GHCブログ

2009年05月21日

乃木坂スクールで、アメリカの医療についてレクチャー

「仕事帰りにワインでも…」なんて楽しそうな人々を横目に、向かうは国際医療福祉大学青山キャンパス。先週、今週とGHCアキよしかわが国際医療福祉大学大学院の乃木坂スクールでレクチャーをさせていただいたのです。 テーマは、「アメリカの医療制度」。高橋泰教授がコーディネートする「欧米やアジア諸国の医療制度に学ぶ」というコースの1コマです。



第1週目のレクチャーでは、まずアメリカと日本の医療の比較から話をはじめました。そして、米国の医療保険、医療費と医療の質、医療供給システムの推移、メイヨークリニックの事例について解説しました。 医療供給システムの推移に関しては、「出来高支払い→DRG/PPS→マネージドケア」と変わってきたことを説明。この上で、「DRGによって病院の再編は進んだものの、医療費をコントロールすることはできなかったため、現在ではDRGは『偉大なる失敗だった』といわれている」と述べました。DRGでは新しい医療機器や治療法が開発されれば、新たな診断群分類ができ、点数が与えられます。「新しい治療+高い評価」というインセンティブから医師たちは新しい治療をより取り入れた結果、医療費は高くなったのです。

さらに、米国では「キャピテーション」というシステムも導入されていることを紹介。これは、保険の加入者が医療サービスを受けたか否かに関係なく、保険会社が「患者一人当たりいくら」という形で前もって医療機関に報酬を支払う制度で、実際に提供した医療サービスが多ければ当然病院の持ち出しになります。よしかわは、このキャピテーションについて、「日本でも将来起こる可能性は高い」と示唆しました。

さて、第2週目のレクチャーは、「DRG環境下の新しい技術(ステントの事例)」「オバマ大統領は皆保険を実現できるのか?」「P4P」「米国における情報公開」「日本における情報公開」など。

米国における情報公開において紹介したのが、「HHS.gov(http://www.hhs.gov/)」というサイトです。これは、アメリカ政府が公開しているサイトで、近隣の医療機関を検索することができます。しかも、このサイトのすごい点は、ただ「○○という医療機関があります」という情報のみならず、検索された医療機関のなかからピックアップして比較することができるのです。比較する際の項目には、「手術に際して、抗生剤が適切なタイミング(術前1時間以内)に投与された割合」「肺炎の患者に対して病院到着から6時間以内に初回抗生剤が投与された割合」「心筋梗塞の患者に対して病院到着から90分以内にインターベンションが施された割合」などの臨床指標があります。アメリカの臨床指標では、単にある医療行為が行われたかどうかどうかではなく、行うべき医療行為が「適切なタイミング」で為されていたかどうかであることが重要であることがよくわかりました。

よしかわはレクチャーの最後を次のような言葉で締めくくりました。

「アメリカの医療にはいろいろな問題点があることはおわかりいただけたと思います。しかし、その一方で変えていこうというエネルギーがあり、分析や研究が進んでいます。そして、医療機関に対する評価は報酬ではなく、患者への公開という形で表れています」



広報部
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。