GHCブログ

2007年02月28日

市立伊勢総合病院●世古口務 院長

「アイデアだけでみんながハッピーになれる」

世古口院長

院長室のなかに…  今日の訪問先は、市立伊勢総合病院。先に病院入りしているGHC芦田・相馬・近藤を追いかけて、夕方の到着です。  同院は、伊勢神宮で有名な伊勢市の市立病院(って、名前どおり…)。玄関を入ると、右手になにやらショッピングカートが。「なんだろう?」と思っていると、重そうな荷物を抱えたおばあさんが、カートを一台出して、荷物を載せ、悠々と歩いていきました。なるほど!  で、向かうは院長室。「いらっしゃらないのかな?」と思いきや、世古口院長がパタパタっと駆けつけてくれました。入ると、まず目に入るのが、彩り豊かな切り絵(写真参照)。「ゴミ箱のような院長室でしょう~」なんて、先生はおっしゃっていましたが、とんでもないです。書類の束に囲まれつつも、先生のご趣味が見え隠れする、味のある院長室でした。
 そしてインタビューは、アイデアマン・世古口院長発案のショッピングカートの話から、次第に人生相談(?)に。若輩者としては、頭を垂れて聞き入ってしまいました(笑)。


――先ほど、ちょうど患者さんがショッピングカートを使っていらっしゃいましたよ。

 入退院のときって結構な荷物になるでしょう。その荷物運びのために置いているの。ただし、お金は一円もかけていない。同級生が近くのジャスコの支店長をやっていて、「古いカートをくれ」と言って、もらったものなので。  あと、図書室もあるでしょう。あれも、お金は大してかかっていないんだよ。ウチの家を改造するときに、本がいっぱい出てきたのでそれを持ってきたの。新幹線に乗るときに暇つぶしに買った単行本を並べたり…。新聞も、朝早く読んで、読み終わったものを置いているだけ。お金をかけなくても、アイデアだけで、みんながハッピーになれるでしょう。   ――他にもあるんですか?

バイキング!  月に一度、職員食堂を開放してバイキングをやっています。4人いる調理師さんを2チームに分けて、それぞれ屋台をつくって…。どっちが評判が良かったか競争するわけだよ。さらに、食事を余らせるともったいないので、残ったものは研修医に食べさせる。患者さんの食事を職員が食べると苦情が出たりもするけれど、「志を入れておくように」と、ちゃんと貯金箱を置いているので申し開きも立つでしょう。食材も無駄にせず、研修医もハッピーになって、患者さんもハッピー。作っているほうもやりがいがある。  そのほか、一年に2回、職員全員で病院の周りのゴミ拾いする日もあります。掃除の人に任せれば良いんだけれど、みんながしていると、なんだか違うでしょう。患者さんは「何しとるん?」って…。話題性があるし(笑)。  何をするにも、“一石二三鳥”を狙っているんですよ。

――伊勢総合病院さんは、自治体病院で最初のクライアントなんですよね。

 最初、理事長と社長がいるというから、どんなに大きな会社かと思ったら、当時は、実は3人しかいなかった(笑)。今は増えたね。でも、動物的な勘で「こんなに面白いところはないな」と。それからずっとご縁が続いているわけだけれど、僕は大学勤務医時代に良きライバルで良き仲間だった連中のなかにも、いまだに親しい人もたくさんいますよ。お金がなくて安いお酒でワイワイやっていた連中が、みんなすごい病院の院長とかになっているしね…。そういう若いころの仲間、先輩とかはすごく大事。自分一人でできることはたかがしれているから、人に聞いたり、まねしたり、助けてもらったり…。損得で打算的に動いたらいかんけど、人から可愛がられたほうが得ですよ。男性でも女性でも、みんなに好かれなきゃいかんよね。「先生が来るなら会うわ」とか「あいつ、呼ぼう」とかって言われる人間にね。「あいつ、可愛いな」って…。いや、変な意味ではなくてね(笑)。

――ちなみに、先生が今、新しく取り組もうとされていることとは何ですか?

 実は今、大ピンチなんですよ。医者が、大学に引き揚げられてね…。でも、ピンチはチャンス。特徴を打ち出して、スリム化していこうという方針なんです。今考えているのは、内視鏡部門を新設しようかと。旧態依然とした今のやり方ではなく、新しいやり方を模索中です。今後は何か特徴を出していかないと…。たとえば洋服を買うにしても同じ。何でも揃っているデパートで買うこともあるけれど、「あれを買うならあの店」っていうのがあるでしょう。近隣の病院と競合しなくても、向こうにないものがあれば良いわけですよ。当院の場合、この規模(419床)で放射線科医が4人いる。あと、形成外科は、常勤3人、非常勤が4人。特徴的でしょう。あ、もし良かったらご利用ください(笑)  これは、個人でも同じなんだよね。“自分流”を絶対につくらなければならない。「これだったら飛びぬけている」ということを持っていれば、他で差がついても自信はなくならない。僕自身、卒後に病理研修に進んだために、手術に関しては他の人よりも遅たたんですよ。でも、「顕微鏡は見られる」という強みがあったから、あせらなかったし、最終的は追いついたし…。個人でも組織でも、地方でも都会でも、何が強くて何に弱いのかをわかっていれば、あせらないんです。 楽しい一時でした!

●市立伊勢総合病院





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広報部
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。