GHCブログ

2009年04月22日

“下地”があって初めて連携パスが動く――函館五稜郭病院・髙田院長

社会福祉法人函館厚生院函館五稜郭病院●病院長 髙田竹人先生

髙田先生

「函館方式」と呼ばれることもあるように、地域連携がさかんな北海道南部地域。この道南地区の中核病院の1つである函館五稜郭病院では、近隣の診療所との病診連携が進んでいます。疾患別の地域連携クリティカルパスも活用してスムーズな連携を実現している同院の髙田院長に、その秘訣を聞きました。

――今年4月1日付でがん診療連携拠点病院に指定されましたね。

道南(北海道南部地域)では、市立函館病院に次いで2番目です。実は、これまでは北海道内で指定を受けている病院は10施設だったのですが、一気に倍の20施設になりました。 がん診療連携拠点病院に対して、国は、胃がん、大腸がん、乳がん、肝臓がん、肺がんの5大がんに関して地域連携クリティカルパスを作成するよう求めています。当院の場合、パスには比較的早くから取り組んでおり、胃、大腸、乳がんの連携パスはすでにあります。拠点病院に指定される以前に、厚生労働科学研究費補助金による研究班「全国のがん診療連携拠点病院において活用が可能な地域連携クリティカルパスモデルの開発」で、モデル事例として当院の連携パスが紹介されたこともあります。ですから、道内の拠点病院のなかには、当院の連携パスを参考にしようとしてくださっている病院さんも多いようです。

――連携パスに関しては、他の病院さんでは、なかなか上手くいかないという話も聞きますが、なぜなのでしょうか。

パスはあくまでもツールですから、ただ真似ても実際に動くかは別の問題です。当院の場合は、2001年から院内パス大会を定期的に開催するなど、パスにはもともと積極的に取り組んでいました。一方、近隣には当院のOBの先生方が開業しているケースも多く、非常に連携しやすい環境があります。また、「五稜郭セミナー」といって、地域連携に賛同していただける先生方を集めて研修会を行っています。これまでに10回以上開催していて、最近ではパスをテーマに挙げることが増えています。さらに、2002年には道南地域の6病院と共同で「道南パス研究会」を立ち上げました。この研究会では、各医療機関のパス担当者を対象に、近隣の温泉地に1泊してパスの作り方を学ぶ「道南パスパ」を開催しています。この第一回の集まりでは、幹事病院を務めました。

――「パス」+「スパ」という、いいネーミングですね。

(笑)。連携パスを作成する前提として、こうした“下地”がなければ、難しいのではないでしょうか。

――連携に当たっては、通信ネットワークを利用した情報共有も行っているのでしょうか?

「Gネット」というネットワークシステムを2007年秋から稼動し、検査や投薬情報、画像情報などの患者さんのデータを共有しています。ただ、当院のコンセプトは、多くの医療機関さんと情報を共有していこうというよりも、密接につながっている医療機関さんにいかに手厚いサービスをできるか。勉強会に参加してくださったり、紹介・逆紹介を積極的に行っている医療機関というのは、結局、限られてくるんですね。当院としても、患者さんを逆紹介するに当たっては、もともとお付き合いがあり、信頼のある医療機関にお願いしたいですし。現在、Gネットをご利用いただいている医療機関は、10施設強ですが、一足飛びに数を増やしていこうという考えは、今のところ、ありません。

――なるほど。ところで、がん関連では、がんに関する相談支援等を総合的に受けられるスペースを設けたとお聞きしました。

もともと1階に設けていた「医療総合サービスセンター」の拡張工事を行い、がん相談支援室、緩和ケア、持参薬管理などの機能を加え、がんに関する相談、説明、支援、指導がすべて一ヶ所で受けられるようにリニューアルしました。おかげで、新築して2年も経たないうちに、また工事をすることになりましたが…(笑)。現在、このフロアには、認定看護師4人、保健師、薬剤師、管理栄養士、事務職など27人が在籍しています。

――DPC導入の準備をご支援させていただいた際にも感じたことですが、五稜郭病院さんは、常に新しいことを取り入れられているイメージがあります。動きが早いですよね。

ありがとうございます。今年は、①がん診療連携拠点病院の指定取得、②病院機能評価ver.6の認定更新、③アウトカム評価の実施――という3つを目標に掲げています。このうち、1つ目はクリアしたので、残る2つをめざして取り組みを進めようと考えています。


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広報部
広報部

事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。