2010年06月14日
医療マネジメント学会ランチョンセミナー第1日目
11日(金)、12日(土)と、札幌で日本医療マネジメント学会の総会が開催されました。
メイン会場の札幌コンベンションセンターは、ガラスを多く取り入れ、気持ちよい陽光が差し込む、綺麗な建物です。
病院経営関連では日本で最も大きな学会なので興味深い演題も多いのですが、GHCとしては、なんといっても今回は二日連続で行うランチョンセミナーに気合が入れ、挑みました。
「病院の枠を越えたDPCデータの活用」というテーマで、2日間に渡ってのランチョン。
第1日目は、「地域医療の質向上をめざすコンソーシアムの試み」と題して、東海地区自治体病院コンソーシアム(ToCoM)と、北海道地区自治体病院コンソーシアム(DoCoM)の取り組みの紹介を中心にした内容をお届けしました。
座長は、ToCoMの世話人である、松阪市民病院の総合企画室副室長・世古口務先生。演者は、DoCoM代表世話人の砂川市立病院院長・小熊豊先生、小牧市民病院・がん診療相談支援センターセンター長・内藤和行先生、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのマネジャー・相馬の3名。
トップバッターの内藤先生は、ToCoMの立ち上げ経験について話してくださいました。
名古屋という地方都市を持つ東海地区は、集約型の医療を少ない医師数で行っているほか、救急搬送の“たらい回し”が全国でも最も少ないそうです。ただ、他地方と同様に自治体病院の財政は年々厳しくなっており、地区内の自治体病院が集まってベンチマーク分析を通して経営改善、医療の質の改善を行おうというコンソーシアムが始まりました。
講演では、これまでの会合で、どのような分析を行い、どのような結果が出たのか、そして回を追うごとに各病院でどのようなカイゼンが見られたのか、紹介してくださいました。
内藤先生は、講演の最後、「同じ地域の同じ経営基盤を持つ病院が、ベンチマークという自己評価を行い、経営的実態を比較することは、多くの経営的困難を抱える自治体病院にとって、実効的な対策を考えるのに役立つと思います。また、こうした会合は、参加施設に対して経営改善の動機付けを与えてくれました」とまとめました。
続いて、GHC相馬からは、ToCoMにおいてこれまで行ってきた分析内容と結果について、より詳細に説明させていただきました。在院日数や術前術後日数の内訳、投薬・処置・注射・画像といった医療資源の使い方などについて、全国の病院とToCoM病院ではどのように異なっているのか、あるいは、ToCoM病院のなかでもそれぞれどのような差があるのか、といった資料をお見せしました。
ToCoMの会合では、分析結果を各病院に資料として持ち帰っていただき、院内の担当者にもフィードバックしていただいています。その結果、在院日数が短縮されたり、医療資源の使用状況が変わったりと、確かな変化が見られました。また、参加病院からは、「標準化できる疾患については東海地区でのパスを設定できないか」という案も挙がりました。
また、講演の最後には、DPCデータだけでなく、病院のあらゆるデータを基にした多角的な重要業績評価指標、いわば「病院版KPI(Key Peformance Indicator)」の考えについて説明させていただきました。患者のみならず、病院もまた情報が不足しています。環境変化が激しいなか、継続的なカイゼン文化を院内に根付かせて行くためには、経営判断をするための情報が必要ということをお伝えしました。
最後の小熊先生からは、DoCoMの取り組みについて講演していただきました。
DoCoMは、北海道内の自治体病院のうち、DPCに関連している13施設すべてが参加を表明し、1月末に第1回会合を開催しました。それぞれの病院は、「病院のデータが見たい」「自院の立ち位置が知りたい」といったお考えの下、参加されているとのこと。第1回会合の時のことを振り返り、小熊先生は「(ベンチマークの)データを見て、皆、唖然としていた」とおっしゃいます。
また、小熊先生は、講演の冒頭、「経験と勘の経営には落とし穴があるのではないか、また、DPCを迎えるにあたって何かカイゼンすべき点があるのではないかという想いがあって、小牧市民病院の末永先生からGHCを紹介していただき…」とGHCとの馴れ初めについても語ってくださいました。
最後のディスカッションでは、施設名を公開した上でベンチマーク分析をすることについて、それぞれの演者から意見が上がりました。内藤先生は、「実名というのは衝撃的だと思います。自院の結果がよければいいですが、悪ければ、やはり気まずい。でも、だからこそ、現状を受け止めてカイゼンしようというモチベーションになっています」と率直にコメント。座長の世古口先生も、「最初の分析のときには標準化が遅れていた病院が、結果を見て、半年で驚くほど改善していました」と、実名での比較の効果について言及されました。一方、小熊先生は「自治体病院間であればデータを公開することに抵抗はないし、ざっくばらんに情報交換ができる」とおっしゃいます。また、相馬も、「『実名で比較をすることで、言い訳ができない』と聞きます」と、これまでの経験からコメントさせていただきました。
あっという間の1時間は、「こうした取り組みが全国にも広がってほしい。これまでの経験、ノウハウについては喜んで教えます」という世古口先生の力強いお言葉で終わりました。
広報部 |
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