事例紹介

2015年03月10日

職員、地域が選ぶ「最高の病院」へ 高水準の手術稼働率と地域連携を推進

病院名 済生会福岡総合病院 設立母体 公的病院
エリア 九州地方 病床数 380
病院名 済生会福岡総合病院
設立母体 公的病院
エリア 九州地方
病床数 380
コンサルティング期間 11年間

 病院は何を目指すべきか――。医療に携わる人たちの熱意と意欲をより高められる職場の提供と、地域住民を守る最後の砦であることにその解を導き出した済生会福岡総合病院は、徹底したデータ分析とそれに基づいた経営改善で、「最高の病院」を追求し続けます。

出会いから8年、驚愕の数字

 グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が2014年11月15日に開催し、全国有数の病院幹部が一同に介した10周年感謝祭。全国済生会病院長会の会長で済生会福岡総合病院の岡留健一郎院長は、あいさつの中で「うちには、データを細かくチェックしにやってくる『鬼軍曹』がいる」と、同病院のコンサルティングを担当するGHCの塚越篤子マネジャーを評した上で、「それがうちにとっては、何よりもありがたい」と付け加えました。

 岡留院長がGHCを知ったのは、GHCの創業間もない08年。知人の紹介でGHC会長のアキよしかわの講演を聞いた岡留院長は、「ベンチマーク分析を通じて、自病院の経営を可視化しなければ、これからの病院は生き残ることができない」という問題意識に共鳴。以後、強力なリーダーシップと明確なビジョンに基づいて病院改革を精力的に推進する岡留院長を、GHCはデータ分析の側面で支援していくことになりました。

 岡留院長とアキの最初の出会いから8年目を迎えようとしていた15年2月15日。博多市内で盛大に開催された「第67回済生会学会」のランチョンセミナーで、済生会福岡総合病院の実データを使って分析をプレゼンすることになったアキは、準備の段階で同病院の最新データを見て驚きました。

 手術室の稼働率は約80%と全国平均の30ポイント超え、ほかの医療機関から紹介された入院患者の占有率は78.3%と全国平均を20ポイント近く上回り、容体が安定した患者の他院への転院率に至っては、30.7%と全国平均のほぼ倍(関連記事『手術室の稼働率80%、済生会福岡総合の強さの秘密を分析―済生会学会でGHCが講演』)。さらに、総病床数(380床)のうち、救命救急センターの病床が62床と約16%を占めていることを塚越から説明されたアキは、手術の計画を立てづらい救命救急の病床比率の高さに「信じられない」と耳を疑ったほどです。

高度急性期病院を支える両輪

 済生会福岡総合病院(380床=うち救命救急センター 62床、ICU4床、SCU 9床)は、3次救命救急センター、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、 災害拠点病院(県DMAT)の指定を受けており、福岡市の地域医療を長年にわたり守ってきた高度急性期病院。GHCは手術室改善、医療連携、DPCなど多岐にわたって支援を実施しています。主な診療実績は、1日平均外来患者数535人、病床稼働率84.6%、平均在院日数9.8日、1日入院単価9万425円。

 GHCが近年、特にウエートを置いてきたのは、「高度急性期病院を支える両輪」(塚越)と言える手術室の改善と医療連携です。

 同病院とGHCが取り組んだことは大きく3つ。まず、手術部のモニタリングと「病院ダッシュボード」による分析を徹底し、手術室でのアクションを大きく見直しました。次に、診療科別にヒアリングを毎月実施するなど、手術室だけでなく病院全体への働き掛けも推進していきました。

 さらに、医療機関との連携を徹底的に見直しました。10年には医療連携室を設置し、ここを拠点に紹介元医療機関への返書管理を徹底したり、紹介患者の状況を紹介元の医師に直接報告する「済生会は必ず電話するプロジェクト」を推進したりしてきました。こうした改善活動が、現在の驚異的な手術室稼働率と紹介率(15年1月時点で81.5%)を支えています。

重要な指標を定め、測定し、改善する

 GHCの10周年感謝祭のあいさつで塚越を紹介した後、岡留院長は「データに基づいた分析、そしてそれを経営に生かしていくというスタイルがやっと今、うちの病院にも根付いてきた」とした上で、経営に必要なデータ分析を一手に担う経営分析室の職員についても「うちの事務のデータを見る目も全く変わってきた。それだけでも大きな改革だったと思っている」と話しました。

 データを重視し、経営改善につなげる文化は、病院全体にも行き渡っています。次年度の病院の方針、目標を決定する会議「コアメンバー研修会」。医師だけではなく、さまざまな職種で構成された「良質で安全な医療」を提供できるチーム医療の体制が整っていることを、開業医や住民にいかに知ってもらうことができるのか、研修会でボトムアップの形で議論し合い、共有しました。ここでの議論を踏まえ、済生会福岡総合病院は、15年度の行動目標を「重要な指標を定め、測定し、改善する」に決定しました。

 岡留院長は、目指すべき病院の姿を、「職員からも地域からも選ばれる『最高の病院』」と語ります。その実現のため重要なツールとして位置付けられているデータ分析によって経営を進化させ続ける同病院は、「最高の病院」への距離を縮める歩みを今日もまた、進めています。


◆インタビュー:データが組織を動かし、外部の意見が組織を結び付ける

 コンサルティング開始から8年目を迎えようとしている済生会福岡総合病院の岡留院長に、コンサルティング活用の魅力と、目指すべき病院の姿などをお聞きしました。

全国済生会病院長会の会長で済生会福岡総合病院の岡留健一郎院長

塚越:済生会福岡総合病院とは15年度で8年目のお付き合いになりますが、GHCを知ったきっかけはどういったものでしょうか? また、なぜGHCを選ばれたのでしょうか?

岡留氏:僕がGHCを知ったのは、共通の友人がGHC会長のよしかわ君を紹介してくれたからです。その後、何度か彼の講演を聞き、「これからの医療機関は自病院の役割、機能をしっかりと把握し、効率化を目指さない限りは、生き残ることはできない。そのためには、ベンチマークを通じて現状を可視化していかなければならない」という、常日ごろからの自分の考えと同じメッセージに共鳴し、コンサルティングをお願いしました。

塚越:これまでDPC、手術室改善、医療連携、救急と多岐にわたりご支援をさせていただきましたが、病院はどのように変わったのでしょうか。

岡留氏:データ分析の重要性を職員全員が意識するようになりました。塚越さんがわれわれの欲しいデータをタイムリーに持ってくるので、現場の職員にビンビン響き、改善のスピードが飛躍的に向上しました。それまでの経験、勘、度胸の医療から、今では客観的データが組織を動かす大きな原動力になっていると実感しています。

塚越:最初は院内の先生方とかなりバトルがありました(笑)。抗生剤の使い方を提案しても、「うちは救命救急センターもあり重症者が多いから」などと。すぐに、救命救急センター設置という専門特化した医療機関のみのデータを集め、重症度・入院経路も考慮した分析を実施し、抗生剤の使い方を見直していただくきっかけになりました。ご支援を開始して以来、毎月実施している診療科・部門別ミーティングは病院にとっての生活の一部のように定例化しました。他病院と比較されることに医師をはじめ職員の皆さまが抵抗感を持たず、できるだけベンチマークに近づきたいという意欲が満々で、次のミーティングのときには必ず課題が改善されていて、本当にすごい組織だなと思っています。

岡留氏:コンサルティングをお願いした初年度はいろいろあったね(笑)。しかし、データで自分たちの立ち位置をはっきりと示してくれるので、何をどうすれば医療の質と効率化と標準化が進むのかを理解できて、おかげで目指すべき超急性期病院へ確実に近づいていると思っています。

職員の熱意と意欲をより高める職場に

塚越:先生にとって、外部コンサルタントの役割とはどういったものでしょうか。

岡留氏:一言で言えば、「決断の後押しをしてくれる」ということ。経営者の大きな役割は、決断をすることです。大きな決断をしなければならないとき、塚越さんの助言は大きい。手術室を6室から8室に増やしたとき、新たな診療科の開設や撤退する診療科を決めなければならないとき、医療連携室の体制を大幅に見直したときなど、外部の視点でシミュレーションを含めた客観的データを提示してくれる定量の側面だけではなく、経営者と病院職員の意識をつなぐ定性的な側面からも、橋渡しをしてくれていると感じている。

塚越:先生の目指すべき病院とは?

岡留氏:「最高の病院」を目指したいです。

 「最高の病院」とは、まず職員が生き生きと誇りを持って働ける場を提供できること。病院は職種を問わず「人を救う」という使命の下に集まった人々の集合体であり、その仕事へのモチベーションは自ずと高いものです。各々が自分の仕事に誇りとやりがいを持って働いています。そういった職員の熱意と意欲を削ぐことなく、より高めていける職場を提供することがこれからのわたしのライフワークだと考えます。

 また、医療では機能特化をさらに推進したい。うちの病院の機能は明確です。救急、脳血管、循環器、そしてがん医療。最後の砦としての救急医療のさらなる充実と、低侵襲性のがん治療。ここは全国でも有数の激戦区ですが、病院職員からも地域からも選ばれる「最高の病院」を目指したいです。

塚越:本日はお忙しい中、インタビューのお時間をいただきありがとうございました。


社会福祉法人恩寵財団済生会支部福岡県済生会福岡総合病院
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TEL 092-771-8151(代)
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広報部
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。