GHCブログ

2008年03月02日

志は高く、腰は低く

茨城県厚生農業協同組合連合会 総合病院 土浦協同病院 ●情報システム管理室・船越尚哉先生

船越先生(前)とGHC本橋(左)・鈴木(右)

 救命救急センター、地域がんセンター、総合周産期母子医療センター、NICUなどの機能を有し、地域の基幹病院である土浦協同病院。DPCには、平成18年度から準備病院として参加し、今年7月にDPC対象病院に移行する予定です。  DPC本番に向けて準備に拍車がかかるなか、今回は、GHC本橋と鈴木がEVE研修を実施させていただきました。朝9時から始まり、お昼の休憩を挟んで、夜7時までという長丁場。最後には、10人の参加者を2つのグループに分けて、グループごとに分析結果を発表していただきました。そして研修の〆は、同院のDPC推進会議のリーダー格・船越先生のプレゼン。

「データを分析するときには、その裏にいる患者さんの顔を思い浮かべてください。どんな患者さんなのかを考えることで、副傷病や合併症などの可能性にもイメージがわき、適切なコーディングにつながります」 「大切なのは、分析・評価というカイゼンは1回で終わりではないこと。永遠に続きます」 「今すべきことは、①制度の周知徹底、②パスの導入や見直しによる制度に適合した診療プロセスの確立、③後発医薬品の導入などによるコストの最適化、④個々の医師の意識改革――など。そして、それらの結果を検証していくこと」  などと、カイゼンに対する考え方、DPCに向けての準備の方向性を明確にする、非常に素敵なプレゼンでした。  さて、そんな船越先生に、研修後のお疲れのところ、インタビューをさせていただきました。

熱気溢れる研修室


――本日は、朝9時から19時までという長時間にわたるEVE研修、お疲れ様でした。いかがでしたか?

 個人的には、以前、東京で半日コースのEVE研修(DPC実践セミナー)に参加しましたし、普段からEVEを使い込んでいるので、新たに得た知識は多くはありませんが、いくつかの疑問点が明らかになったほか、研修を受けたスタッフの反応を確かめることができたので、参加して良かったです。  EVE自体について言えば、非常に使いやすいですよ。マニュアルもわかりやすいので、他のスタッフも大部分の機能はすぐに使えるようになると思います。  今日の研修は、他のスタッフにとって、良い意味でのショックになったと思います。「ここまで見えるのか…」と。今までも、私以外に数人のメンバーが分析に携わっていましたが、明日からより質の高い分析が、多くのスタッフより展開されることが期待されます。5月頃からは各診療科の部科長の先生方に分析してもらう体制になります。さしあたり、明日アクセスログを確認するのが楽しみですね。



――ところで、今年の7月からDPC対象病院にシフトされる予定ですよね。DPCに対する準備はどのくらいの時期から始め、今はどのような取り組みをされているのでしょうか。

 当院は、平成18年準備病院です。その前年17年12月に「DPC推進会議」を立ち上げました。年々、目標は変わってきていて、スタート当初の目標は「DPCデータを様式どおりに適切に提出すること」。今の目標は、「7月からスムーズに対象病院に移行すること」です。先般、病院長よりDPC対象病院に移行するにあたっての基本姿勢を、全職員にわかりやすく提示するように指示を受け、以下のような内容としました。基本理念の1つは、『DPC環境下においても、引き続き地域の中核病院としての責務を果たし、トップクラスの病院として国内外の医療に貢献する』。2つ目は、『DPC移行を変革の好機としてとらえ、以下の項目についてより一層の充実・向上を図る。医療の質・患者の満足度・職員の働きがい・経営基盤』。また当面のアクションプランとして、『制度の周知徹底』『適正なコーディング』『制度に適合した診療プロセスの確立』『投入医療資源コストの最適化』『適正な請求』『前記項目に対する検証』を挙げました。

――具体的な取り組みについて、もう少し詳しくお聞かせ下さい。

 当院には、600台くらいのコンピューターがあり、院内のイントラネットでつながっています。パスや感染対策、褥瘡についてなど、各委員会やチームが自主的に、院内のスタッフに向けたホームページを作成しています。私も昨年5月にDPCに関するホームページを立ち上げ、この2月にリニューアルしました。“DPC早わかり”という感じの内容です。制度の解説のほか、自院のマクロ・ミクロな分析や、EVE通信などの他病院での分析事例も紹介しています。またEVEトップ画面にもリンクしています。  6月は、シミュレーション期間として、7月以降と同じようにデータを作成して、出来高との比較などを行う予定です。  当院は、現状、赤字ではないので、まずは出来高との差を注意すれば大丈夫かなと思っています。ただ、今後は調整係数も廃止されますし、秋以降からは、コストとの比較も視野に入れていくつもりです。  このように戦略を立てて取り組んでいますし、EVEという力強いアシストも得られたので、実は何の不安も感じていません。

――力強いお言葉ですね! ところで、研修の最後に、「二流の病院ではなく、一流、もしくはそれ以上をめざして…」というお話がありました。船越先生の考える“一流病院”の条件とは何でしょう?

 難しい質問ですね…。前段の基本理念の中で充実・向上を図るべき4項目が高いレベルであり、かつ常により高いレベルを求めて行動する。このようなことが条件でしょうか。

――医療の質・患者さんの視点・職員の視点、そして経営…。相容れないこともあるかもしれませんが、どれもはずせない条件ですね。

 この難解な連立方程式の答えを、見つけていく、出した答えが正しい答えなのかを検証していく、それが私たちの仕事です。このプロセスにおいてEVEは大きく貢献してくれると思います。

――なるほど…。先生が研修中におっしゃった「数値だけを見るのではなく、患者の顔を思い浮かべながら…」という話についてもう少しお聞かせください。

 喘息のDPCを分析する時には喘息発作を起こしている患者さんの息苦しさを、悪性腫瘍のDPCを分析する際に、麻薬を処方されている患者さんがいたならば、その体や心の痛みを共感できたなら、より良い分析ができ、誰もが納得できる改善点が発見できるのではないでしょうか。  私自身も病気を体験してきて思うのは、患者さんは不安や痛み、苦しみを抱えているわけです。できれば早く点滴から解放されたいし、一日も早く退院したいと思っています。現状のDPCでは在院日数を延ばしたほうが経営的にプラスになるケースもありますが、患者さんにはまったくメリットがありません。病院は患者さんを幸せにするためにあるのですから、“一流病院”がする方法ではないですよね。  理想的と言われるかもしれませんが、私は夢を描くことが大好きなんです。モットーは、「志は高く、腰は低く」。

――先生にぴったりの素敵な考えですね。今日はありがとうございました。

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広報部
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。