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2011年04月20日

中医協 森田新会長選出。チーム医療に関する調査の推進

4月20日、第189回中央社会保険医療協議会総会が厚生労働省(以下、厚労省)で開催されました。 開始30分前に会場へ到着したにもかかわらず、会場の前は、一般傍聴席に座るための記者たちの長蛇の列。『行列のできる審議会~中医協の真実~』(新井裕充著・ロハスメディア発行/http://www-old.ghc-j.com/ghcblog/index.php?e=475)を思い浮かべながら会場に足を踏み入れました。


会場はDPC評価分科会の数倍の広さでした


冒頭、同協議会長の選出が行われました。 そこで、協議会長の選出を受けた東京大学大学院法学政治学研究科教授・森田朗会長から、同協議会を運営するにあたって、「エビデンスに基づき論理的に議論していきたい。時間は貴重な資源。会議時間を考える必要がある」といった主旨のコメントがありました。


一般傍聴席と協議会委員の方々までの距離も遠いです


今回の主な議題は、「先進医療専門家会議の検討結果報告」、「医療機器の保険適用」「臨床検査の保険適用」「病院医療従事者の負担軽減」の4つ。

なかでも委員から多くの意見があがった議題は、「病院医療従事者の負担軽減」 についてでした。 まず、負担軽減策として、診療報酬上、評価が低い薬剤師の業務のなかの「薬物療法プロトコルについて提案、協働で作成」「患者の状態観察に基づく薬効確認」「患者の状態に応じた積極的な処方の提案」「薬物療法の経過確認及び同一処方継続の可否の提案」などについて、「薬剤師による積極的な提案によって、医師などの医療従事者の負担がどの程度軽減されるのか」、「どのような業務を薬剤師が担うことにより医療安全及び薬物療法の質が向上するのか」という観点から調査することを、厚生労働省担当官から提案されました。 これに対し、いつかの質問が委員からあがりましたが、調査に対しては概ねの合意が得られました。

次に看護師の業務負担軽減策を検討。調査項目の1つの看護師の業務体系について、いくつかのデータをもとに3交代制と2交代制のメリット・デメリットを提示。 独立行政法人国立がん研究センター理事長・嘉山孝正委員は3交代制から2交代制へ勤務体系を変更したことによって、「離職率が18%から4%になった」と発言。厚労省が資料として用意していた『潜在看護師の離職理由(2007年3月調査)』に関して、「データが古すぎる。今現場で働いているナースにアンケートをとらないときちんとした実態が把握できない」としたうえで、「DPC導入の影響によって、1日の看護師の業務が大きく変化した。離職率は業務時間が長いからではないのではないか」と指摘しました。

一方、日本看護協会副会長・坂本すが委員からは、多忙な現場では、「2交代制は16時間勤務になる場合があるが、12時間の2交代制という選択もあり現場には受け入れられている。16時間勤務という長時間勤務は諸外国でも例がない」と強調し、「2交代制と3交代制の勤務実態に関する調査をきちんと実施し、看護職員離職の解消策を慎重に検討してほしい」といった主旨の意見を述べました。

また、地域医療連携によって、外来診療を縮小している事例として、「かかりつけ医との共同診療を提供するための共同診療カードの導入」「画像診断医が不足している地域の、医療機関を支援するために医療画像伝送ネットワークの構築」「地域医療連携と目的とした勉強会、各種会議、病院訪問活動等を実施」している病院を例示。医療従事者の負担を軽減させるための地域医療連携の導入状況や、具体的な形態等について調査を行っていくことが提案されました。 これを受け、嘉山委員は「がんの治療連携で地方と都会で違うところは、都会では、1人の診療所のドクターが地域をまわって在宅診療もやっている病院がかなり多い」としたうえで、「こうした差も踏まえた調査を実施してほしい」と訴えました。

そのほか、「明細書発行原則義務化後の実施状況調査 結果概要」の公表などが行われました。明細書の発行にあたっての問題点として、現場からは「紙代・インク代等の費用負担が大きい」、「窓口の対応について領収書・院外処方せん・明細書・診察権をセットするのに手間がかかる」「治療内容、処方内容が前回と同じ場合は発行しなくても良いなどの規定がほしい」といった調査報告があがっていました。 こうした課題について、今後、すべての患者さんに明細書を発行していくかどうかも含めて、アンケート結果をもとに分析していく方向となりました。

最後に、厚労省担当官から東日本大震災における医療機関への対応状況について説明。 厚労省に向けて嘉山委員から厚労省事務官がよく使用するフレーズである、「あえて誤解を恐れずに言います」と述べたうえで、「被災地へ行った際に、今回の厚労省の対応の早さに被災者の皆様及び医療機関、関係団体が非常に感謝されていた」といった内容の発言をし、厚労省の取り組みを評価。嘉山委員の感謝の言葉に、各委員から次々と同調する声があがりました。

こうした様子に難しい顔をして聞いていた一般傍聴席の記者のなかからも笑い声が聞こえ、最後に会長からは、「いつもとは違うトーンになりましたのでどうまとめていいかわかりませんが、迅速な対応が被災地の皆様や委員の方に評価された」といった主旨の言葉で締めくくりました。

参考資料:「中央社会保険医療協議会 総会 (第189回) 議事次第」 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018toj.html


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広報部
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