GHCブログ

2010年02月07日

20人の医療クラークで勤務医の負担軽減、医学管理料・指導料の算定徹底で黒字化――DPC改定直前セミナー

先週30日(土)、ベルサール九段にて、DPC改定直前セミナーを開催しました。 今回は、岩手県立中央病院副院長の望月泉先生と松阪市民病院診療部経営担当の世古口先生をゲストスピーカーに招き、「生き残れる自治体病院とは?」をテーマにこれからの急性期病院のあり方についてご講演いただきました。

望月先生

望月先生の演題は、「地域住民が必要とする病院をめざして―岩手県立中央病院の取り組み―」。このタイトルの背景には、「地域住民が必要としないような病院は潰れる時代」という、望月先生の強い思いがあります。 地域住民に必要とされる病院になるためには、医療の質と経営の質のdouble winnerでなければいけない、さらに、そうした病院組織をつくるためにまず重要なのが「いかに医局(医師)のモチベーションをあげるか」ということ。岩手県立中央病院では、医師のモチベーション向上のために、院長が明確な言葉で病院の方向性を伝えるとともに、副院長や部長クラスに浸透させて代弁者になってもらうというトップダウン、院内全職員を小グループに分けて院内発表会を行うというボトムアップの両方を進めていったそうです。

さらに、勤務医の負担を軽減するために、昨年12月に医療クラークを20人に増員したほか、注射や処置など看護師や助産師の業務拡大、ERや手術、ICUなどにおけるフィジシャンアシスタントの導入を検討されています。特に、医療クラークは、①診断書や退院証明書、退院サマリー、紹介状の返書などの文書作成補助、②DPC入力補助、③クリニカルインディケータの入力補助(がん登録や脳卒中登録、手術室の麻酔記録原簿、心カテデータ)、④術前カンファレンスの準備、⑤学会提出用のデータベース入力、学会発表用のパワーポイント作成補助――など幅広い業務を担い、「非常に助かっています」とその有用性を指摘されました。

世古口先生

松阪市民病院・世古口先生の講演は、医師は減少、看護師も増加することなく、職員の意識改革によって、減価償却を除いた医業収益の黒字化を1年間で達成し、経常収支の黒字化(一般会計からの繰り入れ含む)も目前という、大きな成果をいかにして実現してきたのか、というお話でした。

具体的な手法の一つは、先生が「落穂拾い作戦」と呼ぶ、薬剤管理指導料や肺血栓塞栓予防管理料、退院時リハビリテーション指導料などの医学管理料・指導料の算定を徹底しようということ。

また意識改革という点では、医業収益の0.5%を使って医師の人事評価制度を運用されています。行動評価、業績評価、特記事項評価という3つの側面から細かく評価を行い、その結果を年に2回のボーナスに反映させるという仕組みです。そしてこの分は院長室で一人ひとり現金で手渡しをされているとのこと。 こうした成果主義の導入は「公平な考課が難しい」といった声をよく聞きますが、松阪市民病院では、「不満の声があがることもなく、皆、納得してくれている」ため、今後、看護師への導入も視野に入れているそうです。

GHC渡辺

最後に登壇したGHC渡辺からは、前半にDPCにおける各部門の役割、後半にDPC改定の行方について講演させていただきました。 看護師、OT・PT、管理栄養士、薬剤師、医事課・診療情報管理士、企画室、地域連携室というそれぞれの部署ごとに、どのような分析を行い、どのような戦略をとるべきか、説明。各部署が一丸となることで、患者さんのためにも、病院経営のためにもプラスになることを強調しました。

また、最後の質疑応答では、「自治体病院の経営形態として、(地方公営企業法の)全部適用か、独立行政法人化のどちらがいいか」という質問に対し、世古口先生が「全適を経験していますが、事業管理者は市長直属の部下。市長が交代すると、立場が変わることを覚悟しなければいけない。一方、赤字になってから独法化すると非難されがちなので、経営をよくしてから独法化するのがいいのではないか」と見解を示されました。


広報部
広報部

事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。