事例紹介

2018年08月10日

【病院事例】トップが率先して使えば現場に浸透し、 院内の経営意識も高まる|大同病院

病院名 社会医療法人宏潤会 大同病院 設立母体 民間病院
エリア 東海地方 病床数 404
病院名 社会医療法人宏潤会 大同病院
設立母体 民間病院
エリア 東海地方
病床数 404
コンサルティング期間 3年間
病院ダッシュボードχ
  • ・DPC分析
  • ・財務分析
  • ・マーケット分析
  • ・チーム医療plus
  • ・材料ベンチ
  • ・看護必要度分析

急成長もさらなる健全経営を模索

 社会医療法人宏潤会は、地域における高度急性期医療の要である「大同病院」、専門外来診療とかかりつけ医の架け橋となる「だいどうクリニック」、地域医療・介護と連携する「大同老人保健施設」「大同訪問看護ステーション」「大同居宅支援事業所」、地域医療を担う「中央クリニック」「大同みどりクリニック」を運営しています。

 総勢1000人を超える職員が、地域社会に貢献することを目標とし、大同病院が地域の救急急性期医療の中核となり、当法人の各施設が地域医療、介護、健康管理にさらなる貢献ができるよう、健全な運営を行うことが我々の使命と考えています。こうした中で、当法人は大同病院を軸に、ここ数年で急成長を遂げてきました。

 ただ、急成長の一方で、定量的な経営指標や数字の裏付けが足りていませんでした。つまり、「急成長」という結果はあるものの、そこへたどり着いた要因やプロセス、それらの深掘りに課題があったのです。

 こうした中で、当法人が医療・介護の質を担保しつつ、さらなる健全な経営を行っていくことを目的に、吉川公章前理事長が経営コンサルティングの活用を検討。特に、DPC特定病院群(当時はDPCII群病院)への昇格を目標とし、実績もあるグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンにコンサルティングを依頼することが決まりました。このコンサルティング活用の流れの中で、「病院ダッシュボードχ(カイ ※当時は「病院ダッシュボード」)」を導入することになりました。

最初のコアユーザーは理事長・院長

 病院ダッシュボードを導入した当時、院内にDPCデータなどを分析する部門はありませんでした。「システム情報課」は存在していましたが、電子カルテなどを情報システムの観点から運用・管理するためのセクション。今あるデータを経営に活用することの重要性に気づき、院内で共有する仕組みづくりをするため、分析ができる人材を育てること、分析を行うセクションを設置することが、経営分析における当時の課題でした。

 導入当初、病院ダッシュボードは我々(当時副院長、現理事長の宇野医師、現院長の野々垣医師)が中心となって使いはじめました。病院ダッシュボードを使うと、診療科ごとの課題や改善の道筋がわかるため、「やはりこういうシステムがあると違う」と徐々に仕組みとして院内へ浸透していきました。

 当院では、各診療科の課題を半期に一度、まとめています。理事長、院長、事務長による各診療科へのヒアリングを通じて、「ここを伸ばしてほしい」「ここは改善が必要だ」などの話をベースに、まとめています。当時副院長の我々が病院ダッシュボードを使いこなせたので、各課の課題や改善依頼を明確に指示することができました。使いこなせば使いこなすほど、さまざまなことが分かってくるのが、病院ダッシュボードの良いところです。課題が大きい場合は、期間限定のプロジェクトへ発展するケースもありました。

 こうして当院では、事務部門発ではなく、理事長や院長が中心となり、若手プロジェクトチーム(看護部、臨床検査部、薬剤部、ME室、事務部門から選出した次世代を担う人材による分析トレーニングチーム)と一緒になって導入当初は改善活動を行っていきました。いきなり事務部門に使いこなすよう指示するのではなく、率先して我々が使っていき、データ分析は重要だという流れを院内に作ったため、その後、事務部門が活動をしやすくなったのではないでしょうか。

使う機会、使える人が増えれば現場は動く

 2018年4月には、データ分析などを行う新たなセクション「医療情報部」を設置。今では事務部門が中心となり、病院ダッシュボードを活用しています。医事課も必ず病院ダッシュボードで現状を把握し、必要であれば各診療科へ上申するようにしています。活用範囲も各診療科へのヒアリング時のみではなく、使える機能をほぼ使っています。毎月のトレンドを反映したレポートも送ってもらっています。

 病院ダッシュボードを自分で触われるようになり、経営データにかかわる機会が増えれば増えるほど、どんな部門の関係者でも経営に意識が高くなる人材が増えていくのではないか、と考えています。実際、最初は理事長と院長の二人で使い倒してきた病院ダッシュボードですが、使える人が増えています。各部長には閲覧権限を与えており、ヒアリングの前には自分の部署のデータを必ず把握し、課題に対する対策を考えてからヒアリングに参加するよう伝えてあります。


社会医療法人宏潤会 大同病院
住所:〒457-8511 名古屋市南区白水町9番地
http://www.daidohp.or.jp/


湯原 淳平 (ゆはら・じゅんぺい)

コンサルティング部門シニアマネジャー。看護師、保健師。神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、GHC入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。日本経済新聞や週刊ダイヤモンドなどメディアの取材協力も多数。総務省 経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー。