事例紹介

2025年01月28日

下位から上位グループへ飛躍的な成長、経営改善支えた6つのWGとは|東京医科大学茨城医療センター

病院名 東京医科大学茨城医療センター 設立母体 私立大学法人
エリア 関東地方 病床数 501
病院名 東京医科大学茨城医療センター
設立母体 私立大学法人
エリア 関東地方
病床数 501
コンサルティング期間

茨城県南部の医療を支える東京医科大学茨城医療センター(茨城県稲敷郡、501床)。大学附属病院である同院は、2022年の「経営改善委員会」立ち上げ以降、大幅な経営改善を実現しています。係数対策で重要な定義副傷病割合の適切なコーディングにおいては、1000病院超のベンチマークで下位25%タイルから上位25%タイルのグループへと飛躍的な成長を遂げました。経営分析システム「病院ダッシュボードχ(カイ)」を用いて、同院の「経営改善委員会」の下、6つのワーキング・グループ(WG)で経営改善を推進してきた事務部の大西剛事務部長のほか、医事課の小杉利勝課長、総合相談・支援センター医療連携担当の眞壁大樹課長補佐、医事課の中野剛主任、下條亮平氏、醍醐祥輝氏にお話を聞きしました(聞き手は当社コンサルティング部門アソシエイトマネジャーの水野孝一、カスタマーサポート部門マネジャーの岡本友紀)。

経営改善のコアメンバー
中央右下から時計回りで眞壁氏、小杉氏、GHC岡本、醍醐氏、下條氏、中野氏、GHC水野

経営改善の推進ツールとして院内全体に定着

――「病院ダッシュボードχ」を導入した経緯について教えて下さい。

大西氏:経営改善に関する院内のさまざまな資料を作成するのに当時、大変苦労していました。資料作成に必要なデータは院内各所に散在しており、そもそものデータ収集の段階から相当の手間を要していました。

そうした中、ワンクリックで欲しいデータをすぐに抽出できて、資料にそのまま活用できるという「病院ダッシュボードχ」は当時、非常に魅力的に映り、導入に至ったと記憶しています。導入当時はまだ前身の「病院ダッシュボード」で、分析結果の一部の表示は(その名の通り、「車のダッシュボード」にあるような)メーター表示でしたよね(笑)。

――懐かしいです(笑)。それから今まで12年間、使い続けていただきありがとうございます。どのようにご活用いただいているのでしょうか。

大西氏:院内全体で積極的に使い始めるようになったのは最近のことです。最初の頃は限られた医事課の2、3人が使う程度でした。

眞壁氏:当時は一部の職員が幹部会議の基礎資料作成に活用したり、「生産性向上」「紹介患者の増加」など各種会議で話題になったテーマに応じてデータ抽出をしたりしていました。

大西氏:それから「病院ダッシュボードχ」活用は、一部の職員から医事課入院担当の全体に浸透。経営改善の推進ツールとして院内全体に定着し、活用するようになりました。

小杉氏:具体的には、2022年に「経営改善委員会」を立ち上げたことがきっかけです。経営改善委員会の下には、係数対策を行う(1)効率性係数(2)複雑性係数(3)救急医療係数――の3つのワーキンググループ(WG)、加えて加算・指導料等対策の(4)薬剤関係(5)栄養管理関係(6)リハビリテーション関係――の3つを加えた計6つのWGを発足させました。

ワーキング・グループ概要
経営改善を推進したワーキング・グループの概要(提供:東京医科大学茨城医療センター)

それぞれのWGには、「リーダー(医師)」、「サブリーダー」、5~10人の医療職等から成る「委員」がいて、そこで決まったことを医事課の「実行部隊」を基本に推進。各WGは月1、2回活動し、その活動内容を経営改善委員会に報告するという仕組みです。どのWGでも「病院ダッシュボードχ」で明確に数字を確認しやすい指標を用いて、課題がある部分は中央値くらいまでには引き上げることを目標にしています。1年くらいやってきて、複雑性係数や救急医療係数などは顕著に成果が出てきました。

「その他の重篤な状態」が80%→30%前後へ

中野氏:2024年度の診療報酬改定で「救急医療管理加算2」の算定基準が大幅に見直され、対象症例の5割以上が「その他の重篤な状態」の場合、加算点数が半減されるようになりました。当院ではこれまで、「その他の重篤な状態」が80%くらいあったので、その改善に病院全体として取り組みました。

具体的には、チェック用紙を用いて、医師が「救急医療管理加算2」の算定基準の一つである重篤な状態に準ずる症状に「該当なし」と判断した症例を、医事課ですべて確認しました。それで例えば、重篤な状態に準ずる症状の「脱水」などに該当しそうなものについては、医師へ説明して修正するということを何十件も繰り返しました。すると医師の理解も深まり、今では「その他の重篤な状態」の割合が30%前後になりました。

――飛躍的な成果につながり、とても嬉しく思っています。さらに貴院が素晴らしいのは、改善活動を推進する一方、算定件数は下がっていないというところです。

中野氏:改善に取り組み始めた2023年当時、救急医療係数WGのリーダーが今の柳田国夫病院長(当時は経営担当の副院長)だったこともあり、院内関係者間で自由に意見を言い合える環境でした。

下條氏:改善を始めた当初は大変でしたが、柳田病院長から医師たちへの周知を徹底していただいたこともあり、カンファレンスで「病院ダッシュボードχ」を用いた説明を繰り返すうちに、修正作業も減っていきました。

小杉氏:やはり改善活動は病院全体の意向として推進できると効果が出やすいと思います。WGの取り組みで実績も残せたので、また次の展開にもつなげやすくなりました。

大西氏:経営改善委員会と6つのWGによって(改善の風土醸成へ向けて)大きな道筋をつけられました。これまで、定義副傷病割合のベンチマーク結果は下位25%でしたが、取り組み後は上位25%になりましたので、まさに爆上がりです(笑)。いつもセミナーなどを通じて、具体的な改善施策に関する情報を積極的に発信していただいているので、これもグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)さんのおかげだと感謝しています。

職員同士の「距離」を縮められるツール

――貴院の取り組みが素晴らしいからこそです。当社では、
・【GHC病院経営データ分析塾】
 →テーマごとに「病院ダッシュボードχ」の使い方を解説。毎月開催。詳細はこちら
・【GemMed塾】
 →診療報酬に関する厚労行政を解説。毎月開催。詳細はこちら
・【LEAP JOURNAL】
 →テーマごとにベンチマーク結果とその解説を行う経営分析レポート。毎月発行。詳細はこちら
・【ミニウェビナー】
 →病院経営のトレンドをコンパクトに解説。毎月開催。詳細はこちら
・【GHC経営分析レポート】
 →病院ごとの経営成績やコラムなどを掲載。年2回発行
・【スタートアップ研修】
 →「病院ダッシュボードχ」の基本操作、資料作成、提案方法の基礎を習得。年1回開催。詳細はこちら
――などを通じて情報発信していますが、具体的にはどのような情報をご活用いただいていますか。

大西氏:すべて活用しています(笑)。どれも毎回、勉強になりますし、いつも刺激を受けています。参加できなくても、録画情報や資料もアップロードされているので便利です。ミニウェビナー(詳細はこちら)は毎回、非常に参加人数が多いので、もう全然「ミニ」じゃないですよね(笑)。

眞壁氏:特に分析塾は毎月、参加させていただいています(詳細はこちら)。分析方法だけではなく、資料作成の作法、院内への情報発信の際の言い回しなども勉強になります。

小杉氏:こうした情報発信で「病院ダッシュボードχ」を院内で使える「土台」を作ってもらっているので、少人数から院内全体でも活用できるようになった点もあると感じています。今回も若手を「スタートアップ研修」(詳細はこちら)に参加させていただきました。

――「スタートアップ研修」はいかがでしたでしょうか。

下條氏:「病院ダッシュボードχ」に触れ始めて約1年での参加となりました。それぞれの機能の見方の説明も詳しく、資料の作り方はもちろん、自分が作った資料のフィードバックもしていただけました。

醍醐氏:使い始めて半年くらいの参加でした。普段はオプション機能の「看護必要度モニタリング」をよく使っていて、そのほかの機能を触れる機会はなかったのですが、スタートアップ研修をきっかけに他の機能を使ったりして、新たな改善の視点や改善方法を知るきっかけにもなりました。他の病院の経営改善事例の発表なども聞けて、視点も広がりました。

中野氏:5年ほど前、当時はコロナ前だったのでオンラインではなく、現地集合型セミナーの形式で受講しました(スタートアップ研修2期生 ※2019年2月開講)。他病院の参加者の皆様の前で作成した資料の発表までやって、その時に学んだノウハウはWGの推進で活用しています。今では7、8人の入院担当の医事課職員がいつでも「病院ダッシュボードχ」を使えるようになっており、とても身近な存在になりました。

スタートアップ研修を通じて作成した資料
実際にスタートアップ研修を通じて作成した資料(作成:下條氏、醍醐氏=スタートアップ研修8期生 ※2024年開講)

小杉氏:まだスタートアップ研修に参加していない職員も使っています。WGの発足で各診療科の医師とのやり取りも増え、毎週水曜日のカンファレンスでも「病院ダッシュボードχ」を活用しながらディスカッションしています。医師から「この時はどうすればいいの」という質問をいただくことも多くなり、信頼も得られたと感じています。「病院ダッシュボードχ」は、医師との距離を縮められるツールとしても貢献しているのではないでしょうか。

大西氏:LEAP JOURNAL」も課題の発見になったり、気になるテーマのときはレポートを持参して関係する診療科とディスカッションしたりしています。医事課と診療科という活用範囲だけではなく、これからは地域連携が非常に重要になってくるので、そこでの活用にも期待しています。

眞壁氏:これからは医師から言われたから行くということではなく、「病院ダッシュボードχ」を使ってより効率的で効果的な地域連携の推進を目指して、データを軸にこちらからも積極的に改善施策を提案していきたいと考えています。

「無料でいいの」と言えるほどのカスタマーサポート

――最後に「病院ダッシュボードχ」について一言あればお願いします。

醍醐氏:データ提出をした次の日に最新のデータが見られるところが良いと思っています。

下條氏:カンファレンスの場で他院比較の話をするときによく使っています。使い始めた当初は難しそうに思いましたが、触ってみると使いやすくて驚きました。

――それは大西様からさまざまなご指摘をいただけたおかげです(笑)。我々だけでは限界もあるので、「病院ダッシュボードχ」はお客様と一緒に進化し続けているツールだと思っています。

中野氏:視覚的に分かりやすいので、表示される図表をそのままパワーポイントに貼り付けるだけで有用な資料になるところが気に入っています。

小杉氏:院内のさまざまな課題を幅広く見られるところがいいですね。見たいときに視覚的に見やすく、分かりやすい。DPCデータを用いているので、数字にも根拠があり、安心してさまざまな課題を他院と比較できます。

眞壁氏:10年近く分析塾に参加していますが、そこで言われて印象的だったのは、「医師はイメージで話すので、医事課は定量的なデータを見せないといけない」というコンサルタントの発言です。分析塾では資料の作成から使い方まで、さまざまなことを教えていただきました。

大西氏:眞壁さんの資料は院内でもピカ一で分かりやすい。ただ、よく見ると、分析塾で教えていただいた資料の構成と一緒なんです(笑)。

東京医科大学茨城医療センター
東京医科大学茨城医療センターの外観

個人的にはカスタマーサポートがとてもしっかりしていると満足しています。「ここまでしてくれて、本当に無料でいいの」というところまでしていただけるので。機能もどんどん増えていき、マニュアルも進化し続けています。だから、使う人は知識がなくても、すぐに使って迷わず欲しい分析結果を手に入れることができる。しかも、圧倒的なベンチマーク数があるので、分析結果への安心感もあります。

これからは次の一手として、「DPC特定病院群への昇格」を検討しています。病院全体の経営をさらに改善する上で、有効な旗振り役として機能してくれるのではないかと考えているためです。

――次の目標に向けても「病院ダッシュボードχ」をご活用ください。本日はありがとうございました。


水野 孝一(みずの・こういち)

コンサルティング部門アソシエイトマネジャー。診療放射線技師、医療経営士、施設基準管理士。大阪大学医学部保健学科放射線技術科学卒業。病院勤務を経てGHC入社。DPC分析、RIS分析、パス分析、病床戦略、地域連携などの分析を得意とし、国立大学病院や公的病院など複数の改善プロジェクトに従事。若手育成や「CQI研究会」の担当も務める。