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2009年03月18日

初志を持ち続けられる環境をつくる――千歳市民病院・堀本院長

市立千歳市民病院●院長 堀本和志先生

「より質の高い 心あたたまる医療の実現」を理念に掲げる市立千歳市民病院。今回、同院にお邪魔させていただくと、建物というハード面、そして職員というソフト面のいずれからも、この理念に込められた想いが感じられました。そしてもちろん、院長である堀本先生に取材させていただくなかでも。北海道という地域特性もあり、医師の採用が困難ななか、どのような病院経営を考えていらっしゃるのか、お話をうかがいました。

――玄関を入って、ここ(院長室)にくるまでの間に感じたのが、建物がきれいであることはもちろんですが、職員の方々が皆さん、非常に感じがよいですね。

ありがとうございます。新しい病院に移転したのが2002年で、6年くらい前です。院内にいる人に“和み”を与えるよう、木の温もりを基調としています。 当院の理念は、端的な表現でいいなと思っているのですが、「より質の高い 心あたたまる医療の実現」。患者さん目線ということを大事にしています。基本方針としては、患者さんの人権を尊重すること、救急医療と小児・周産期医療の充実を図ることなど、6項目を掲げています。いずれも至極当たり前のことですが、すべてを100%実行することは難しい。当院は190床ですが、この規模の病院でも求められる機能は同じなので、職員個々の負担が大きくなるわけです。たとえば委員会にしても、職員は複数の委員会を掛け持ちしなければなりません。

――確かにそうですね。病院として求められる機能は、規模に関係なくある程度は同じですよね。

病院としての機能という点では、2006年に病院機能評価のバージョン5を受けました。これは、安全管理、院内感染対策、患者サービスなど病院機能を整えるためと、職員の意識改革にはとてもいい機会だったと思います。幸い留保事項もなく、一回で認証されました。 ただ、病院機能評価は医療の質そのものを問うものではありません。質という点では、DPCデータの活用が大きいですね。特に医師や職員にとって、ベンチマークの結果は大きなインパクトがあります。DPCは医療の効率化を進めるという意味合いも大きいのですが、医療の質の向上にも貢献します。

――病院経営において、今、一番の課題は何でしょうか。

マンパワー不足が一番ですね。北海道という地域特性もあり、特に医師不足の問題があります。救急医療にしても、もっと医師が増えれば十分な対応ができるのですが…。医師が不足している背景については、勤務医の絶対数不足と医師の地域偏在や診療科別偏在がありますね。特に診療科偏在に関しては、「医療者がどういうスタンスで仕事をするのか?」という本質的な問題があります。個人によっても違いますが、最近の傾向として、医師としての使命感と情熱が不足しつつあるような気がするのです。医師になろうとした時には、「患者さんのためにこういう治療をしたい」という初志があるはずですが、仕事に比べて自分の生活に重きを置く人が増えているように思います。「何のために医師になったのか?」という初心を改めて考えてほしいですね。医師として収入は程よくあり、労働負担は少なく、家庭生活に支障をきたさないような働き方が好まれているようにも思います。ただ、これは医師に限ったことではなく、世の中全般がそうなっているので仕方ないのですが…。

――難しい問題ですよね。医師としての使命感という一方で、自分の生活を守りたいというのも、ごく当たり前の希望ですし…。病院としてできることはあると思いますか?

初志を持ち続けられる環境を整えてあげること、でしょうか。ただ命令するだけでは当然ダメですし、内なる情熱を持ち続けられるようにすること。これは難しいことですが、医療者としての使命感と情熱が行動様式を決定します。環境を整えるためにはやはりマンパワーが必要なのです。 現在、当院の外来は700人(1日平均)ほどで、地域の基幹病院という役割を考えると入院患者数に比して外来患者数が多すぎます。このため、医師の労力がかなり外来診療に注がれています。すでに糖尿病の連携パスを運用し、泌尿器の連携パスを立ち上げてはいますが、地域の医療機関との連携をもっと進めていかなければなりません。そうすることで、急性期病院としての本来の役割である入院診療や救急医療にもっとパワーを注げるものと思っています。


広報部
広報部

事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。