2007年12月08日
改定は改革のチャンスでもある
松下記念病院●腎不全科部部長 川瀬義夫先生
松下電器産業の創始者・松下幸之助氏の発意で誕生した松下記念病院。DPCは、2004年4月に試行的適用病院として参加し、初期段階から導入しています。そんな同院でDPCに関する取り組みを率先しているのが、川瀬先生です。ざっくばらんな話し口調で、同院での取り組みについて、ひじょうにわかりやすく、的確に説明してくださいました。
――来年の診療報酬改定時にDPC対象病院も増えます。DPC導入がうまくいく秘訣は何かありますか? DPC運営委員会の委員長に任命された際に、「こうやったらうまくいくな」というイメージが持てたんですよ。そして、方針を10箇条くらいにまとめて院長に提示しました。なかでも重要な柱が3つあります。
1つは、コーディングは医師主導で行うということ。医事課や診療情報管理士が行っている病院もありますが、失敗するケースをよく聞きます。というのは、医事課や診療情報管理士が受け持つと、なかなか医師には物申せず、孤立してしまうことが多いんです。だから、コーディングは医師が受け持つこと。これが一番重要です。
2つめは、出来高での収入もリアルタイムで出して、常に比較を行うこと。出来高点数とDPC点数で、5,000点以上差があるケースはすべて僕の元に報告がくるようにしていて、それを毎日チェックしています。
そして3つめは、「DPC通信」。これは毎月紙ベースで発行しているもので、診療報酬関連のニュース記事や、出来高とDPC点数で差が大きいものについてその理由を分析した結果、そのほかDPCデータを用いた分析結果を掲載しています。全部正直に数字で出していますが、個人を責める内容にはならないように気をつけています。これを全医師と医事課職員、各所属長に配っています。紙で配るのは、どうしても見てもらいたいものだから。毎月苦労して作成している甲斐あって、皆よく見てくれています。このDPC通信が、職員の教育ツールになっているほか、指針書として院内全体を1つのベクトルに向けるのにも役立っています。
―コーディングについて「医師に負担がかかる」との話も耳にしますが、そんなことはありませんか? 皆さんが想像されるほど負担にはなりません。慣れれば1症例あたり数分で入力出来ます。医師のポテンシャルは非常に高いと思いますよ。
―なるほど。ただ、診療に加えて、毎日データをチェックして、DPC通信を月刊で発行してとなると、先生はかなり大変ですね。 大変です! DPC通信は、結局休日を使って書いています。
DPCの委員長に任命されたのは、透析医療を担当しているのでもともと包括診療に詳しかったことと、統計にも詳しかったこと、そしてパソコンにも慣れていて、なおかつ、頼みやすかったのが理由でしょうね。
ちなみに、最初は僕が委員長で、他にもメンバーがいたのですが、今では自分ひとりになってしまいました(笑)。ある意味、委員長が僕でメンバーは全職員という感じです。でも、任せられる人を見つけて、任せてしまうのが良いと思うんです。どの病院でも院内に1人か2人は適任者がいるものですよ。
――では最後に、そろそろ年末ですので、新年度に向けての抱負を教えてください。 まずは改定を乗り切るということ。改定前後でシミュレーションを行えば、やるべきことは自ずと見えてきます。近年、厳しい改定が続いているけれど、改革のチャンスでもあるんです。これを機にジェネリックをさらに導入するとか…。そして改革を行うには、DPCを軸にするとわかりやすい。医師は論理的な思考を受け入れやすいので、DPCデータを用いて数字で説明すれば、ちゃんと動いてくれるんです。
また、2009年1月稼動をめざして電子カルテの導入を準備中です。コーディングツールをどのシステムにするかによってデータの管理体制もかわるので、現在いろいろと検討しているところです。
あとは、そろそろ引退して楽になるためにも“後継者”を探さなきゃいけないですね(笑)
広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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