2008年11月19日
「患者さんの目線に立った情報を」…医療ジャーナリスト基礎講座
今、私(GHC橋口)は火曜日の夜に、NPO法人医学ジャーナリスト協会が主催する「医療ジャーナリスト基礎講座」に通っています。テレビや新聞、雑誌などのメディアに関わる医学ジャーナリストの諸先輩方が登場し、レクチャーするというもの。
今回は、NHKを経て、NHKエデュケーショナルで番組制作に携わり、現在はフリーのプロデューサーとして活躍されている鈴木紀郎氏の講演でした。
最近、医療にまつわるテレビ番組は本当に増えています。実際、鈴木氏がある日に放送された番組を調べたところ、がんで亡くなった筑紫哲也さんの追悼番組や身近にある病気を取り扱った医療番組、報道番組の1コーナーなど、医療にまつわる情報を報道する番組は1日に10以上あったそうです。
レクチャーのなかで、鈴木氏が制作に携わった番組のうち、2年前に放送されたETV特集「がんと向き合う 緩和ケア最前線」の一部を紹介してくれました。90分の番組の中の15分ほどで、一人の患者がある病院から別の病院の緩和ケア病棟に転院し、身体上、メンタル上、どのような変化があったかを真摯に追ったドキュメンタリーでした。
「日本では治すことが100%で、治療できなければ患者ではないの。死んでいく人間は見捨てられている…」
「がんの患者が言ったら笑われるかもしれないけれど、今、私は本当に幸せ。ハッピー」
「あと1ヵ月早く転院できていたら、(ご家族と話しながら)こういう時間を1ヵ月も長く過ごすことができたのに…」
その患者さんのまっすぐな言葉と、「幸せ」とおっしゃったときの柔らかい表情が非常に印象的でした。痛みを取り除くことで、病気に立ち向かう力を蘇らせ、医療に前向きになってもらうという緩和ケアの重要性を感じました。同時に、緩和ケア病棟だから緩和ケアを受けられるのではなく、もっと広い患者さんがケアを受けられるようになればと思わずにはいられませんでした。
これまでにさまざまな医療番組の制作に携わってきた鈴木氏は、「(番組をとおして)医師が伝えたいことと、患者、一般の視聴者が知りたいことは違う」と指摘します。たとえば、ある1つの病気をテーマに取り上げ、その分野の専門家医を講師に招いた番組を撮る場合、医師が伝えようとするのは大抵、「科学的にどうなのか」「臨床技術、スキルにどのような違いがあるのか」といったこと。一方で、患者や一般視聴者が知りたい情報は、「なぜ、自分が病気になるのか」「自分の体にどんな変化が現れるのか」「生活がどう変わるのか」といったこと。このギャップは、結局は日常診療のなかでも生じているギャップなのではないでしょうか。
鈴木さんは番組製作者として、「患者さんの目線に立った情報を提供したい。そして、患者さんが最低限の知識を持って、自らの防衛に役立てば…」とおっしゃいます。
レクチャー後の質疑応答では、「学校教育のなかで、医療をもう少し扱えないのか」といった意見がありました。確かに、現状、医学部を除けば、医療に関わるプログラムは保健体育のみです。また、テレビ番組を通じた教育という点でも、「病気に関心のある人は60代、70代が多く、子供向けの医療番組の制作はなかなか難しい」(鈴木氏)とのこと。でも、医療費抑制の問題にしても、医師不足の問題にしても、「国民がどう考えるのか?」「どのような状況を望むのか?」というコンセンサスが必要になってきています。医療に関するベースの知識を養うという意味で、土壌をつくるといういみで、メディアの役割も1つですが、教育の重要性も高まっていますね。
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広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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