2008年12月24日
提案する組織になってほしいから“企画”にした――盛岡日赤・佐々木事務長
盛岡赤十字病院●事務長 佐々木利雄氏12月11日に開催した日赤ベンチマーク東北・北海道・北関東ブロックのEVE研修会。その際に、場所をご提供してくれたのが盛岡赤十字病院でした。そこで研修会当日、佐々木事務長に突然のインタビューをさせていただきました。「いいことはいえませんよ…」とおっしゃっていた佐々木さんでしたが、いざ話をうかがうと、病院の今後について、経営について、非常に真摯な示唆にとんだ内容となりました。
――昨年からDPC分析システム「EVE」を導入くださっています。院内で何か変化はありますか?事務職員にとって、診療行為について医師に話すことはハードルの高いものです。なかなか言いづらい。ところが、EVEを使ってベンチマーク分析を行うことによって、他院に比べて検査は多いのか、抗生剤の投与日数はどうかといったことがわかるようになると、本当に必要な診療に関して情報提供を行うことができるわけです。事実がはっきりしていることに関しては医師にも受け入れられやすいのです。
そもそもDPCとは医療の質の標準化や可視化が目的。そこで当院では、分析チームを設けて、各診療科についてそれぞれヒアリングを行い、分析を行っています。今は調整係数によって前年度並みの収入が確保されていますが、いずれは廃止されます。新たな評価が行われるわけですが、まだ具体的にはわかりません。では、調整係数で補っていた部分を埋めるために今からできることは何かと言うと、やはり分析を行って無駄な部分を排除し、コストをコントロールすることではないでしょうか。
――分析チームはどのような体制で行っているのでしょうか?診療情報管理士、薬剤師、検査技師、放射線技師、事務職、管財課職員、看護師がそれぞれ一人ずつで、皆、兼務で担当してもらっています。ケース分析を行うにあたって、薬剤の話であれば薬剤師が、造影剤の話であれば放射線技師が…という風に、それぞれの専門性を活かしてもらうために、あえて多職種のスタッフを集めました。
この分析チームは、正式には「診療情報企画室」と命名し、院長直轄として位置づけています。そしてヒアリングを行う際には、院長、副院長、看護部長、そして私が必ず出席しています。名前を考えたのは私で、“企画”という言葉を使ったのは、ただ分析を行うのではなく、提案をする組織になってほしかったからです。それだけ期待しているわけです。
――今回は、東北・北海道・北関東ブロックの日赤病院さんが集まって、研修会が実現しました。院内での分析は始まっていますが、それが他院と比べた場合にどうなのかということはなかなかわかりません。他の病院よりも進んでいるのか、遅れているのか…。より進んでいる病院があれば、ぜひ情報を知りたいですし、お互いに精度アップが期待できると思います。今回は第一回目ということで、分析手法などの基本的な部分が中心でしたが、今後、特定の症例についてオープンに議論を行うなど、もう一歩踏み込んで話し合うことができれば、さらにお互いのレベルアップにつながると思います。
――今後の病院経営において、新たに考えている課題はありますか?一つ考えているのは、薬品のSPDを実施できないかということです。東北地区の日赤病院のなかにはすでに始めているところもありますが、材料のSPDは一般的に行われている一方で、薬品は薬事法などの問題で難しい。しかし、SPDを導入することによって、今までそれぞれのメーカーと行っていた交渉や在庫管理などを一括することができます。窓口が1つになるうえ、SPD会社に病院側に立って価格交渉などを行ってもらうことで、コスト削減が狙えます。
病院といえども、これからは過去のやり方を漫然と続けていてはダメ。新しい方法、考え方をいち早く取り入れなければなりません。そのためには早い意思決定が重要です。そこで当院では、院長、副院長、看護部長、総務課長、そして事務長である私というメンバーで週に1回ミーティングを行い、今やるべきこと、変えるべきシステム、来週のスケジューリングについて検討を行っています。
――早い意思決定を行うためには、ボトムアップで現場の情報を入手することも重要かと思いますが、そうした工夫はありますか?こちらからいろいろなところに出歩いて、情報を聞くということですね。情報が届くのを待っていてもダメなんです。情報があがるのを待っていたら、ワンテンポ遅れて、次の会議にまわります。
とはいっても、すべてがうまくいっているわけではありません。病院は職種が多い組織ですから、立場によって考え方が違います。そして、病院全体を考える視点を持つスタッフは、そう多くありません。これからは部門間で情報交換できる仕組みが必要だと感じています。日常の業務のなかでは各セクションから出る機会はほとんどないので、各現場の部門長が集まる場が必要ですね。
●盛岡赤十字病院
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広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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