病院経営コラム

2021年08月10日

検索で勝てる・勝てないホームページ、病院経営者が知るべき5つのポイント|コンサル講座「DPC病院の経営」(特別編)

コロナ禍で今まで以上に集患が重要になってきている今、貴院のホームページは「病院の顔」として、その役割をしっかりと担っていますか。

ホームページは集患のカギを握る重要なツールの一つですが、この重要なツールを生かしきれておらず、病院関係者からご相談いただくことが増えています。特に、「集患につながる検索されるホームページにするにはどうすればいいのか」というようなマーケティング視点からのご相談をいただくことが多いです。

そこで今回は病院の経営者が知るべき検索で勝てるホームページと勝てないホームページの5つのポイントについて、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が実際に行ってきた検索エンジン対策の実体験も含めて解説させていただきます。

訪問者倍増、数千万円の受注案件も

「何を調べても、GHCのサイトばかりが出てきますね」

ここ最近、病院関係者からこう褒めていただくことが多くなってきました。病院経営に関係する情報をインターネット上で検索すると、「検索結果の上位に当社の情報が多く表示される」ということです。

実際、直近1年間で当社のサイトに訪れる人たちは倍増。インターネット経由の問い合わせから受注につながった案件は1つや2つではなく、中には数千万円の受注案件もあります。報道関係者からの問い合わせも急増し、当社のメディア露出も拡大(メディア掲載詳細はこちら)。メディア露出が採用につながるという好循環を生み出しつつあります。

GHCのホームページ訪問者の推移

新型コロナウイルス感染症の拡大で営業活動が制限される中、当社にとってインターネット活用は、重要な経営戦略の一つとして定着しました。

成功する検索エンジン最適化のポイント

具体的には何をしたのか――。

当社が行ったのは、徹底したデータ分析に基づく戦略立案と「検索エンジン最適化」です。検索エンジン最適化は、「SEO(Search Engine Optimization)」と呼ばれるインターネット上で行われるマーケティング手法の一つで、検索エンジンの検索結果で自分たちのホームページの情報が上位表示されやすいようにするための各種取り組みの総称です。インターネット全盛の今、世界中の多くの組織や個人がライバルたちに負けじとSEOに取り組んでいます。

今回、当社は外部からマーケティングのプロを招聘してSEOに取り組み、半年で最初の大きな成果を確認しました(事例紹介の詳細はこちら)。最新のマーケティング動向を熟知しているプロの存在は大きかったですが、決して人任せにしたからうまくいったというものではありません。「マーケティングのプロ」という新たな武器を手にし、当社の強みであるデータ分析に基づいて「当社が潜在顧客に何を伝えるべきか」を考え抜いたことが最大の成功要因だと考えています。

ここからは病院関係者の方々にも参考になるよう、当社がSEOの取り組みを通じて分かった「検索で勝てる・勝てないホームページ」のポイントを解説します。

(1)「経営者の意識の差」が成否を左右する

病院経営にかかわる方々の中で、「ホームページはインターネットに詳しい人やデザインセンスのある人に任せておけばいい」と思っている方がいたら、まずはその考えを改める必要があります。経営者がホームページを単なる広告物の一つであると考えているのと、病院のイメージを決定付ける最重要の経営ツールであると考えているのとでは、集患やブランディングにおいて決定的な差が生じます。

なぜ、ホームページは最重要の経営ツールなのでしょうか。今やインターネットが情報収集のメインストリームになっていることに疑問を抱く人はほとんどいないでしょう。インターネットで情報収集するのは、患者だけではなく、周辺の医療機関、製薬会社や卸などの関係企業、行政、医師や看護師の卵である学生たちなど、病院がかかわるすべてのステークホルダーたちです。貴院のことをインターネットで調べて最終的にたどり着くホームページこそが、最も多くの人たちに見られる「病院の顔」ということができます。

病院の顔とも言えるホームページが、さまざまな立場(ターゲット)の人たちに対して、それぞれ明確な目的を持ち、その目的を達成するために適切な情報を発信しているかどうかは、非常に重要なことです。どんなにデザインがよく、最新の技術を取り入れていても、「誰に何を伝えるべきか」が定まっていなければ、経営ツールとしての役割を果たせません。

このように考えると、ホームページは経営を左右するマーケティング戦略の母艦とも言える存在です。艦長の指示なしに母艦が機能しないように、病院の経営幹部が「誰に何を伝えるべきか」を明確にし、それをしっかりとホームページの制作現場で実際に手を動かすプロデューサーやディレクター(制作会社の担当者や病院のプロジェクト担当者が担うケースが多いでしょう)、エンジニアやデザイナー、記事などのコンテンツを作成するライターなどの制作関係者たちに伝えられていなければ、見た目だけはいいけれど全く見られないホームページになってしまうのです。

つまり、ホームページに対する「経営者の意識の差が成否を左右する」と言っていいでしょう。

(2)デザインより重要なデータ分析力

病院の経営者が、ホームページは最重要な経営ツールであると理解できた。それでも、そのかかわり方に大きな問題があるケースが散見されます。やはりデザインや主観でホームページ制作の方向性を決めてしまうという問題です。

前述の通り、ホームページ制作は病院にかかわるすべてのステークホルダーに対して、「何を伝えるべきか」を明確にすることが最も重要です。にもかかわらず、「安心安全で優しい医療をイメージできるデザインにしたい」など、経営者が積極的に関与はするものの、どうしても広報物の一つという意識が抜けきれないケースが多いのです。

経営者がかかわるべきは、データに基づき、自病院の現状を明らかにするとともに、現状からどのような方向性に向かうべきかのビジョンを示すことです。ビジョンがなければ、ステークホルダーごとに「何を伝えるべきか」も定まりません。また、このビジョンがデータに基づく現状分析を踏まえていなければ、ただ理想だけのビジョンになり、ホームページで発信する情報が現状と乖離し、かえって病院の評価を下げることにもなりかねません。

デザインよりデータ分析の方が重要

(3)強みが明確でなければ見られない

経営者がかかわるべきスタートラインは、データ分析です。一般的なホームページ制作では、現状のホームページのアクセス解析や検索エンジンで検索される関連キーワードの検索状況などを深く掘り下げていきますが、病院のホームページ制作で重要なことは、そのほかのデータにもしっかりと目を向けないと、「この病院は何が強みなのか」が不明確なホームページになってしまうということです。

患者などのステークホルダーたちが、貴院のホームページに何を求めて訪問するか分かりますでしょうか。ステークホルダーごとにさまざまな目的を持って訪問しているかと思われますが、それら目的の根底で共通しているのは何かというと、「常に何かと比較している」ということです。

訪問者の多くが「常に何と比較している」を知るべき

仮に貴院の強みがいくつかあり、その中で消化器内科の強みを大きく打ち出していこうとなったとしましょう。しかし、データを見ると隣の二次医療圏の競合病院の方が患者数を多く集めており、その競合病院のホームページを見ると、貴院が打ち出そうとしていた強みがほぼ網羅されたPR内容になっており、貴院にはない強みまで分かりやすく情報発信していたらどうでしょう。おそらく、このままでは勝ち目はありません。改めてこの競合病院よりも魅力的に映るPRポイントをかき集めて新たな切り口で強みを打ち出す戦略を立て直すか、別の診療科の強みを打ち出していく手法に切り替えた方が効率的ですし、より戦略的です。戦略とは競合がいるから発生する概念であるということを忘れないでください。

そして自病院の強みを考える上でもう一つ重要なことは、「自病院の強み=他院と異なる点」ということです。例えば、診療内容(在院日数、医療行為)、リハビリ、入退院支援、認知症ケアなど、自院では当たり前のようにやっていることが、「実は全国の病院と比較するとすごいことだった」などということは、我々コンサルタントから言わせると「あるある話」の一つなのです。こうしたデータ分析を通じて見えてくる病院の強みに目を向けることも重要な視点の一つと言えます。むしろ、自病院の強みを考える上では、最重要の視点かもしれません。

こうした戦略的なPRを行うには、一般的なホームページ制作会社では限界があります。戦略の立案は病院の経営者や経営企画部門が担うべきで、その際、しっかりと周辺の医療提供体制のデータを可視化できていないと、現状を見誤り、競合に負けてしまいます。つまり、貴院のホームページだけ見るのなら魅力的なページなのですが、より魅力的な競合のホームページと比較されると、負けてしまうのです。なぜなら、そこに戦略性がないからです。

こうならないためには、しっかりとしたデータに基づき、3C(Customer、Company、Competitor)分析やSWOT(強み:Strength、弱み:Weakness、機会:Opportunity、脅威:Threat)分析を丁寧に行い、貴院の本当の強みと弱みを明確にせざるをえません。繰り返しますが、ホームページ制作で最も重要なことはデザインではなく、勝ち負けを左右する戦略が根底にあるかどうかなのです。

ちなみに「病院ダッシュボードχ(カイ)」のようなツールを用いれば、こうした3C分析やSWOT分析を手間なく行い(「マーケット分析」と呼ぶ機能で簡単に分析できます)、分析で汗をかくことなく、その後の戦略立案やアクションに時間を割くことができます。同じツールの「地域連携分析」の機能を用いれば、周辺の医療機関からの「紹介データ」を分析して、より詳細な患者の流れを確認することもできます。

「病院ダッシュボードχ」なら簡単に「3C分析」や「SWOT分析」もできる

(4)自分ごとに落とし込めないと信頼されない

戦略的なPRのポイントが定まり、いざホームページを作ったものの、ホームページの閲覧者が全く増えないというのもよくあるケースです。このようなケースの多くは、コンテンツ(情報の中身)あるいはホームページの構造に問題があります。後者は少し専門的な話になるので省き(関連記事はこちら)、今回はコンテンツについてご説明します。

ホームページへより多くの人に訪問してもらうためには、SEOがかかせません。その際、どのような情報を発信するかも重要なのですが、それと同じくらいに大切なことは、どの検索キーワードで検索結果の上位を狙うかという「キーワード選定」です。

キーワード選定は、大きく4つの要素で構成される「キーワード優先度」を踏まえて決めていきます。まずはどれくらいの人が検索しているのかを示す「月間検索数」。より多くの人が検索するキーワード(「ビッグワード」と呼ばれています)で検索結果の上位表示ができれば理想ですが、難易度が高く実現性が低いです。ただ、上位表示が実現してもあまり多くの人が検索しないキーワードでは意味がなく、実現性と集客力のちょうどいい塩梅のキーワードを選定できるといいでしょう。この塩梅が次に重要な考え方である「想定獲得順位」になります。

SEOのキーワード選定で重要な考え方となる「キーワード優先度」(マルシェ提供)

続いて重要なのが「ターゲット含有率」。いくらホームページに訪問してくれても、その訪問者が病院経営にとってあまりメリットを感じられないような人であれば仕方がありません。最後の「病院への問い合わせ」などホームページ訪問者の何らかのアクションを示す「コンバージョン(CV)」との距離感である「CVとの近さ」も重要です。

例えば、貴院へ患者の紹介を考えている同じ周辺医療機関の関係者であっても、貴院のホームページに掲載してある医師の学術コラムを見るのと、貴院との地域連携の手順のページを見ているのとでは、望むべき最終的なアクション、つまりコンバージョンへの距離は全く違います。この場合、優先的にSEOすべきは地域連携の手順のページということになります。

また、キーワード選定でその他に考慮すべきこととして、競合の強さなどがあります。例えば、厚生労働省などの国の機関が発信する情報が検索結果の上位3位を独占しているようなキーワードでSEO対策することは極めて困難です。そのほか季節要因やキーワードに紐づく記事の作りやすさも考慮してキーワードを選定してください。

どんな強みであっても、伝えたいことの列記だけでは、検索結果の上位に表示されず、ターゲットがその情報にたどり着くことができません。しっかりとターゲットの「ユーザー心理」に基づいて「どんなキーワードで検索するのか」を考え、上記のキーワード優先度を踏まえたキーワード選定をしましょう。

(5)作ったら終わりではない

ホームページ制作での最後のポイントは、作ったら終わりではないということです。むしろホームページの完成や見直しは、各種マーケティングのスタートであると考えてください。

前述の通り、ホームページはマーケティング戦略の母艦です。ステークホルダーごとにさまざまな情報を発信しているのは、その情報発信の先に目的があるからでしょう。例えば、急性期病院の集患であれば、患者向けの情報発信も重要ですが、直接的な集患に結びつくのは周辺の医療機関への情報発信です。であれば、ホームページを見直したことで、周辺医療機関からの紹介患者数がどう推移しているのかをモニタリングすべきです。集患においてはこれが最重要なKPI(重要業績評価指標)の一つになるはずだからです。この数字をベースに地域連携部門や広報部門に共有し、ホームページの表現や切り口に見直しが必要ではないか、医療機関へ配布しているパンフレットに見直しが必要ないか、それぞれのPDCAを回しながら、数字をベースに常に改善を意識して行うのが、正しいホームページ運営の姿です。

ここでも「病院ダッシュボードχ」のようなツールを活用することで、ホームページを作ったら終わりではなく、PDCAを回しながら常に何かが改善しているホームページ運用を強力にサポートすることができます。「地域連携分析」のような機能を用いれば、データのモニタリングではなくアクションに時間を割けるようになります。

「病院ダッシュボードχ」なら紹介患者の状況も簡単に一覧できる

パートナー選びのポイント

いかがでしたか。貴院のホームページはマーケティング戦略の母艦として機能しているでしょうか。ホームページの見直しを進めているのであれば、このことを意識したプロジェクトとして進めていますか。改めてホームページの見直しをする際のパートナー選びのポイントをお伝えします。

一つは、病院経営の深い理解と経営者と対話できるコミュニケーション能力があるかどうかです。ホームページ制作で最も重要なことは、「誰に何を伝えるべきか」ということと、データに基づく現状の可視化を踏まえた戦略的なPRだからです。ただの広告代理店やホームページ制作会社などでは、最も重要なコアの部分で、より深い対話をすることは難しいでしょう。

2つ目はこれも繰り返し述べてきましたが、デザインではなく改善提案ができるデータ分析力が重要であることです。現状を知り、ビジョンを定めるには、データは欠かせません。徹底したデータドリブンな姿勢でPR戦略を定め、それに基づくホームページ制作を実践していってください。この部分が欠けていては、どんなにデザインが優れているホームページであったとしても、病院経営に大きな影響をもたらすことはありません。

最後にインターネットを活用したマーケティングの最新知識とノウハウがあることが挙げられます。ホームページがマーケティング戦略の母艦である以上、最重要はマーケティングです。デザイナーやエンジニアは優秀だが、ホームページのディレクターに最新のマーケティング知識が欠けているようであれば、競合に勝てるホームページを作ることはできません。

連載◆コンサル講座「DPC病院の経営」
(1) 1から学ぶ「経営企画」入門
(2) 経営企画に欠かせない「データ分析」の基礎
(3) 成果を出す経営企画のプレゼンテーション術
(特別編) 検索で勝てる・勝てないホームページ、病院経営者が知るべき5つのポイント

太田 衛(おおた・まもる)

株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門アソシエイトマネジャー。診療放射線技師。大阪大学大学院医学系研究科機能診断科学修士課程を修了し、大阪大学医学部発バイオベンチャー企業、クリニック事務長兼放射線・臨床検査部長を経て、GHCに入社。地域連携、病床戦略、DPC分析を得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、GHCが主催するセミナー、「病院ダッシュボードχ」の設計、マーケティング、カスタマーサポートを担当。新聞や雑誌の取材・執筆多数。


広報部
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。