2011年09月01日
医療機関群 医師密度と診療密度の評価についてさまざまな意見が飛び交う
8月31日、全国都市会館(東京都千代田区)で第6回 DPC評価分科会が開催されました。
冒頭、今回から新たに加わった委員(下記)の紹介と退任した委員の発表が行われました。
【新任委員】
・池田俊也氏(国際医療福祉大学薬学部薬学科教授)、
・井原裕宣氏(社会保険診療報酬支払基金 医科専門役)
・樫村暢一氏(医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院副院長)
・香月 進氏(福岡県保健医療介護部医監)
・工藤翔二氏(公益財団法人結核予防会 複十字病院長)
・河野陽一氏(千葉大学大学院医学研究院 小児病態学教授)
・竹井和宏氏(保健医療福祉情報システム工業会 医事コンピュータ部会DPC委員長)
・藤森研司氏(北海道大学病院地域医療指導医支援センター長)
・渡辺明良氏(財団法人聖路加国際病院事業管理部財務経理課マネージャー)
今回出席された、新任委員から一言ずつ同分科会への意気込みなどが述べられた後、
小山信彌(東邦大学医療センター大森病院心臓血管外科部長)分科会会長から「
事務方など多様な立場の方々に同分科会に加わっていただき、DPC制度をより良い制度にしていきたい」といった内容のコメントがありました。
また、今回、新たな分科会会長代理として、
小山分科会会長から、
松田晋哉氏(産業医科大学医学部公衆衛生学教授)が指名され、各委員の合意のもと決定いたしました。
全国都市会館で行われた、DPC評価分科会の風景
まず、本日のアジェンダの1つである、「
DPC制度(DPC/PDPS)への参加について」については、平成24年改定に対応した、準備病院の募集期間が「
平成23年10月1日から10月31日まで」に決定。これまで年2回4月と7月に実施されてきた、DPC/PDPS対象病院への移行時期を
4月1日のみの年1回に変更。DPC/PDPS対象病院への移行確定時期(基準を満たす必要がある時期)については、参加申請時点である
10月31日までに基準を満たした医療機関が移行可能になりました。
次に「
データ提出係数の運用について」議論されました。これまでデータ提出状況を確認するための手続きが明確になっていなかったことによって、いくつかの医療機関で、郵送手続きの遅れなどが生じていました。こうした事態を回避するために「
データ提出の要件」(下記)が決定しました。
【データ提出方法の要件】
① 「提出日」及び「配送状況」がインターネット上で送付側(医療機関)・受領側(DPC調査事務局)の双方で確認できる方法であること。
② 対面による受け渡し時、双方のサインが必要となる方法であること。さて、今回最も時間をさかれた議題が、「
調整係数見直し後の医療機関別係数に係る医療機関群の設定について」「
高額薬剤等に係る具体的な対応について」の2つです。
「
高額薬剤等に係る具体的な対応について」はこれまでの議論内容に対して、反論や疑問を唱える委員はおらず、10分程度で委員の合意を得られました。
しかし、「
基礎係数における医療機関群の設定方針(案)」のなかのグループわけの基準として考えられている、「
診療密度(包括範囲の1日当たり出来高点数)」と「
医師(資格取得後5年目まで)密度(病床当たりの医師配置密度)」への評価については、各委員からさまざまな意見があがりました。
「調整係数見直し後の最終的な医療機関別係数の在り方(イメージ案)」図の大学病院本院以外の高診療密度病院群の要件はA及Bの両方を満たす病院。
A 医師密度・診療密度の要件
? 大学病院本院80施設を参考に設定(具体的には今後検討)
B 一定の機能や実績の要件:以下のいずれかを満たす医療機関
? 一定以上の医師研修の実施(具体的な要件は今後検討)
? 一定以上の高度な医療技術の実施(具体的な要件は今後検討)
? 一定以上の重症患者に対する診療の実施(具体的な要件は今後検討)
これは、厚労省でさまざまな病院種別、地域特性に着目し、分析・検討した結果、「
医療機関が担っている医師に対する研修、高度な医療技術の実施、重症患者に対する診療、といった役割・機能と医師密度には一定の相関があり、これらを包含する背景因子が診療密度に影響している」ため、「
医師密度・診療密度」が一定以上の医療機関を1つの医療機関群として設定するというもの。
それについて、
美原 盤委員(財団法人脳血管研究所附属美原記念病院院長)から、「
医師密度が高いと重症度が高い患者さんを多く診療しているといえるのか」といった内容の意見とともに、「
地方の病院では数人の医師で重症度の高い患者さんを多く診療している医療機関もある」と主張。それを受けて、
小山分科会会長は、「
医師数が少ないところでも重症度の高い多くの患者さんを診ている医療機関もある。それについては機能評価係数Ⅱで評価していく」といった主旨の内容を述べました。
そのほか、医師密度や診療密度が高いことが「評価」されると「
医師の争奪戦が起こるのでは」などといった意見があがりました。
こうした意見に対して厚労省事務官から、配布資料をもとに「
単に医師密度・診療密度だけを要件や基準とするのではなく、これらの医師配置が必要とされるような、合理的かつ明確な役割や機能の実績を要件として課し、これらを共に満たした医療機関のみを別の医療機関群とすることで、実態を伴わない単なる医師獲得を助長しないようにする」との説明がありました。
さらに付け加えて、「
医師密度や診療密度が高いと診療報酬が加算されたり何か有利な条件が与えられるわけではなく、グルーピングするうえでの評価である」といった主旨の回答がありました。
最後に、小山分科会会長から「
医療機関群の議論についてはまだ検討中である、と中医協には報告したい」といった内容の発言があり、各委員、納得した様子で、議論が終了しました。
参考資料:平成23年度 第6回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会 議事次第
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ng4g.html—–
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