2011年01月14日
「調整係数」に変わり導入された「基礎係数」とは?
1月13日にDPC評価分科会が開催されました。
今回、前回の会合で急展開をみせた「医療機関別係数」のなかの「調整係数」について、何らかの動きがあるのではないかと予測したマスコミ関係者が多かったようです。
いつもなら傍聴席があいている時間に、一般傍聴席受付に到着したにもかかわらず、「立ち見なら…」という受付担当者。その言葉に驚きながら、会場入りすると、確かに一般傍聴席はいっぱいでした。そんな満席の傍聴席に厚生労働省関係者やDPC評価分科会委員の方々も、なんとなく落ち着かない様子でした。
さて、マスコミ関係者皆様の予想通り、今回の会合で「医療機関別係数」の役割と今後の方向性が明確化されました。
まず、機能評価係数Ⅰ、Ⅱについては、(新)機能評価係数Ⅰ、Ⅱとして下記のように設定されました。
(新)機能評価係数Ⅰ…
医療機関の人員配置や医療機関全体として有する機能等、医療機関単位での構造的因子(Structure)を評価する係数として、全て出来高体系における点数設定を元に設定する
(新)機能評価係数Ⅱ…
基礎係数および(新)機能評価係数Ⅰの考え方とのバランスも踏まえ、診療実績や医療の質的向上への貢献等に基づき、医療機関が担うべき役割や機能を評価するインセンティブとして設定する。その際、医療機関群の特性に応じた項目の設定も含め、その内容及びは配分について、今後検討する。
これに対し、池上委員・慶応義塾大学医学部医療政策・管理学教授から、「機能評価係数Ⅰについては現行の機能評価係数Ⅰと同じでは?」という主旨の質問が投げかけられ、厚労省担当官のほうから「現行の機能評価係数Ⅰと同じだと考えてくれていい」との回答がありました。
また、機能評価係数Ⅱについては、ゼロからつくるのではなく、これまでの①データ提出指数②効率性指数③複雑性指数④カバー率指数⑤救急医療係数⑥地域医療指数の6項目を見直し、加えるべき項目があれば加える方向とのことでした。
機能評価係数については、これまでその意味や役割について、たびたび議論が重ねられてきたため、その内容を整理し、「機能評価係数の意味をはっきりさせたい」という意図があったようです。
今回の会合で争点となったのは、「調整係数」にかわり、新たに導入された「
基礎係数」です。
厚労省保険局医療課の迫井正深企画官も「おもいっきりシンプルにした」と表現していた、この
基礎係数は下図「見直し後のイメージ」とともに提案されました。
この
基礎係数は、機能評価係数Ⅰ、Ⅱでは評価しきれない、基本的な診療機能に対する診療報酬を算定するために導入されるとのことです。
ここまでは、疑問や異論を唱える委員はいなかったものの、この
基礎係数は、DPC 病院の診療機能(施設特性)を反映させるため、いくつかの医療機関群にわけて、医療機関群で共通の係数にするという点に、委員から質問や不安の声が挙がりました。
各医療機関群のなかで改定2年前の出来高実績データにもとづいた
基礎係数を算出し、平均値をその医療機関群の
基礎係数とするとの提案に対し、「どういう基準でグループ化するのか?」「平均値では施設特性を反映できないのでは」など、議論が繰り広げられました。
こうした議論を受けて、相川委員・財団法人国際医学情報センター理事長から、「これまでの議論を反映したもの」と今回の提案に賛成したうえで、「気になるのは
基礎係数のところ。あまり複雑にしないほうがいい。実際にいくつか(の医療機関で)検証してみて、平均値だとどうなのかというのを検討していけばいい」との発言がありました。
これに対し厚労省担当官も実際にどのような基準で医療機関をグループ化していくかは、今後具体的な数字を出して検証してみたいとの回答を述べました。
この回答に委員も概ね合意した様子で、最後に西岡清分科会長・横浜市立みなと赤十字病院名誉院長から、「1つの目標としてグループ化をめざしていく」という主旨の内容が述べられ、医療機関群に分けて
基礎係数を設定するのか、医療機関個別に
基礎係数を設定するかについては、今後、慎重に議論をすすめていくとのことでした。
今回の会合は議事がスムーズに進み、予定時刻の30分前には会合が終了しました。
図 見直し後のイメージ
機能評価係数Ⅰ、機能評価係数Ⅱ、
基礎係数の配分については、まだ確定はしておりませんが、
基礎係数の割合が一番大きくなるとのことでした。
ちなみに今回の配布資料では、これまで「DPC」とされていた「DPCにもとづく1日当たり定額報酬算定制度(支払い制度)」はすべて「DPC/PDPS」と表記されていました。
参考資料:厚生労働省「平成22年度第10回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会 議事次第」
http://
www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000106sz.html■「病院らしんばん」コラム 更新中!■
広報部 |
|
事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
|