2007年09月21日
前橋赤十字病院●宮崎瑞穂院長
「QMS」、職員を楽にする方法です 2月に行った“医療の質”セミナーでご講演いただいたりと、常日頃お世話になっているパートナーの一人である、前橋赤十字病院宮崎院長。巷で人気の“ハニカミ王子”にも負けない笑顔が魅力的な一方で、常に前を見据え、院内を引っ張っていくリーダーシップと行動力の持ち主です。今回は、そんな宮崎院長に、質の向上に向けて行っている新たな取り組みについて聞きました。
――2月のセミナーの際には、「医療の質」をテーマにご講演いただきました。質を維持・向上させるために、「医療の質管理課」を設置するなどさまざまな取り組みを行われてきたとのことでしたが、今、新たに注力していることはありますか?宮崎院長 今は“QMS”ですね。「Quality Management System for health care」。東大の飯塚(悦功)教授と早稲田の棟近(雅彦)教授が中心になってやっている活動で、質・安全性の向上に向けて組織的に取り組むためのシステムを構築しようというもの。これに参加しています。この最終目標は、ISOを取得することなんですね。ISOって医療界ではまだ馴染みが薄いし、取得している病院もコンサルタント任せで取ったところがほとんど。それでは意味がないでしょう。自院のなかで仕組みをつくらなければまったく意味がないので、医師を中心としたプロジェクトチームを設けて、今、ゼロから取り組んでいます。
――具体的にはどういったことを始めているんですか?宮崎院長 コアメンバーは、医師5人のほかレントゲン技師や看護師など10人ほどで、まず手始めに外来診療のプロセスチャートの作成に取り掛かっています。各プロセスを可視化して、それを院内全体で共有することで標準化・統一化を図ろう、と。
――院内の反応はいかがでしょうか?宮崎院長 本当にゼロから手探りで構築している感じなので、懐疑的な部分もあると思います。「また院長が新しいことを始めた!」と思われているかもしれません(笑)。正直なところ自分自身も、この取り組みによってどのくらいの効果が得られるのか、まだ確信はないんですよ。ただ、「ムダを省こう!」という考えから始めたんですね。職員が楽になるだろうと思って。職員を楽にするための方法なんです。プロセスを可視化することで、それまでは各自がその都度行っていた判断などが省ける。判断にかかる時間って実は結構、無駄でしょう。
あと、これは診療だけに限ったことではなくて、実は事務面で非常に有用だと思うんですよね。実際、この間、フローを作成してくれて…(と、同席していた笠井さんに…)。
笠井さん プロセスフローチャートのつくりかたを教えてもらって、年次報告書の作成の仕方についてフローと5W1Hをまとめてみたんです。各手順について誰が行って、誰が確認するのかなど。慣れない作業だったので最初は戸惑ったんですが、流れをつくってしまうと非常に楽なんですよ。説明する側も伝えやすいし、聞く側も理解しやすい。作業が非常にスリムになるし、「こういう場合、どうしよう?」という精神的な不安もなくなります。
宮崎院長 事務関係の業務フローは、診療よりも複雑な場合が多いですからね。一つひとつの業務をまずは形に落として、それを病院全体で共有し、さらに定期的に見直しをかける…。診療面にしろ、事務面にしろ、仕組みとしてミスを減らし安全性を高めるということです。また、フローを可視化することで、「あの人がいなければわからない」ということがなくなります。今まではこういう仕組みがほとんどなくて、各人に頼っている状態でした。でも、もっと組織として持つことが重要だと思うんです。人が抜けたらノウハウもなくなるというんじゃ、もったいない。
――なるほど。これはすべての組織において非常に重要なことですね。今日は貴重なお話をありがとうございました!
広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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