事例紹介

2024年12月20日

「病院ダッシュボードχ」は入院収益の改善に欠かせないシステム|高知大学医学部附属病院(2)

病院名 高知大学医学部附属病院 設立母体 国立大学法人
エリア 四国地方 病床数 498
病院名 高知大学医学部附属病院
設立母体 国立大学法人
エリア 四国地方
病床数 498
コンサルティング期間

過去最高の病院収益を更新し、経営に勢いがある高知大学医学部附属病院(高知県南国市、613床)。コンサルティングの活用に加えて、経営分析システム「(カイ)」や関連サービスもご利用いただいています。「」をご利用いただくようになったきっかけやご活用方法、ご評価いただいている点について、同院医事課の中平伸一課長補佐、会計課経営分析室の和氣利志朗氏にお話を伺いました(聞き手は当社コンサルティング部門シニアマネジャーの湯原淳平、コンサルティング活用については関連記事『過去最高の病院収益と紹介患者率を達成、ベンチマークで目標と立ち位置を明確化』参照)。

経営改善のコアメンバー
中央下が花﨑和弘病院長。時計回りに会計課の刈谷健志課長補佐、会計課経営分析室の谷心暖氏、会計課経営分析室の和氣利志朗氏、湯原、穂苅、医事課の中平伸一課長補佐

きっかけは「入退院支援センター」の立ち上げ

――「」をご利用いただくようになったきっかけを教えて下さい。

中平氏:私が病院経営にかかわるようになったきっかけからお話します。

中平氏
中平氏

病院の医事代行を行う会社を経て、当院の医事課入院担当として入職しました。その後、地域連携室へ異動になった後、コロナ前の2019年に入退院支援センターの立ち上げを任されたことが、病院経営にかかわるようになったきっかけです。

入退院支援センターの立ち上げをするにあたり、毎週木曜に病院長(当時)と会議するようになりました。病院長との会議では、入退院支援センターの立ち上げに向けてさまざまな重要経営指標をチェックして改善策を検討していたのですが、次第に「他の病院ではどうなの?」という疑問に答えられなくなるようになりました。

全国の国立病院間のベンチマークができる「HOMAS(国立大学病院管理会計システム)」はあったのですが、当時の私にはそれを使う権限もなく、権限を持つ部門にお願いしても、欲しいデータが出てくるまでに時間がかかりすぎるという問題がありました。そこで重宝するようになったのが、「」です。

――「」はどのようにご利用されていますか。

「入院患者数×入院単価」の改善促す3つの使い方

中平氏:当時、入退院支援センターの立ち上げを目的にGHCのコンサルティングサービスを利用していたのですが、その流れで「」を導入することになりました。

当初は病院長との会議での「なぜ」に答えるための参考資料として活用していましたが、その後、大きく3つの使い方をしました。基本的にはコンサルティングの際に何度もご指摘いただいた、一般病院の収益の5~7割を担う入院収益は、「症例数×症例単価」の式で決まるという点に大きくかかわるところです。

まず、適切な入院期間を示す「DPC入院期間II」を超えた入院患者数の割合を指す「期間II超率」の改善に活用しました。入院収益の改善には期間II超率の改善が重要であるということを、診療科ごとの期間II超率のベンチマーク結果を伴って、各診療科を回りました。もちろん、その際は診療科ごとの平均在院日数などそのほかのデータも診療科の特性に応じて示しました。

「病院ダッシュボードχ」の「重要指標分析」の画面
経営の重要指標の概観から重要項目ごとに掘り下げてデータ分析できる。「病院ダッシュボードχ」の「重要指標分析」の画面。データはダミー。

次に加算関連でも活用しました。例えば、入退院支援センターの関連では、入退院支援加算をどれだけ算定しているのかを看護師やソーシャルワーカーに示して改善点を探り、徐々に算定率を改善していきました。その際、特に看護師やソーシャルワーカーの人員を増やすことなく算定率を向上させることができたので、改善の成果イコール粗利という結果は「」のおかげだと思っています。

「病院ダッシュボードχ」の「チーム医療plus」の「おすすめ加算」の画面
重要な加算のベンチマーク結果を青、黄、赤のシグナルで確認できる。「病院ダッシュボードχ」の「チーム医療plus」の「おすすめ加算」の画面。データはダミー。

最後に、地域連携による集患活動での活用です。入院日数を減らすと総入院日数が減るので、同時に集患戦略の推進が欠かせません。「」の「地域連携分析」の機能を用いて、どの病院からの紹介患者がどれくらい増減しているのかを診療科ごとに確認し、その資料を伴って病院長と一緒に挨拶に行きました。その際、「大学病院の院長が挨拶にくるのは初めてだ」とよく言われ、御社の分析塾で話さされていた然るべき立場の先生と訪問に行くことの重要さに改めて気付かされました。

「病院ダッシュボードχ」の「地域連携分析」の「マッピング分析(紹介)」の画面
周辺医療機関のどこからどれくらいの紹介があるのか、医療機関別にスコア化して可視化できる。「病院ダッシュボードχ」の「地域連携分析」の「マッピング分析(紹介)」の画面。データはダミー。

和氣氏:最近の使い方としては、薬剤や検査などの医療資源投入量のベンチマーク分析もよく使っています。クリニカルパスを見直すための分析などでも活用しています。

和氣氏
和氣氏

――「」のどのような点をご評価いただけますか。

経営分析レポートやウェブ研修会も重宝

中平氏:病院経営にベンチマーク分析は絶対に必要です。大学病院本院群、特定病院群、急性期病院などに分析対象を絞って、簡単にさまざまな指標のベンチマーク結果を確認できるのはありがたいです。分析結果が数字の羅列ではなく、分かりやすい図表で結果が示され、経営会議の資料としてそのままパワーポイントに貼り付けて利用できるのは、生産性向上に役立っています。

データ分析の結果を知るということだけではなく、それをきっかけに院内のさまざまな隠れた課題に気づけるという点も評価しています。例えば、当院のII超率が長いことについて、在院日数分析等のデータを示しながら診療科ヒアリングをしたら、入院から手術までの日数が他医療機関より長かった。点数改正で期間IIの日数が短くなっていたものの、パスがそのままになっていたなど、埋もれていた課題を浮き彫りにする事例がいくつもありました。

1年に2回発行される「病院ダッシュボードχ 経営分析レポート」も重宝しています。特に病院長の評判がいい。薬剤指導管理料の算定率や期間II超率など、気になっている指標のモニタリングツールにもなっています。

「病院ダッシュボードχ」の「経営分析レポート」
「病院ダッシュボードχ」の「経営分析レポート」のイメージ。画面は「DPC入院期間II超率」

最近では経営分析担当の人材育成ツールとして、経営分析の基本知識や分析手順をウェビナー形式で学べる研修会「GHC病院経営データ分析塾」(詳細はこちら)も活用しています。病院経営のトレンドが学べる毎月開催の「ミニウェビナー」(イメージはこちら)も気になるテーマがあれば参加しています。

――関連サービス含めてさまざまな場面で「」をご活用いただき嬉しく思います。本日はありがとうございました。

連載◆高知大学医学部附属病院
(1)過去最高の病院収益と紹介患者率を達成、ベンチマークで目標と立ち位置を明確化
(2)「病院ダッシュボードχ」は入院収益の改善に欠かせないシステム


湯原 淳平 (ゆはら・じゅんぺい)

コンサルティング部門シニアマネジャー。看護師、保健師。神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、GHC入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。日本経済新聞や週刊ダイヤモンドなどメディアの取材協力も多数。総務省 経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー。

穂苅 桃子(ほかり・ももこ)

急性期病院における、看護師、保健師の経験を活かし、病院の業務改善やPFM(入退院支援)などに力を注ぐ