評価係数の地域医療係数以外については、どのような取り組みをされたのでしょうか。
塚越さんに年数回きていただいて、毎回お尻を叩かれています(笑)。医療の標準化・効率化という視点でのベンチマーク分析を通じて、医療のあり方をディスカッションしたり、チーム医療の充実を目指しての多職種が集まる情報共有の場にしたりしています。
――機能評価係数に関係することとしては、戦略的な病床管理が可能な地域包括ケア病棟の導入に踏み切ったことも大きな決断だったと思います。
人口減もあり、徐々に病床の利用率が下がっていたことが背景にあります。やはり、名寄の「地域性」といつも一言で言ってしまいますが、容態が落ち着いた患者を受け入れてくれる医療機関が少なく、どうして地域性で後方連携に限界があるのです。すると在院日数が長くなってしまう。そういう意味では、2014年度からスタートした地域包括ケア病棟は、渡りに船ではないですが、タイミング的にちょうどよかったと思います。
さらにタイミングが良かったのは、事務方で大変頼りになる岡村弘重事務部長が着任したことです。実はその時期から会計制度の変更もあり、長期的に見ると非常に厳しい財務的なデータが出されたのです。その一方で公立病院改革プランにも対応していかないといけない。そういう意味では、中長期的な視点での財務基盤や経営戦略のさらなる強化を図る必要があった時期でもありました。
――地域包括ケア病棟導入による病床管理などで、急性期病院としての役割を果たしやすくなったのではないでしょうか。
そうですね、ちょうど周辺の市立病院との間でも、「急性期は名寄に」という状況ができつつあったので、救急を受けざるを得なくなっていました。
ですから、2年前の2016年から行政区をまたぐ患者も含めて、救急隊の直接搬送ができるようにしました。例えば、名寄市と近隣の士別市は消防組合が違うため、士別市の急患でそれが明らかに脳梗塞と分かっていても、いったんは士別市立病院に行かなければならない。これは改善が必要ということで、脳梗塞と心臓についてはプロトコルシートを作り、救急隊がこれをチェックし、名寄に直接搬送すべき症状であれば行政区を越えて直接搬送できるようになったのです。
――地域全体での機能分化が推進されていっているイメージですね。
やはり地域のリソースが限られるという地域性があるため、みんなが競争しなくても一つに向かっていくのだと思います。札幌や旭川などの都会では全く事情が異なると思いますが。
難しいのは、救急医療やればやるほど忙しくなる。そして若手に頑張ってもらわなければならなくなるのですが、忙しいこともあってか、若手はDPCをあまり理解していないところもあります。DPC対策の研修なども行っていますが、このあたりは課題として認識しています。
現状、例えば救命救急入院料の取り方などについては、現場の医師と対話しながら「漏れないような仕組み」を作っています。その際に客観的なデータがあると現場の理解を得やすく、スムーズに仕組化を推進することができます。
仕組化を推進する際には、「経営的な視点で重要」という言い方は極力避けるようにしています。それだと現場は反発するだけですので、例えば「加算の算定漏れ防止」などとは言わず、「医療の質を向上させるためのチェック漏れ防止」というような言い方をしています。
――データを活用しながら、現場と対話しつつ、医療の質を向上させる仕組みを構築されていっていると感じました。今後の課題としてはいかがでしょうか。
この医療圏をずっと見ていると、高齢者が多くなっていて、外科の対象が徐々に減っていて、逆に内科系の入院患者が増えていることが分かります。特に、大きい手術を必要とする患者が減っているため、例えば心臓血管外科の領域はこの地域で、脳神経外科の領域はこの地域でというように、より一層の役割分担を地域で行っていく必要があると思っています。
地域医療構想は二次医療圏単位ですが、北海道の北の方は二次医療圏だけでは考えられないので、三次医療圏単位での機能分化の仕組みができないか構想し、関係者に打診をし始めているところです。
――本日はありがとうございました。
塚越 篤子(つかごし・あつこ) | |
コンサルティング部門シニアマネジャー。看護師、助産師、経営学修士(MBA)。10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、GHC入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。全国の病院改善事例多数。若手の育成や人事担当なども務める。「」編集長。 |
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