2009年06月16日
DPC対応をめぐる院内改革――松阪市民・世古口先生、佐久総合・西澤先生
日本医療マネジメント学会学術総会第1日目、長崎の夜、日ごろお世話になっている方々を招いて懇親会を開きました。この日の懇親会は、食事をして団欒して…というだけではなく、スペシャルイベントとして松阪市民病院の世古口務先生と佐久総合病院の西澤延宏先生に小レクチャーをしていただきました。
世古口先生のレクチャーは、「自治体病院はバカにされている。二人で見返してやろう!」と大学の先輩でもある院長先生に口説かれて松阪市民病院に赴任してから、いかに病院を改革してきたか、というお話。従来は単年度3~10億円の損失だったものの、DPCを導入した昨年度は約1億1800万円の損失にとどまり、今年度は黒字になる見込みという、まさにミラクルなストーリーでした。
一体、どんなマジックを使ったのか、気になりますよね。
一番のポイントは、職員の意識を“出来高感覚”から“DPC感覚”へ改革することだったそうです。世古口先生が挙げるDPC感覚のポイントとは次のようなものです。
①入院での検査は必要最小限に
②予定入院患者手術では術前検査は外来で
③検査後、手術後の検査は、可能であれば外来で
④治療は効果的なものを、効率よく
⑤薬剤、材料は廉価なものを使用
⑥内服薬持参の徹底
⑦経腸栄養剤は問題がなければ薬品分類に属するものでなく、食品分類に属するものを使用
⑧出来高比較で病名、治療の妥当性を確認
⑨管理料、指導料を落とすことなく算定
⑩データの分析と説明:出来高との比較、他病院とのベンチマークが必要
こうした意識改革を進めるに当たっては、世古口先生らしくていいなと感じたのですが、ほめることを大切にされてきたそうです。
「(がんばっている職員を)皆の前で紹介したら、粋に感じてやってくれるんですよ」(世古口先生)。そして、こうした一つひとつのことを積み重ねることで、「全国の自治体病院は、赤字とはいっても、ある程度は改善できる」と力強いお言葉をいただきました。
一方、西澤先生のレクチャーは、①佐久総合病院のDPC導入、②長野県厚生連の取り組み、③標準化の推進――の3本柱でした。このうち、②は、長野県厚生連下の8病院で行っているベンチマーク事業で、「顔の見えるベンチマーク」「長野県厚生連全体の医療の標準化」「調整係数の低い長野県医療の分析」の3つを目的としています(昨年末に行われた合同のDPC勉強会については、
このブログでも紹介させていただきました)。
そして3つ目の標準化については、「DPC対応のキーワード」と西澤先生。この標準化を進めるに当たって、「責任を持った担当者の配置」「研修・教育の充実」「情報の開示」を特に意識してきたそうです。
たとえば、「責任を持った担当者の配置」に関しては、「標準化されたパスを作成するには、パスのプロが必要」と、2006年4月からパス専任師長が誕生しました。結果、パスの使用率は年々少しずつ上がり、2008年現在で40%ほどになっているそうです。
このほか、標準化に関連して、術前検査センターについても紹介してくださいました。DPC導入後に、検査の外来シフトが進んだことで、各科の外来での検査件数が増加したことを受けて設立したのが、術前検査センターです。西澤先生曰く、「言葉は悪いけれど…、“究極の丸投げシステム”(笑)」とのことで、この存在によって、医師は手術適応と日程を決めるだけで非常に楽になったとのことです。この術前検査センターを見学にいろいろな施設の方がいらっしゃっているそうで、実は先日、GHCメンバーも見学させていただきました。その様子は後日、このブログで紹介します。
この日の懇親会には、西澤先生以外にも、前述のパス専任師長さんをはじめ、佐久総合病院から複数のスタッフの方がいらっしゃっていました。みなさん、非常に気さくで、院内の風通しのよさ、雰囲気のよさが伝わりました。
広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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