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2009年04月20日

人を増やして週休2日制にしたら定着率が変わった――済生会吹田病院副院長・藤戸先生

社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会吹田医療福祉センター 大阪府済生会吹田病院 副院長 経営企画室企画担当部長 診療部泌尿器科科長 藤戸章 先生



今回のインタビューは、大阪府済生会吹田病院の副院長・藤戸章先生。ざっくばらんにお話いただくなかで、「うちは今、人がどんどん増えていて」という景気のよいお言葉が飛び出しました。なぜ人が増えているのか、その真相をお聞きしました。

――先生は副院長、泌尿器科科長のほか、「経営企画室企画担当部長」でもいらっしゃるんですよね。

経営企画室は去年の7月にできた組織です。実は当院は、今、人がどんどん増えていて、以前にはなかったポストが新たに増えています。これは、経営の健全化を進めるためにできたもので、副院長2人と医事担当マネジャーの松木さん、事務次長など7人が所属しています。院長、事務長、総師長という三役に対して、病院の方向性について提言をすることが目的。毎月2回程度集まって話し合いを行い、EVEでの分析結果や、コンサルティングによってわかった改善点などを整理して、「今後はこういう方向で改善していくべき」と、提言しています。

――新たな仕組みを設けたことで院内に変化はありましたか?

コンサルタントに入っていただいたことで、劇的に変わりました。他病院との比較を知ることができたというのが大きいですね。たとえば、診療材料にしても、廃棄物処理費用や委託費にしても、院内のスタッフだけでは交渉したところで他の状況がわからないので、「自院は安い」と信じるしかありません。ところが、コンサルティングを導入したことでわかったのですが、たとえば心臓カテーテルの場合、8%ほど割引して購入していたのですが、実は他ではもっと割引しているケースもありました。もちろん物流方法が違うとはいえ、本当にリーズナブルな値段かどうかはわからないということが、よくわかりました。これは大きな収穫でした。 診療材料の購入価格に限らず、DPCデータによって、他病院と“生の比較”が行えるようになったことは非常に大きなインパクトでした。

――先ほど「人がどんどん増えて」というお話がありましたが、他の病院さんでは、医師にしろ、看護師にしろ、「足りない、足りない」というお話をよく聞きます。

以前の病院は、許可病床数と同じくらいの職員数だと思います。ところが、当院は500床に対し、900人くらいの職員がいます。委託や派遣のスタッフも含めると1,000人は優に超えます。 医師は120人ほど。本来、当直は十分な仮眠が取れるという前提のもとに認められているはずですが、現実は大きく違います。日本の病院では、それが普通とされてきました。でも、それでは自分の身を削ってサービスを提供しているようなもの。そのため、当直明けの翌日を休みにしてあげようと思ったら、その分、医師が必要なのです。残念ながら当院では、医師の週休2日制は確保できておりません。医師数だけでなく、休みを増やすことに対する収入への担保ができておらずEVEなどによる経営改善に期待するところです。 それに引き換え看護師は、週休2日制を確保してあげるために人を増やしました。その結果、定着率が大きく変わりました。これまでは2‐3割前後の人が辞めていたのですが、現在では1割程度に減っています。 ただ、こうした対策は、どこでもできるというわけではありませんよね。地域の事情もありますし、人を増やすにはやはりお金が必要です。とはいっても、病院側に求められる機能は年々高まっているため、その分、人を増やす必要性も高まっています。ところが、人を増やせるだけの診療報酬上の評価があるかといったらそうではない。病院側の持ち出しになっています。求められる機能ばかりが増えて、評価が追いついていないという、制度に矛盾があるのではないでしょうか。

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広報部
広報部

事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。