GHCブログ

2008年04月19日

しっかりとした研修プログラムを

UCLA医学部麻酔科助教授兼ペインクリニック科専門医●有田治生先生


 昨年末のカリフォルニア研修時に、スティンゾンビーチまでご一緒させていただいた、UCLA医学部麻酔科の助教授の有田先生。10日間ほど日本に帰ってきていらっしゃるとのことで、先日、GHCの夕食会にご参加いただきました。そして、「せっかくですからインタビューを…」と、若干、強引にお話を聞かせていただきました(笑)

――ベタな質問ですが、日本とアメリカの両方の現場経験を持つ先生にとって、一番の違いはどのような点でしょうか?

 まずは保険制度が違うということ。日本は国民皆保険だけれど、アメリカの場合、公的保険は、高齢者と障害者を対象としたメディケアと低所得者対象のメディケイドのみなので、プライベートの保険(民間保険)がほとんどです。ただ、当然民間保険は高額で、どちらかというと患者さんは、車を直すような感覚で、病院にやってきます。つまり、ある程度元に戻ることが当然と考えているので、患者さんの要求が非常に高い。そのため、アメリカでは医療訴訟が非常に多いんです。一方で、各医師は、医療訴訟に備えて、高い医師賠償責任保険に入っています。日本にいた頃は5万円程度だったけれど、アメリカでは300万円にも…。産婦人科医の場合、1000万円近くの保険に入っていると聞きます。  こういう背景があるためか、アメリカでは、臨床研修のトレーニングが非常にしっかりしています。これだけが理由だとは言いませんが、事故を起こす専門医が増えれば医療過誤保険が高騰してしまい、結果その診療科の存続も危うくなるからです。イギリスにも行ったことがあるので、3カ国の医療現場を知っていますが、研修体制についてはおそらくアメリカが一番。以前に、自分が研修中に同級の2人の研修医がほぼ同時に辞めたら、国の機関がチェックに入ったということがありました。2人が辞めたのは家庭の事情だったのですが、研修体制が良くないのではないかと疑われたわけです。それほどアメリカでは厳しい。日本では考えられないですよね。 専門医の認定にしても、非常に厳しいです。日本では各学会が専門医の認定を行っていますが、アメリカでは公的機関がかなり厳密に審査を行います。日本だったら、麻酔科医である僕でも皮膚科や小児科などを標榜して開業することができますが、当然、アメリカでは無理。 生意気なようですが、日本はもっと、患者さんが訴えるべき…とは言いませんが、もっとあれこれ主張するべきだと思います。残念なことに日本では事故なり問題が起きて初めて行政が動く印象があるので。 アメリカの医療は問題も山積みで、首をかしげることも多々あります。でも多民族、多宗教、あらゆる知的レベルの人間を一定のレベルに育てるシステムだけは見習うべきです。日本の自動車教習ってありますよね、第一段階、第二段階と細かくチェックされるやつですが、アメリカではあれを医学でやっている感覚です。第十段階になったらそこそこ一人で運転できるように医者もトレーニングされます。

――ところで、アメリカで暮らすなかで感じる日本の良さとは?

 食べ物がおいしくて、言葉が全部通じる、テレビがおもしろい…。でも一番は温泉かな。味はまだまだとはいっても日本料理屋も増えているし、言葉もまぁなんとかなる。それに、最近インターネットなどで海外のテレビも見られる。日本の温泉は格別! 今回も伊豆の温泉に行くんですよ。

――いいですねぇ!

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広報部
広報部

事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。