2008年02月19日
栃木に、“メディカル・アナリスト”のメッカを!
国際医療福祉大学 医療福祉学部 医療経営管理学科教授 学科長●高橋泰 先生アキよしかわがスタンフォード大学在職時に同大学に留学した経験があり、また、国際医療福祉大学での教え子がGHCにて活躍していたりと、GHCとは何かとつながりのある、国際医療福祉大学の高橋泰教授。大学関連の仕事や講演活動、取材と、何かとお忙しい合間を縫って、インタビューをさせていただきました。
2008年度の診療報酬改定の評価はズバリどうか? 国際医療福祉大学で今、養成をめざしているという“
メディカル・アナリスト”とは何か? お聞きしてきました。
――2008年度の診療報酬改定について、骨子や主要改定項目の概要がすでに出ていますが、どのように評価されていますか? まず、残念だった点はどこでしょう? やはり、診療所の再診料引き下げが見送られたこと。今の医療界で至急取り組むべきことの1つが、開業ブームを止めることだと考えています。これについては、さまざまな場所で訴えてきて、「再診料を引き下げるべき」というトレンドをつくってきたと自負しているので、非常に残念です。再診料が下がれば、直接的な収入減になるので、開業への抑制が効くと思うのですが…。
あと意外だったのが、亜急性期。前回の改定でも点数が下がると思っていたら手つかずで、今回は「亜急性期入院医療管理料の要件緩和を図る」ことが決まりましたよね。今後議論が始まる、“DPC2階建て論”の一般急性期病床に対する伏線だと思います。
――なるほど。では、逆に評価している点はどこでしょうか? 勤務医に対する報酬増の一環で、手術等技術料の適正な評価として、800億円程度の財源が充てられることになったのは、大きいですね。これは、外科の先生方にとっても、上がったという実感が得られると思います。
また同様に、小児救急も、手厚い人員体制で対応している施設は、目に見えて上がったと感じられるポイントですね。メリハリをつけた評価になると思うので、病院の機能によっては、1割程度上がるところもあるのではないでしょうか。
――では、話は少々変わって、先生の講演(2月1日「DPC実践セミナー」)のなかで、「今後は“メディカル・アナリスト”が必要になる」というお話がありましたが、この“メディカル・アナリスト”構想について、お聞かせください。 DPC導入の最重要目的は、詳細な診療内容を示すデータを電子化し、この情報を各医療機関の経営や管理に利用することで、日本の急性期医療の質を上げることにあります。ただし、これを実現するには、DPCという全国統一のフォーマットと、分析ツールのほかに、新たな“人材”が必要です。膨大な診療データから現状を把握し、さらにシミュレーションを行い、医療の質・患者満足・収益などさまざまな観点から最良と思える診療パターンを提案、医療スタッフと協議をしながら診療の基本パターンをデザインできるような人材です。こうした役割を担う人を“メディカル・アナリスト”と呼んでいます。
院内の誰がこの役割を担うかは各病院によっていくつかのパターンが考えられますが、事務職員とリーダー的な医師が協力する形で行うのが最も一般的な形態になると思います。また、診療情報管理士も適任でしょう。ただ、従来の事務職員、診療情報管理士には不足しているスキルがあります。それは、DPCのEファイルより作成される入院各自ごとに提供される医療内容の一覧表を見ただけで、診療のプロセスを紙芝居のように頭でイメージできるかどうかです。このスキルがなければ、医療スタッフに提案を行ったり、対等に協議を行うことはなかなかできません。
――こうした人材をどのように育成していくかが重要ですね。 院内で育てていくことももちろんですが、国際医療福祉大学の医療経営管理学科でも、来年度からメディカル・アナリストの養成に向けて新たなカリキュラムを考えています。数千人規模の仮想入院患者のDPCデータからなる仮想病院のデータセットと、数十病院からなる仮想ベンチマーク病院のデータを用意し、DPC分析ソフトを用いてデータを解析し、仮想病院の問題点を探し出すような教材を開発中で、来年度からこの教材を用いた実習を3年生や4年生に行なえるよう準備を始めているんです。
また、現カリキュラム内でも、診療プロセスをイメージする練習を行っています。実際に私が入院したときのカルテと看護記録を使って、それを基に
絵日記を書くという課題を学生に出しているんです。
よく、「医療は難しい」と言われますが、文字、特に医学用語からその内容を理解するのは難しい場合が多いですが、絵にすると簡単なんですよ。一つひとつの疾患にしても、書籍などを読んで言葉で理解しようとすると、専門用語ばかりで難しい。でも、疾患の様子や医療処置を絵や映像で見せると、すんなりと理解しれくれるんです。
今後は、経営のことはもちろん、診療についてもイメージが沸く人材をいかにつくるかが課題です。
――あとは、なり手の問題ですね。 メディカル・アナリストは、今後、すごくかっこ良い仕事になると思うんですよ。そのイメージを中学生や高校生にもっと広がれば、良いと思っています。
現状では、ほとんどの卒業生が地元の病院に就職しているのですが、今後はメディカル・アナリストのような人材を全国の病院に輩出できるようになればいいなと思っています。栃木という土地にある大学が、メッカになれるか…。教材はできあがって、教育の場である学校もあるのですから、夢物語ではありません。これは、至急実現したいと考えていることです。
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広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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