2008年09月26日
病院にもっと権限を託し、広い視野で考えるべき
小牧市民病院●内藤和行医局長
名古屋から程近く、尾張北部医療圏の中核病院として、第3次救急指定病院としての役割を担う
小牧市民病院。今回は、同院の医局長、がん診療連携相談支援センターセンター長などを兼務する内藤先生に、お話をうかがいました。
――小牧市民病院さんを訪問させていただいたメンバーは皆、「非常に良い病院だ」と言っています。今日は、そんな組織作りの秘訣も教えていただければ嬉しいです。ありがとうございます。当院は544床と地方にしては大きめのベッド数です。そして、田舎の病院特有のアットホームな雰囲気と、都市型の病院のような診療機能の2つの側面を兼ね備えていることが特徴だと思います。
私は今までに大学病院や民間病院など、他の形態の病院も勤務したことがありますが、よくありがちな診療科のカベが当院ではほとんどありません。正式に依頼せんを書かなくても診療科間でスムーズに連携できる雰囲気があるのです。それは、1963年に198床の病院としてスタートし、ここ20年間で急激に大きくなったので、昔の“町工場”的な良さが残っているからではないでしょうか。
――昔の中小病院時代の良さを残し、診療科間の壁ができないようにするために、何か意識的に対策を採っていらっしゃいますか?全員に当てはめるのは難しいですが、なるべく1人のスタッフが2、3の機能を持つようにしています。自分の部門、診療科の仕事以外に担当を持つ。そうすると自然に部門や診療科を越えてコミュニケーションが生まれます。
また、当院の医局は、診療科単位ではなく、年齢層で分かれています。地方の病院はこうした形式を採っているところが多く、このことも診療科間で壁ができない秘訣の1つかもしれません。
――ところで、自治体病院ならではの経営上の難しさがあると思いますが…。まず、病院と診療所の連携はともかく、市民病院同士の役割分担は、現状難しいですよね。というのは、行政そのものが縦割りになっているわけです。ある市民病院で特定の診療科の医師が不足した場合に隣の市と連携すればいいものの、縦割り行政の弊害でなかなかできなかったり、市長選で選挙を有利にしたいがためだけに市民病院の充実が謳われたりといった現実があります。そうしたなかで、病院だけが意識変革できるのか…。ただ、当院にしても、救急医療を担っているとはいえ、自己完結型の医療は提供できません。1病院の生き残りだけではなく、もっと大きな視点で連携を図ることが本来は必要です。そのためには、今のように市長や市議会に予算も人事権もあるという現状を改め、病院に権限を託すことが必要ではないでしょうか。
また、これまでは、自治体病院の経営が悪化すると、すぐに民間移管という選択肢が挙がりがちでしたが、民間の病院になれば、病院単体でものを考えるようになります。それでは、従来自治体病院が担ってきた役割を果たすことはできません。安易な市場原理ではなく、地域全体で広い視野で考えなければならないのです。
当院の場合は、これまで比較的経営は順調にきていますが、つまりは周りの病院が苦しい状況にあることに他なりません。いくつかの病院のなかで1つの病院だけが黒字になっても、不十分です。ムダの節減だけでは、角をためて牛を殺すようなもの。国民があまねく十分な医療を受けられるように、地域全体の医療レベルを考えなければなりません。
――最後に、DPCについてもお考えを聞かせていただけますか? DPCについては、正直なところ、ジレンマがあります。従来の出来高制度が、理論上は正しいように思うのです。しかし、医療財政が逼迫しているなか性悪説で考えると、市場原理を導入したDRGが必要になるのもわかります。一方で、DPCはどっちつかずな感が否めません。枝の分かれ方にも科学的ではない部分が見られますし、副傷病名と点数の関係にも納得いかない部分があります。とはいっても、DPC制度が浸透している今、病院としてはなんとか乗り切るしかありませんね。
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広報部 |
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