2008年10月18日
「調整係数廃止は2012年?」――MDV主催DPC特別セミナーより
昨日、メディカル・データ・ビジョン(MDV)社主催のDPC特別セミナーにお邪魔してきました。MDV社ユーザー会「えむでぶ倶楽部」の総会を兼ねたセミナーで、250人以上の方が参加され、大盛況でした。
プログラムは、下記のとおりです。
第Ⅰ部:最新 厚労省DPC情報は?『医療制度改革の展望』
国際医療福祉大学 医療経営管理学科 学科長 高橋 泰 教授
第Ⅱ部:病院の基盤・医療の質 『佐久総合病院におけるDPC導入』
佐久総合病院 診療部長 西澤 延宏 先生
第Ⅲ部:事例発表・月々の請求誤差が10万円前後
『済生会吹田病院のEVE活用事例から ―質の向上とデータ活用―』
大阪府済生会吹田病院 医事課医事企画担当 松木 大作マネジャー
トップバッターの高橋教授は、①急性期の入院医療はすべて包括になるだろう。一般病床として残るにはDPCに参加するべき、②調整係数廃止は、一般的に考えられている100倍もの影響を病院経営に与えるだろう――という2点を強調。
現在、日本の医療は、高齢化の進展と国の財政難という外的要因と、医師・看護師の不足・偏在という内的要因から、スリム化が求められています。1つは病床のスリム化で、もう1つは診療のスリム化。高橋教授は、「スリム化すべき部分の大半が、現在DPCを行っていない一般病床のなかにあるのでは?」と言います。
一方、調整係数廃止の影響については、「調整係数がなくなるということは、みんなががんばればがんばるほど点数がどんどん下がるということ。負のスパイラルに陥る」と、影響の大きさを強調しました。また、調整係数廃止のタイミングについては、「介護保険とのダブル改定である2012年ではないか。ただ、(調整係数を)なくすのは影響が大きすぎるので、無理があるだろう」と予測。さらに、調整係数の代わりの係数として、現在、努力目標に挙げられている、①特定集中治療管理料、②救命救急入院料、③病理診断料、④麻酔管理料、⑤画像診断管理加算――の5項目が評価されるのではないかと指摘しました。
続いて登壇されたのは、MDVとGHCで共同開発しているDPC分析システム「EVE」のヘビーユーザーという噂の佐久総合病院の西澤先生。DPCにどのように対応してきたのかということと、医療の質を向上するための取り組みについて話しました。
診療情報管理体制の強化と、①クリニカルパスの充実、②外来化学療法室の確立、③術前検査センターの設立、④地域医療連携室の多機能化――による標準化の推進を行った結果、DPC導入から2年半か経過した現在、後日会計は3~4%とほとんどなく、退院後にコーディングが変わり再会計するケースもほぼなく、返戻・査定は約4割減少したなど、順調に進んでいるそうです。
医療の質に関しては、責任を持った担当者の配置(同院ではパス専任師長、術前検査センター師長などを配置しています)と研修・教育の充実、情報の開示が大切と指摘しました。現在、長野県厚生連では、DPCに参加している8病院でベンチマーク事業を行おうと準備中で、GHCもベンチマーク分析をサポートさせていただく予定です。
最後は、済生会吹田病院の医事課医事企画担当松木マネジャーです。松木氏もEVEをプロフェッショナルに使いこなしているお一人です。松木氏は、EVEを用いて実際にどのようなチェックを行っているか、出来高包括比較やDファイル比較など、EVEの画面をしながら紹介しながら説明しました。
現在、同院では、D比較結果、計算結果、様式1とFファイルは入院係主任がチェックし、各担当者にフィードバック。さらに、経営の質は経営企画室でフォローし、診療の質はクリニカルパス委員会で検討するという形で、データの質を高めるよう、体制を整えているそうです。
講演の最後、松木氏は、データは“生もの”なので、継続的にチェックしなければならないということ、また、正しい分析を行うには正しいデータが必要なので、データの精度を高めることが重要であるということ、そして分析の目的を考えて、目的に合わせたデータを収集するということを強調しました。
EVEをはじめとしたMDV製品のユーザーを中心に、全国から多数の方が集まった本セミナー。終了後には、演者の先生方に質問を…と、各先生方の前に長い行列ができていました。
広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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