2021年03月01日
病院名 | 市立砺波総合病院 | 設立母体 | 公立病院 |
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エリア | 甲信・北陸地方 | 病床数 | 471 |
病院名 | 市立砺波総合病院 |
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設立母体 | 公立病院 |
エリア | 甲信・北陸地方 |
病床数 | 471 |
コンサルティング期間 | 2017年度~ |
コンサルティング |
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市立砺波総合病院(富山県砺波市、471床)が、病床管理の見直しや加算算定の適正化などにより、年換算で1億円相当の経営改善を実現しました。当社のコンサルティングサービスを活用しながら、改善活動の取りまとめ役を担当されてきた総合企画室の三谷厚志氏による資料を引用しつつ、成功要因を解説します。
同院は、人口約13万人の砺波医療圏(砺波市、小矢部市、南砺市)の中核病院となる急性期病院。地域の医療機関との連携を図り、民間では困難な高度医療や特殊医療をはじめ、採算・不採算にかかわらず、質の高い医療を継続・安定提供しています。
医療の質のみならず、経営の質向上によるさらなる医療の安定提供を目指し、当社のコンサルティングを導入したのは2017年度。同院では2015年11月から先行して当社の経営分析システム「病院ダッシュボードχ(カイ)」を導入し、経営改善を推進してきました(詳細は『事務職のチーム医療を実現するツール、戦略面に注力できる』参照)。データ分析による経営の可視化を機に、2017年度には3期ぶりの黒字化を実現しています
こうした中、さらなる経営基盤の強化を目指し、三谷氏と同院担当で当社マネジャーの冨吉が二人三脚で、筋肉質な経営体質の実現に向けた改善活動の旗振り役を担ってきました。初年度は地域医療構想及び新公立病院改革ガイドライン(公立病院経営強化プラン)を踏まえた将来ビジョンの策定(関連資料はこちら)を行い、2018年度からは、将来ビジョン実現に向けた具体的なアクションの実行を推進(関連資料はこちらとこちら)してきました。
まず目を付けたのが、「地域包括ケア病棟」の有効活用です。同院ではこれまで、急性期病棟と地域包括ケア病棟の機能分化や役割分担が明確になっていませんでした。地域包括ケア病棟を活用した重症度別の病床管理を徹底したことで、DPC入院期間II超症例が減り、機能評価係数IIが改善しました。入院単価も向上し、重症患者割合も基準値を上回って安定しています
コンサルティングがスタートする前の2017年度と比較し、機能評価係数IIは0.0240~0.0324ポイント増と大幅アップ。係数アップによる概算年額の増収額は、5280~6776万円になりました。2年目の2019年度には北陸ナンバー1を奪取。2020年度も全国順位をさらに伸ばして全国トップ40の高水準を維持し続けています。
もう少し具体的に見ていきましょう。
現在、地域包括ケア病棟運用改善を目的として週1回の院内ミーティングを継続的に実施。病床利用率や平均患者数の改善に役立てています。重症患者は急性期病床、回復期に移行した患者は地域包括ケア病床など役割を明確化。それが順守されているか否か、順守されていなかったら何がボトルネックになっているのかを、データを用いた週1回の院内ミーティングでしっかりと確認し続けているのです。
こうした地域包括ケア病棟活用を起点に徹底した病床管理を行ってきたことで、DPC入院期間II超割合は徐々に改善。2017年度に38.3%だったDPC入院期間II超割合は、36.3%、34.3%と、改善活動スタート2年で2~4ポイント改善しています。
しかも、闇雲に在院日数を短縮させるのではなく、全国での症例数が多い診断群分類に着目して、その在院日数コントロールにも注力してきました。結果、こうした取り組みを評価する効率性係数が同じく改善活動スタートから2年で0.0041~0.0063ポイント増加。これだけで概算年額900~1400万円の増収効果に相当します。
重症度の低い患者を地域包括ケア病棟でケアすることにより、急性期病床の施設基準で重要な「重症度、医療・看護必要度」の重症患者割合も安定。「看護必要度II」で算出する場合の基準値29%に対して、2018年4月以降、重症患者割合は毎月33~35%で推移しています。
重症患者割合が高水準安定するとともに、入院診療単価も改善。改善活動スタートから2年で1500~3500円増加しています。
救急医療管理加算の算定率も改善し、年間4000万円近くの改善成果になっています。
比較的、富山県は査定が厳しいと言われており、本来であれば算定可能な症例の算定を見送っていることもあったのです。他病院とのベンチマークも活用し、改めて算定可能な基準を確認した上で、医師と医師事務支援室(医師事務作業補助者)との協働により、適正な算定を実施するための体制整備も進めました。
結果、救急医療係数のアップによる機能評価係数IIの改善もけん引しました。
主に係数対策と加算算定の適正化で筋肉質な経営基盤の構築を目指し、年間1億円相当の増収を実現させた同院。次の課題は、「人財育成」とそのベースとなる組織体制の整備と考えてさらなる経営改善を推進しています。主に「経営企画」の役割を担う「総合企画室」を新たに設置したほか、当社の人材育成研修を導入し、積極的に課題解決に向けた取り組みを進めています。
同院の取り組みにおける係数対策については、「DPC病院における経営改善のポイント②」が参考になりますので是非、ご確認ください。DPC病院の経営の基礎から確認されたい方は「DPC病院における経営改善のポイント①」、改革プランの策定にご興味がある方は「公立病院経営強化プランご支援概要」を参考にしていただき、当社のコンサルタントに直接ご相談されたい方は、お気軽にお問い合わせください。
冨吉 則行(とみよし・のりゆき) | |
コンサルティング部門シニアマネジャー。早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、GHC入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、GHCが主催するセミナー、「病院ダッシュボードΧ」の設計、マーケティングを担当。若手コンサルタントの育成にも従事する。 |
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