2010年06月23日
乳がんの腫瘍切除、クリアマージン1㎜で再発のリスクは?
本日もGHC根本によるASCOレポートです。
4日目に行われた演題からピックアップしてご紹介いたします。
◎複合分子標的薬「トラスツズマブ+マイタシン」の効果は?
A phase Ib/II trial of trastuzumab-DM1 (T-DM1) with pertuzumab (P) for women with HER2-positive, locally advanced or metastatic breast cancer (BC) who were previously treated with trastuzumab (T).
乳がんに関する演題です。
みなさんもよくご存知のトラスツズマブにマイタシン(チューブリン合成阻害剤)をくっつけ、HER2蛋白(を持つ腫瘍細胞)にマイタシンも同時に作用させよう、というもの。分子標的薬に従来の抗がん剤を付加して、標的細胞に有効に作用させようという複合薬剤です。
これにより、従来全身投与していた抗がん剤の毒性を抑えることもできるため、今後はこうした複合分子標的薬の開発が進むものと予想されます。
この試験ではさらにパーツズマブ(HER二量化阻害剤)も加えています。
Phase Ib/II という、トライアルとしては初期段階であり、結論を出すには早い状況ですが、HER2陽性の限局進行乳がん患者に対して、その進行を阻害するものとして着実な成果を挙げているとのことでした。
以前からトラスツズマブ(ハーセプチン)とパーツズマブ(オムニターグ)の組み合わせは、ハーセプチンをレジストする進行乳がんに対して有効とされていましたが、それよりも明確に無憎悪生存期間(PFS)の延長に寄与しそうです。
◎1㎜のクリアマージンでは、局所再発のリスクは?
Determination of clear margin in breast-conserving surgery: Is 1 mm needed?
腫瘍切除の際にクリアマージンをどの程度とるかは、取り残しによる再発のリスクと、正常組織温存によるQOL向上とのバランスから、以前より議論がなされている問題の1つです。
診断技術の進化も手伝って腫瘍の境界がよりクリアになってきている現在、どの程度までマージンとして設定するか、局所再発のリスクを検討した研究成果でした。具体的には、これまでの研究において、マージン設定は3mm未満とそれ以上で局所再発に差はなかったため、1mmではどうか、という内容です。
腫瘍サイズやレセプターなどのステイタスからも検討されていましたが、マージンのみに着目すると、組織学的に腫瘍細胞ネガティブの場合、10年後の局所再発は5.8%(n=1,121)、腫瘍境界ぎりぎり(1mm未満)だと10.6%(n=1,038)、ポジティブだと14.7%(n=365)という結果でした。
結論としては、1mm以上のマージンが確保されれば、1mm未満と比較して有意に局所再発リスクが下げられる、と報告されました。
あくまで境界が明瞭な腫瘍に限られるかもしれませんが、これだけクローズなマージン設定が可能と考えると、患者の身体的負担軽減に寄与するものとして大きく、今後の検証に期待が高まります。
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