GHCブログ

2011年05月16日

第7回CQI研究会開催-全国のがん診療拠点病院74病院が参加

5月14日、第7回Cancer Quality Initiative(CQI)研究会がベルサール九段(東京都千代田区)で開催されました。同研究会には、100名以上の医療関係者の方々が参加され、乳がん肺がん大腸がんの治療内容におけるベンチマーク分析の結果をもとに、活発な議論が繰り広がられました。 今回の同研究会では、愛知県がんセンター中央病院病院長・篠田雅幸氏が代表世話人を務め、栃木県立がんセンター 病院長・清水秀昭氏の進行のもと、栃木県立がんセンター 呼吸器外科医長・中原理恵氏、神奈川県立がんセンター 泌尿器科部長・三浦猛氏、九州がんセンター 副院長・藤也寸志氏、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンマネジャー・相馬理人による分析報告が行われました。 また、今年は、全国のがん診療連携拠点病院の約20パーセントにあたる74病院が参加し、乳がん肺がん大腸がんの治療内容を実名で公開。DPCデータもとにしたベンチマーク分析のほか、各病院でご回答いただいた、アンケート結果をもとに治療におけるより広範囲な分析が実施されました。


数多くの医療関係者の方にご出席いただき、会場は満席となりました


冒頭、千葉県がんセンター・浜野公明氏から活動報告などが述べられた後、乳がんのセッションが、清水氏の座長のもと、スタートしました。


千葉県がんセンター・浜野氏


まず、分析結果について相馬から報告を行いました。乳がんは、国立がんセンターで一番早く標準パスが設定された疾患ということもあり、病院間におけるパス設定の差は少なく、標準化がかなりすすんでいる疾患であることが今回の分析結果から明らかになりました。 そうしたなかで、術前下剤投与率と術日浣腸実施率においては、病院によって、すべての患者さんに実施している病院もあれば、まったく実施していない病院もあり、病院間で大きな差がある治療の1つでした。


GHCマネジャー相馬


続いて、肺がんについて、三浦氏座長のもと、中原氏から分析報告がありました。術後日数など各病院で設定しているパスと実際の日数との乖離を分析したところ、「病院間で大きな差がみられた」との報告がありました。こうした結果を受けて、中原氏から、「設定しているパスとの乖離が起こった理由を調査し、自病院の治療にあった適切なパスを設定したほうが良い」といった主旨のコメントがありました。 全体的に、侵襲性の低い胸腔鏡は、開胸手術と比較すると術後日数や、抗生剤日数など短い傾向になりました。いずれの分析でも乳がんと比較すると治療内容にバラつきがありました。


栃木県立がんセンター 呼吸器外科医長・中原氏


神奈川県立がんセンター 泌尿器科部長・三浦氏


最後に氏から大腸がんにおける分析報告がありました。 大腸切除術においては、腹腔鏡における手術の割合が増加していることが全体的な傾向でした。 分析結果のなかの在院日数の比較において、施設間でかなり格差があることを氏は強調。また、各病院で設定しているパスと実際の術後日数の平均値を比較した分析において、腹腔鏡の術後日数は、開腹手術の時と比較すると全体的に短い傾向にあるとしたうえで、「開腹手術の時にはみられなかった、パス設定値よりも実際の平均値が短いという施設がある。そういう施設は今後、パスの設定を検討し、短くしても良い」と述べていました。 一方、病院で実施したアンケート結果の分析報告のなかで、分子標的薬の使用率について氏は、「100パーセントの症例に使用している病院と、まったく使用していない病院がある。今後、このバラつきを標準化していくことが課題の1つになってくるであろう」といった内容の発言をされていました。


九州がんセンター 副院長・藤氏


各セッションの後には、分析報告についての質疑応答の時間が設けられました。会場からは、「肺がんは病院によって年齢が異なり、処置もだいぶ変わる。年齢分布も分析してほしい」といった分析への要望や、「大腸がんの手術後、抗生剤投与を1日でやっていたが、感染症が起こったため3日でやっている。必ずしも短いから良いというわけではないと思う」という意見があがりました。

質疑応答では分析結果に対するさまざまな質問がありました


最後に、閉会の言葉として、清水氏から同研究会の内容における総合的な評価が述べられた後、「今後は、さらに情報を集め、外来化学療法の分析方法や、これまでの分析データを見直すための分析方法、プロセス指標やストラクチャー指標の分析方法などを検討し、医療の質の向上につなげていきたい」といった主旨のコメントがあり、分析に協力していただいた施設に向けて「改めて御礼を申し上げます」という言葉で締めくくりました。


栃木県立がんセンター 病院長・清水氏


◎当日プログラム





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広報部
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