2010年06月24日
世界で進む医療の質向上に向けた取り組み――ASCOレポートvol.5(最終)
先週後半からお届けしていた、GHC根本によるASCOレポートの最終号です。
今回は、最終日5日目のハイライトと全体の振り返りをお届けいたします。
◎「ソラフェニブ+cixutumumab」、肝細胞がんにおける効果は?
A phase I trial of escalating doses of the anti-IGF-1R monoclonal antibody (mAb) cixutumumab (IMC-A12) and sorafenib for treatment of advanced hepatocellular carcinoma (HCC).
IGF-1(インスリン様成長因子1型)受容体のモノクローナル抗体であるcixutumumabとソラフェニブを組み合わせたものが肝細胞がんの分子標的薬として効果があるか、という臨床試験です。Phase Iの試験 であり、トライアルが開始されたばかりのものでした。
IGF-1Rは最近の分子標的薬ではとみに着目されているレセプターであり、さまざまながん種で効果が検討されています。
概観として結果を見ると、ソラフェニブ単体より若干の成果があったといえそうです。副作用について演者に質問したところ、「データは出揃っていないが、少なくともソラフェニブの副作用(とくに皮膚症状)を増強することはなさそうだ」とのことでした。
Cixutumumabをはじめとした抗IGF-1R-mAbは肝細胞がんのみならず、肉腫などの難しいがんにも効果が期待されている薬剤だけに、今後も着目しておきたい薬剤の1つといえます。
さて、最後に、ASCOレポートの締めくくりとして、「医療の質」に関する検討を少しご紹介します。
日本でも厚生労働省がようやく重い腰を上げて、国として医療の質を検証する準備に入りました。しかし、世界を眺めると、この取組がどれほど遅れているのか、気づかされます。
2日目に遡りますが、Education Sessionの1つに、「How to Use Data to Improve Practice: Nexus of Quality and Efficiency」というタイトルのものがありました。
各演題も下記の通りで、まさに医療の質を問うものです。
・Getting More out of QOPI
・Challenge of reducing disease specific variation care.
・Quality and Efficiency – Continuous Improvement Tools for the Oncology
このセッションでは、ASCOが中心になって全米で取り組んでいる「QOPI(Quality Oncology Practice Initiative)」を取り上げ、「医療においてクオリティとは?」ということからはじまり、「なぜ定量化しなければならないのか」、「そのためにはどうすべきか」といったことが体系的に語られました。
このなかで語られていたことは、「医療の質」を測るにあたり「診療内容の標準化」はあくまでもスタートラインであり、「アウトカム」「患者の満足度」や、「費用対効果」などを複合的に評価する必要があるということ。
ごく当たり前のことじゃないか、と思うかもしれません。しかし、今の日本でこれを実現しようとすれば、まだまだ気が遠くなるほどのステップが必要なのではないでしょうか。
国を上げてのガイドラインの策定やその遵守度合いの調査など、日本では進んでいない取り組みに、世界ではすでに取り掛かっています。
これまた日本では遅々としてデータベース化が進まない「がん登録」に関しても、アウトカムを調査するために世界的には国が管理しているのが標準的ですし、「QOL」への取り組みについても他の先進諸国に比べれば日本はまだ遅れているように感じます。
とはいっても、足りないことばかりを指摘して、憂いていても仕方ありません!
GHCとしても、一民間企業ながら何かできることはないか。
実証的データ分析の有用さを医療関係者のみならず、社会一般にもっと知ってもらい、最終的に国を動かすようなインパクトにつなげられれば…、そんなことを感じた日々でした。
広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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