GHCブログ

2008年09月19日

自分の孫に薦められるような医療界にしたい

松下記念病院●川瀬義夫腎不全科部長




7月31日の「医療の質と経営の質」セミナーで貴重なお話を披露してくださった松下記念病院の川瀬先生。セミナー終了後の懇親会中、このブログ用にとインタビューをさせていただきました。すでにアルコールも入っていたこともあり(?)、普段はなかなか聞けない意外な話が飛び出し…。実は高校卒業後、一旦は社会に出て働いていたところ、「医者になろう」と一念発起し、一年間勉強に専念して医学部に入ったという川瀬先生。しかも、当初は精神科医になりたかったそうです。

――社会人経験を経てから医学部に入りなおされたんですね。しかも現在ご専門とされている泌尿器科ではなく、精神科を志していたとか…。驚きました。

医学部に入る前には工場で働いていたんですよ。二十歳のときに医者をめざそうと決心して…。といっても、立派な大義名分があったわけではなく、とにかく手に職をつけようと思ったら医者だろう、と。すぐに医学部に入れる状況ではなかったので、一年間、勉強に専念しました。 そして医学部に入れたわけですが、僕は自分自身が相当悩みやすい性格なので、精神科に進もうと思っていました。ところが、実習で精神科の当直をずっとやっているなかで、現実の過酷さを目の当たりにしました。僕が当直をしていた病院は、閉鎖病棟と開放病棟がありました。閉鎖病棟の患者さんは、やはり重症の方ばかりなんですね。それに重症の精神疾患というのは治療にかなり時間がかかります。思い描いていたイメージと、実際の“病気”という現実のギャップを次々に見せつけられて、自分には精神科は無理だなと思ったんです。

――そういった経緯があったのですね。ところで、前回インタビュー(/ghcblog/index.php?e=25)させていただいたときには、DPCに向けた取り組みについてお聞かせいただきました。先生ご自身が、DPC運営委員長として日々データをチェックし、分析結果を「DPC通信」として月刊で院内に配布されているという話でした。今、新たな課題はありますか? 後継者を育てることです。年齢的に定年も見えてきたので、透析に関しても、DPCに関しても後継者を育てなければいけませんね。特にDPCについては事務系を育てたいと思っています。もともと医者は医学部で経営を学んではいません。やはり今後は、経営分析のできる医療事務が必須だと思うのです。事務職もプロとして教育が必要です。 ただ、教えることは非常に難しいですね。たとえば、「医療の質」といいますが、僕らは経験としてわかっています。その裏づけとしてデータを使う。つまり、最初に方向付けがあって、そのことを示すために必要なデータを提示するわけです。しかし、その“経験”が乏しい人にとってはなかなか難しい話です。 今、医療は非常に厳しい状況にありますよね。先日のシーリングでも、今年度同様に社会保障費を2200億円抑制することで合意されました。しかも、この2200億円の抑制は保険組合からの支援金で成り立っているようなもの。こんな状況で勤務医に手厚い、適切な評価を行うなんてできるわけがありません。厚生労働省と学者、そして現場の病院が、まったくかみ合っていないように思います。もっと現場を知ってほしい。 僕は自分の子どもには「絶対に医者になるな」といって医者にはさせませんでした。それは、今の日本の医療にいろいろと思うところがあるからですが、自分の孫には「医者はいいぞ」と奨められるような医療界にしたいですね。

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広報部
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。