GHCブログ

2008年08月21日

トップダウンとボトムアップで黒字体質に

岩手県立中央病院●望月泉副院長



岩手県は、県内に22の病院と5つの診療所を抱えるという “自治体病院王国”です。なかでも、県内の医療の中枢を担うのが、岩手県立中央病院(730床)。今回は、同院の望月泉副院長にインタビューさせていただきました。望月先生は、7月15日に開催した、GHCセミナー「医療の質と経営の質~DPC委員会の最前線~」で講師を務めていただいたお一人でもあります。

――今回のセミナーのタイトルが「医療の質と経営の質」でしたが、岩手県立中央病院さんの中期計画の中にもまさに同じ言葉が入っていますよね?

平成16年に策定した経営5カ年計画のテーマがまさに「経営の質・医療の質」の“Double Winner”でした。これは16年度から20年度までの計画で、①高度医療・がん診療拠点病院、②政策医療(救急(小児)医療・感染症対策)、③地域医療支援、④人材育成・研修医育成、⑤経営健全化――と、大きく5つに分かれています。

――自治体病院の場合、5項目の1つでもある政策医療を担わなければならないなど、経営が特に難しいといわれます。ただ、貴院は、総務省が発表している「自治体病院地方公営企業決算比較表(平成18年度)」で医療収支比率が全国第3位と、経営面も非常に優れていますよね。まさに“Double Winner”ですね。

確かに現在は、18年度の単年度黒字が約13億円、19年度で14億円という状況です。ただ、経営が良くなったのはここ数年のことです。実は、平成10年度の時点では、約57億円の累積赤字がありました。

――え! 赤字体質から黒字体質へとシフトできたきっかけ、ポイントはどのようなことだったのでしょうか?

一番大きかったのは、トップダウンです。平成12年に、前院長である樋口先生が新院長として就任されました。樋口先生は医療制度について非常によく勉強されていて、DPCについても詳しかったですし、医療制度を踏まえて「病院はどのように進んでいくべきか?」ということを明確に打ち出してくれました。 一方で、ボトムアップも重視し、10のプロジェクトチームを立ち上げ、外来機能や入院機能、DPC導入などについて、それぞれ検討を行いました。各チームにはいろいろな職種のスタッフが参加し、最初はそれぞれのチームメンバーのなかで意識が変わっていき、次第に院内全体へと意識変革が進んでいった形です。

――院内の取り組みにとどまらず、さらには他院と共同の取り組みにも積極的に参加されていらっしゃると聞きました。

代表的な活動が、「がんネットTVカンファレンス」への参加です。これは、全国のがんセンターを中心に、全国約30病院が参加しているカンファレンスで、持ち回りで企画を担当し、毎回、特定のテーマについて話し合っています。たとえば、当院が担当した先月31日のテーマは「TRL(Therapy Related Leukemia:治療関連白血病)を巡る最近の話題」でした。 また、他院との取り組みという点では、DPCデータの有効な活用法の1つである、ベンチマークも貴重です。DPCの導入は、事務職員だけではなく、病院をあげて取り組まなければいけません。その際、医師にやる気を起こさせるには、やはりDPCデータによって何が見えるのかというフィードバックが不可欠です。ベンチマーク分析によって、「自分たちのやった診療は、全国で比較するとどうなのか?」という自院の状況を示してあげることが大切でしょう。

――ところで、貴院では副院長4人体制を採られているんですね。先生はどのような担当なのですか?

私は地域医療支援と地域連携の担当をしています。地域医療支援というのは、主に医師の派遣です。県内にある27の県立病院を中心に、年間3,000件ほど派遣しています。毎日8~9人の医師に行ってもらっている状況です。医師はただでさえ忙しいのですが、当院がめざすのは“マグネットホスピタル”。人が集まって、そして地域に出す、そういう存在でありたいと思っています。

――余談ですが…。先生、日焼けされていますが、アウトドアのご趣味をお持ちですか?

スキーとゴルフです。スキーには毎シーズン行っています。最近仕事は一段と忙しくなっているのですが、スキーとゴルフの時間はなんとかつくっているんです。




[:星:]スペシャルセミナーまで2週間を切りました![:星:] ☆8月29日(金) 「がん医療の質向上と経済学―DPC環境下でさらに役立つ実証分析、日米の事例を通して―」 明治記念館 ☆9月30日(火) 「医療の質と経営の質―DPC委員会の最前線より!―」 福岡・国際会議場

広報部
広報部

事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。