2016年11月09日
病院名 | 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 | 設立母体 | 民間病院 |
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エリア | 関東地方 | 病床数 | 518 |
病院名 | 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 |
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設立母体 | 民間病院 |
エリア | 関東地方 |
病床数 | 518 |
コンサルティング期間 | 2年間 |
病院ダッシュボードχ |
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GHCは28日、次世代型経営支援ツール「病院ダッシュボード」のユーザー会を開催して、活用事例の紹介や活用方法に関する勉強会を実施しました。事例紹介は、「聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院」が担当。同院で病院運営企画室主幹の荒川隆氏が講演し、病院ダッシュボードを導入した効果として「モニターを通じて客観的に現状を把握できたことで、病院経営における次のステップに進むことができた」などとしました。勉強会では「生産性を考える」をテーマに具体的な活用方法などを学びました。
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院は、学校法人聖マリアンナ医科大学の附属病院であるとともに、横浜市西部地区の中核病院の一つ。病床数は一般病床518床で、24診療科、2015年の主要経営データとしては、延べ入院患者数12万6433人、紹介率81.9%、手術件数3766件、救急車搬送患者数2419人などとなっています。
同院の病院経営を担う部署は病院運営企画室で15年6月に設置。メンバーは荒川氏のほか、室長を兼務する副院長のみで、事実上、実働部隊はさまざまな業務を兼務する荒川氏が一人で担っています。少ない人員の中で、16年6月に「病院ダッシュボード」を導入し、本格的なデータ分析に基づく経営改善がスタートしました。
まず着手したのが、病院ダッシュボードの「入門講座」の受講(関連記事『自病院の「真の強みと課題」は何か?ベンチマークで瞬時に把握し、改善につなげる』)。ここで学んだ、(1)課題の発見の仕方、(2)資料作成の手順、(3)効果的なプレゼン方法――などに基づき、院内で改善活動を開始しました。
改善活動のポイントになったのは、少ない人員でどのように効率的な改善活動を行っていくか。そこで最優先したのは、(1)室長の副院長に、院長や副院長が一堂に会する経営会議に荒川氏が参加できるように手配してもらう(2)コミュニケーションが取れている診療科から始める――の大きく2つです。経営会議でデータ分析の結果を報告することで、各課に報告する内容の重みが増して、無視できなくなります。コミュニケーションが取れている診療科であれば、改善提案がスムーズに進む可能性も高いし、改善事例を最初に作ってしまえば、今後の改善活動を後押しする大きな武器にすることもできます。
人員が少なくても、上記のような方法であれば、「診療科ヒアリングなどには時間がかかるが、病院ダッシュボードがあればデータを示す資料作成は2時間程度あれば済む」(荒川氏)としており、順調な滑り出しとなっています。
最初に着手した整形外科では、件数が多い「股関節大腿近位部骨折」のデータ分析をして改善提案した後、すぐに反応があって「人工膝関節置換術」についても分析のオーダーが入りました。分析結果を経営会議などでも報告すると、さらなる検討や改善を促す意見が経営幹部からあり、荒川氏は「ツールを使うことで話が進み、次のステップを検討できる。モニターを通じて客観的に現状を把握できるようになった結果」と評価しています。
また、荒川氏には講演後にもGHCがインタビュー。改善活動は着々と進行しており、先日のパス委員会では「回覧資料」として分析資料を提出したところ、多くの診療科を見ることが多い麻酔科の医師などが興味を示し、院内の理解が広まっている模様です。
荒川氏は、直前まで医療連携の仕事を担当していましたが、この今と全く異なる仕事の経験が生かされているようです。「医療連携は外部と連携するため院内の人材をしっかりと把握しておく必要があるが、この経験による『院内情報』が、今回の経営改善の推進に大きく役立っている」(荒川氏)。
目下の目標は、ヒアリングする診療科の数を増やしていくことと、荒川氏の活動に理解を示してくれる院内の「仲間」を一人でも多く獲得していくことです。その後の展開については、「大学病院という性質上、医局人事の影響を受けて診療科同士の壁が高い。今回の活動は、データ分析を通じて診療科同士のつながりを生むきっかけにもなり得る。横のつながりの促進にも活動を発展させて、経営はもちろん、院内のシナジー効果による医療の質向上の一助にもなりたい」(同)としています。
このほか、病院ダッシュボードの初級編と中級編を実施。初級編はコンサルタントの薄根詩葉利が担当し、病院ダッシュボードの基本操作と活用イメージを解説。経営の課題をどのように発見し、発見した課題解決に向けてどう対策していくべきなのか、病院ダッシュボードの実際の画面を通じて学びました。
中級編はアソシエイトマネジャーの八木保が担当し、「生産性を考える」をテーマに実際の病院ダッシュボード活用方法を紹介。参加者は、その場で自病院のデータを用いて、生産性を考える上で必要となる関連資料を作成しました。昨今、診療報酬のマイナス改定などにより、収入が伸びているのに利益が横ばい、下がっているという事例が散見されます。病院は今まで以上にコストコントロールすることが求められており、生産性の向上が重要なキーワードとなっております。
そのため、「トータルの収益から各職種の生産性を検討する」「各加算や指導料から生産性を検討する」―の2つについて分析。医師、薬剤師、管理栄養士、療法士、看護師、事務職員の職種別の生産性に関連するデータなどを作成しました。これらのデータを用いることで、(1)周囲の病院と比較して自病院の○○の一人当たりの収益はどうか(2)○○の収益の目安はどれくらいにすべきか(3)そもそも生産性目標を設定しているか(4)最大の収益を確保するため○○の人員は足りているか。足りないなら何人必要か――などの視点で現状を把握することが、「生産性を考える」上での最初のステップになります。
八木は生産性の見える化をした上で、必要な情報を短時間で報告できる訓練を始めたり、加算算定率を向上させるための仕組みを構築したりし始めた病院の事例を紹介。その後、演習を行ったテーブルごとにコメントを求め、そのコメントを持って今回のイベントを締めくくりました。コメントの一部は以下の通りです。
「自分たちでは頑張っているつもりが、そうではない部分もあることが分かった」
「一人あたりの収益や生産性が具体的な数字で分かると、院内で具体的な話ができるようになる」
「数字をどう伝えるのかは難しい。数字を受け取る側の仕事の様子や、業務実態も把握する必要がある」
「DPCでデータはたくさん取れるが、それをどう活用するのか、どう伝えていくかの切り口を考えることが大切だ」
広報部 | |
事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。 |
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