2014年04月03日
7対1と10対1、患者像に大差なし、GHC分析―看保連・岡谷氏「ケアの質評価を」
3月28日に三保連が開いた合同シンポジウムでは、看護系学会等社会保険連合(看保連)が、7対1と10対1入院基本料の算定病棟で入院患者の重症度にどのような差があるかなど、GHCが分析した結果を発表しました。それによると、入院患者の医療処置の状況(A得点)や身体機能(B得点)、口腔ケアの実施状況やADLの改善度合い(改善スコア)などは、7対1と10対1の病院の間で大きな差は見られませんでした。
分析結果を発表した看保連の岡谷恵子副代表理事は、入院医療の現在の診療報酬体系について、「単に看護師の頭数だけで評価が行われている。看護の必要量に応じた配置をどう評価したらいいかということで(看護)必要度の考え方が出てきたと思うが、今は足切りに使われていて、本来の目的と少しずれている」などと述べ、本来は看護ケアの質を評価すべきだとの認識を示しました。
GHCによる分析は、7対1入院基本料を算定する22病院の計112万1341日分、10対1入院基本料を算定する6病院の22万492日分のデータが対象で、7対1と10対1の病院で、▽入院患者の看護必要度や重症度▽口腔ケアの実施密度-などがどれだけ違うかや、口腔ケアの実施密度が入院患者のADL(日常生活動作)にどう影響しているかを、疾患ごとなどに調べました。
このうち入院患者の看護必要度は現在、特定集中治療室や一般病棟用の評価票を使い、どのような医療処置を実施しているか(A得点)、どれだけの身体機能があるか(B得点)といった2つの視点で測定しています。今回のGHCの分析では、A得点の平均値は7対1の病院では1.0、10対1の病院では0.9、B得点は7対1では3.4、10対1では3.3と、どちらにも大きな差はありませんでした。
また、口腔ケアの実施日数を「延べ評価日数」で除算した実施密度は、特に神経系や呼吸器系の疾患のほか、外傷の患者で高いことが分かりました。ただ、7対1と10対1との比較では、看護配置が手薄な10対1の方がむしろ高いという結果でした。
一方、ADLの食事項目改善スコア(※)と、口腔ケアの実施密度の関係を疾患ごとに分析したところ、脳梗塞では、病院によって大きな差がありましたが、7対1と10対1の改善スコアに大きな差は見られませんでした。濃厚な口腔ケアを実施して実際に改善につながっている病院がある一方で、口腔ケアを行っていても改善に結び付いていない病院もあり(図表)、岡谷氏は、高密度な口腔ケアを実施して実際に効果を上げている病院を、診療報酬で手厚く評価すべきだとの認識を示しました。
今回の分析結果からはこのほかにも、(1)口腔ケアの必要な患者が10対1の方に集まっている可能性がある(2)口腔ケアのアセスメントが10対1で十分に行われず、漫然とケアが行われている可能性がある(3)7対1の方が口腔ケア介入を早い段階で濃厚に行い、ケアが必要なくなるのが早い可能性がある(4)10対1で口腔ケアが必要な患者は、7対1に比べて食事摂取機能がもともと低く、改善しづらい可能性がある-などが推測されます。
実態がこの通りかどうかを把握するには、DPCデータと看護必要度を紐付けた分析をさらに深める必要があり、これは人員配置だけでなく、実施しているケアの内容の評価にもつながります。
2014年度の診療報酬改定では、従来の重症度・看護必要度の名称を「重症度・医療、看護必要度」に変更し、評価票のうちA項目の中身を見直しました。厚労省は、急性期病院の入院患者の実態を踏まえた対応としていますが、実際に提供しているケアの質や量までは分かりません。今後はこれらと診療報酬をリンクできる仕組みが求められそうです。
現在、看護必要度データを提出する義務がなく、看護必要度のデータ分析は厚労科研費で行われている研究報告が中医協で使用されているだけです。ケアの質や量、人員配置、ベッドの適正利用を客観的に分析するなど、GHCでも看護の可視化につながる支援を続けていく方針です。
※全介助:0、一部介助:1、自立:2 改善スコア例)入院時に全介助が退院時に自立になれば改善スコアは2点
広報部 |
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