2010年09月29日
情報格差と健康格差――抗加齢医学の実践2010
9月19日、20日の2日間に渡って開催された「第10回抗加齢医学の実践2010」の2日目、シンポジウム3「医療問題を考える」でグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン代表の渡辺が講演を行いました。
このシンポジウムは、日本病院会名誉会長の山本修三先生が座長を務め、渡辺を含め2つの講演が行われました。
渡辺からは、「
DPC制度で社会にみえる医療を!」というタイトルで、DPCデータをはじめとした院内に眠っているデータを医療の質向上に活用する方法、また、「患者に選ばれる病院」になるための情報公開に活用する方法について説明いたしました。
どの病院でも、財務諸表や外来、DPC、レセプト、材料購入・発注・消費、地域連携など、さまざまなデータが院内のどこかに必ず存在している一方で、「①誰がどのように管理しているのか?」「②データを分析しているのか?」「③分析した結果を院内で共有できているか?」と問うと、不明確である場合が多々あります。
そこでまずはDPCデータを活用して分析できることを具体的に紹介した後、後半で、患者に向けた情報公開の方法について言及いたしました。
全がん協による、がん種別の5年生存率の公開、富山県によるがん診療連携拠点病院の各5年生存率公表などの都道府県単位での情報公開、さらには米国政府が運営している、医療のプロセスや患者満足度などの指標によって病院を選ぶことのできる病院比較サイトといった、すでに始まっている取り組みを紹介。
その上で、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンが開設した病院検索サイト「病院らしんばん」(
http://www.byouin-rashinban.com/)を紹介させていただきました。
講演後の質疑応答の時間では、「今後、日本の医療はDPCからDRGに向かうのでしょうか?」といった質問のほか、病院らしんばんに対して、「社会のリソースとして、患者も見ることができるサイトは貴重」といった好評の声もいただきました。
また、同じシンポジウムのもう一人の演者である、山口大学医学部地域医療推進学教授・福田吉治先生の講演も非常におもしろかったです。
「
日本の健康格差」というタイトルで、日本においてどのような健康格差が実際に生じているのか、さまざまなデータを提示し、紹介してくださいました。
たとえば、OECDが公表している「相対的貧困率」。「OECD Growing Unequal 2008」によると、日本は30カ国中、メキシコ(18.4%)、トルコ(17.5%)、米国(17.1%)に次いで4番目に高い14.9%です(OECD平均は10.6%)。
ちなみに、相対的貧困率とは、世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得の中央値の半分に満たない世帯員の割合のこと。あくまでも「相対的」な貧困率なので、一般的にイメージする貧困率とは異なるかもしれません。
また、非正規雇用は2009年で若干、減少したものの増加傾向にあり、現在では3分の1を占めています。同様に、生活保護世帯数、失業率、自殺による死亡者数も、90年代後半から増加傾向にあります。
このほか、「日本における健康格差の実態」として福田先生が紹介してくださった、学歴や所得と健康(病気)の関係も非常に衝撃的でした。
たとえば、高脂血症の場合、男性では大きな差はないものの、女性では大学卒、高校卒、中学卒で顕著な差が見られます。高脂血症の発症割合は、大学卒が最も低く、中学卒が最も高いのです。同様の傾向は、男性の糖尿病でも見られました。
さらに、福田先生は、「経済的な理由で治療費を支払えない人が増えている」と指摘されます。こうした現状を受けて、福田先生は、「健康格差の実態を明らかにすることが、まず、大切。患者の社会的背景をより考慮した上で、健康格差の縮小に向けて考えなければならない」と締めくくりました。
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広報部 |
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