2009年06月07日
Dr.NemoのASCOレポート vol.4
GHCメンバーの1人、Dr.Nemoがお届けするASCOレポートの最終弾です。
【01/Jun/2009 Day4】■乳がん Abs#1039
<ラパチニブ+レトロゾール>
転移性乳がん(HR+/HER2+)へのファーストラインで使用した場合のQOL分析です。
転移性の乳がんはがんの質がかなり悪いことが多く、対策がさかんに研究されているもののひとつです。転移性乳がん患者にとってQOLが重要なファクターになることが多く、その中で注目されているのが、重篤な副作用の少ないホルモン療法と分子標的薬の組合せであり、この研究もそれにならっています。
アロマターゼ阻害薬のレトロゾールの主な副作用は倦怠感や多汗など、血管増殖因子阻害薬のラパチニブの副作用は皮膚症状などですが、それらがQOLに与えるマイナスインパクトと、余命延長効果(経過観察だと3ヶ月に対し8.2ヶ月の延命効果)を天秤にかけているのですが、主観・客観入り混じるQOL分析ではなかなか結論が見えづらく。結論はないのかもしれません。まったく別の発表になりますが、遺伝子解析でホルモン療法や化学療法に対する反応性を見る分析プロトコルの検証を行っており、そちらは一定の評価を得ておりますので、次のステップとして、副作用の発現リスクとその強度を予測する方法の開発などが進むと、こういった問題に役立てられるのでは、と夢見るところです。
■その他(膵がん) Abs#4506
<化学療法と血栓症:血栓塞栓予防薬の効果>
膵がんにおける化学療法時の血栓症発症の予防についてです。
こちら、製薬関連の知り合いに進められて聴講してきたのですが、膵がんの化学療法で血栓症が問題になるとは初聞でした。膵がんによって炎症性サイトカインの産生が活発になりDICに似たカスケードで惹起されるようですが、それなりの頻度で発生するらしく、フォンダパリヌクス、エノキサパリン、リバロキサバンなど、おなじみの血栓塞栓予防薬の併用が挙がっておりました。効果のほどはすべてで認められ、特に肺血栓の予防効果を示した、ということです。その効果の順位は、有意差というほどの差はありませんでしたが、現状最強といわれているリバロキサバンがやはりトップ。費用のことを考えれば、エノキサパリンははじめから入れてもいいのかな、という印象です。
■その他(ペインコントロール)
こちら、どのアブストというわけではありません。
末期の緩和医療におけるペインコントロールの考え方について。
日本における終末期のペインコントロールは、良くも悪くも患者しだいかと思われます。患者さんが「痛くて“我慢できない”」状態になってはじめて麻薬の量を調整するなど。対して、他国ではどうでしょうか。たしかに患者さんが「痛い」か「痛くない」かによって調整しているのですが、「痛い」といえば「痛い」と考えるのが少なくとも米国ではスタンダードです。ですので麻薬の消費量がかなり多い。今回も終末期のQOLを考えるセッションをいくつか見たのですが、その躊躇のなさに驚きつつも、当たり前だよなぁとも。日本は疼痛緩和に対して厳しく、薬剤の消費量もかなり少ない、と感じます。その原因は「我慢強い」ことと「このくらいなら我慢できるだろう」との主観主義、この二つの国民性が大きいのではないでしょうか。人によりけり、の部分も多いですし、異論は多いにあると思います。しかし、「痛い」に対して「もうちょっと我慢してみよう」がいいのか「すぐに楽にしてあげるからね」がいいのか。日本人が「痛い」と言ったときは相当痛いことが多いと思うのです。といったことを考えてみました。
【02/Jun/2009 Day5 – 番外編】【今年のASCOを振り返って】
私としては4年連続4回目の参加で、毎回新たな発見にめぐり合い、がん医療の最前線に立ち会っている、という充足感を与えてくれます。本年も、ここには紹介しきれないほどに、今までにない知見を得ることができたと確信しております。この知識をGHCの中で共有し、いかに現場にフィードバックしていけるか、というのが次なる課題となります。GHCのがんに対するサポートは注力している課題のひとつであり、今後のパワーアップにご期待いただきたく思います。
本来は6月1日の夕刻から、弊社主催のサテライトシンポジウムが開催される予定でしたが、新型インフルエンザの影響を考慮し、やむなく中止とさせていただいた経緯があります。来年こそは、の思いで、GHCは来年のASCOに向けて始動しております。詳細は、まだお楽しみ、ということで…。
2010年のASCO(シカゴ)で会いましょう!
※この記事は速報であり、のちに改訂を加える場合もございます。
広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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