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2009年02月02日

医療制度改革と病院経営……済生会栗橋病院・本田先生、相澤病院・相澤理事長

2月1日、保健・医療・福祉サービス研究会主催の「医療制度改革と病院経営戦略セミナー」にお邪魔してきました。ただ、午前中にあった日本福祉大学の二木立教授のご講演は聞くことができず、済生会栗橋病院副院長の本田宏先生、社会医療法人財団慈泉会相澤病院の相澤孝夫理事長のお2人のご講演を聞いてきました。

済生会栗橋病院・本田先生 NPO法人医療制度研究会の副理事長でもある本田先生の講演は、「“医療崩壊”打倒に向けた新たな提言と医師不足時代に対応した今後の病院経営」。 「このままでは日本の医療は崩壊してしまう、医師をはじめ、現場の皆さんからもっと声を発していこう!!」という熱いメッセージで、医療崩壊の要因について、①低医療費、②医師不足、③情報操作――の3つを指摘されました。

①「低医療費」とは? ・OECD Health Data によると、日本は世界一の高齢化(=寿命が長い)なのに、一人当たりの医療費は最低。 ・アメリカは、社会医療費(20%)、メディケイド(6%)、メディケア(10%)、その他の医療・福祉(19%)と、支出の半数以上を医療・福祉関連にあてている。一方、日本は、社会保障費に当てられているのは23%のみ。 ②「医師不足」とは? ・人口10万人対医師数は、OECD平均が290人に対して、日本は206人(H14年医師・歯科医師・薬剤師調査)。都道府県別に見ても、最も多い徳島(275.7)、京都(274.2)、東京(267.6)でもOECD平均を下回る。 ・OECD Health Data によると、1,000人あたりの医師数は、メキシコ、韓国に次いで少ない。しかも、アメリカは医師数をFTE(Full-Time-Equivalent:常勤換算)で計算しているのに対し、日本は、医師免許を持っている人の数!? ・レジデント、秘書、患者運搬専任係などアメリカでは豊富に配置されているのに、日本ではほとんどいないスタッフ。その分、医師が働いている。 ③「情報操作」とは? ・「将来的に医師は過剰になる」と結論づけていた「医師の需給検討会報告」 ・天下り法人にいっている“埋蔵金”

情報量の多い(元のスライドは700枚以上あるとか…)、熱い講演でした。

相澤病院・相澤理事長 一方、相澤先生は、「100周年を迎えた相澤病院の地域に貢献する急性期拠点病院としての新たな挑戦」と題して講演。これからの急性期病院に求められる医療は「素早く確実に安全に疾病を治す」こととして、①効率化・標準化を行うためのクリニカルパス、②リスクマネジメント、③医療の質確保――のために同院が行っている取り組みについて説明くださいました。

このうち、効率化・標準化に関しては、院内の取り組みのほか、地域の医療機関ともパスを作成して共有するなど、広報医療連携を強化していることを説明。250の登録医院があるほか、近隣のQ病院では亜急性期病床20床を相澤病院専用ベッドとして利用し、毎日医師1人を派遣。同様にB病院には月2回リハビリの専門医1人を派遣し、回復期リハビリテーション病床60床の半数ほどに相澤病院の患者が入院しているそうです。ただ、後方連携を行う前提として、同院では、「患者さんが安心して移ることができるよう、搬送車には必ず看護師とメディカルソーシャルワーカーが同乗し、看護師が今後の治療について説明し、MSWが生活の説明を行うようにしている」とのことでした。

このほか、地域連携のための情報システムの話や、人材育成、組織マネジメントについてなど、さまざまな側面から病院の改革について話をしてくださった相澤先生は、講演の最後、「結局は、自分がどう生きるか? 自分がどうやるか?」との言葉で締めくくりました。医師不足や看護師不足などの何かと暗いニュースが多いなかで、相澤先生のこの言葉は非常に力強く心に届きました。

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広報部
広報部

事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。