GHCブログ

2009年10月28日

財政事情を理解した上で、医療の価値をデータで示すべき――GHC5周年シンポジウム・田中滋先生

月曜日に続いて、GHC5周年記念シンポジウム「オピニオンリーダーに問う 日本の医療はどこへ進む?」の報告です。

田中先生

第2弾の今回は、慶應義塾大学大学院教授の田中滋先生のご講演について。渡辺の恩師でもある田中先生は講演の冒頭、田中ゼミでの渡辺(ワタゾネス)にまつわるエピソードも教えてくださいました。

さて、田中先生は、「医療提供体制と社会保障制度――社会共通資本としての医療を支える政策とは?」と題して、医療提供側の主張一辺倒ではなく、医療提供側から見た課題に対して、財政の側からはどう見えるのか、さらに日本の社会保障制度を維持するという観点から考えるとどうか、というマクロな視点でわかりやすく説明してくださいました。

まず、医療提供体制の課題としては、周知のとおり、下記のようなものがあります。 ●急性期病院が全体的に疲弊している ●救急医療の危機的状況が加速している ●外科医が不足している ●公立病院の経営が弱体化している ●専門医制度が標準化されていない

また、対GDP比の医療費が諸外国に比べて低いということも、最近よく指摘されています。医療費は、年平均1.5%の割合で増えているものの、実は1人あたりの医療費はすべての年齢階層で減少しているそうです。

こうした現状を考えると、当然、「医療費を上げるべき」という論調になりますが、田中先生は、「医療費を増やすように言い続けてきましたが、社会保障制度の現状を考えると、むやみに言うことはできません」と、一旦、釘をさされます。ただし、医療費を増加することに決して反対するわけではなく、財政側の主張も知った上で主張をすべきというのが先生の見解です。

財政の側から考えると、リーマンショック以降、2009年度の保険料収入は顕著に減少しました。その一方で、拠出金の割合は上がっているため、保険者側は非常に大変な状況にあると、田中先生は説明されます。

「保険料金額を同じだけいただくには、“率”を上げなければいけません。しかし、中小企業はすでに大変な状況にあります。医療費を上げると主張するだけではなく、そういった事情を知っておく必要があります」

最後に田中先生は、「医療は患者・住民との共同生産」であるべきと主張。社会からの信頼を得るための方策として、まずは「医療を標準化し、データを見せること」が必要不可欠と指摘されました。そして、「価値があることをわかってもらうこと」「社会を支える仕組みであることをデータで示すことが必要」と締めくくりました。




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広報部
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。