2009年09月19日
データは何のために必要なのか? ――日本診療情報管理学会学術大会
木金と、「第35回日本診療情報管理学会学術大会」(学術大会長:聖隷浜松病院院長・堺常雄先生)のために浜松に行っていました。
第一日目。DPCやがん登録、電子カルテ、カルテ記載など各会場でさまざまな演題が繰り広げられているなか、夕方に行われたシンポジウム「DPCの来し方行く先」を覗いてきました。
シンポジウムは、演者に、浜松医科大学医学部附属病院副院長の小林利彦氏、国立病院機構九州医療センター医療情報管理室長の阿南誠氏、東京医科歯科大学大学院医療経済学分野教授の川渕孝一氏、産業医科大学医学部公衆衛生学教授の松田晋哉氏、厚生労働省の宇都宮啓氏(元・保険局医療課企画官)と、有名な方々がずらり。
ただ、残念ながら、厚労省の宇都宮氏は老人保健課に異動になったそうで、「DPCの来し方行く先」というタイトルではあるものの、「今後のことを話せる立場ではない」と、これまでの経緯のおさらいに終始していました。この時期、仕方ありませんね…。
パネルディスカッションでは、まず、データの精度を高めるための取り組みをテーマに、各演者から次のようなコメントがありました。
小林氏:臨床医の教育とITシステムの整備が必要
阿南氏:医師に負担をかけない体制が大切。MEDIS標準病名に精通している医師はほんの一部に過ぎず、医師に教育することは難しい。DPC担当の診療情報管理士が必要。
川渕氏:「データが合っているのか」という一点に限る。カルテや退院サマリーがきちんと書かれていないケースも多く、土台を整備しなければいけない。
松田氏:「情報を共有する」という意識を持つことが何より必要。たとえば、電子カルテの場合、効率化が先行し、互換性のない情報化が進んでしまった。本来、コアの部分は国が標準を決めるべきだろう。また、パスも同様で標準化を進めるツールのはずが、どんどん種類が増えている。
宇都宮氏:厚労省として、①「適切なコーディングに関する委員会の設置」を準備病院にも求めることとした、②対象病院は診療録管理体制加算を算定していること、準備病院は診療録管理体制加算を算定している、もしくは同等の体制を有することとした、③新たな機能評価係数で、正確なデータを提出していることを評価――という3つを推進。
このほか、パネルディスカッションの最後には、「データを受け取る側、情報を持っている側のそれぞれの立場から、よりよいデータを整備するための方法を教えていただきたい」という会場からの質問に対して、川渕氏が、「『なぜ、必要か? 本当によくなるのか?』という哲学が必要」とコメント。「現場へのフィードバックがなければ、いいデータは揃わない」と、指摘されました。
また、松田氏も、「『何のために?』が必要」と川渕氏の意見に賛成。さらに、「その答えは、『質を良くするため』だろう」と述べた上で、「DPCデータは質の改善に使えるのに、まだほんの一部の病院しか使っていない状況で、情報を活用するという意識が足りないのではないか」と問題点を指摘されました。
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広報部 |
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