2009年06月02日
コメディカルがいかに医師を支援できるか――DPC病院の経営戦略セミナー
5月30日(土)、
保健・医療・福祉サービス研究会主催のセミナー「新しい機能評価係数創設に伴い変わる新DPC制度に対応した病院経営改善手法の具体策」にお邪魔してきました。
トップバッターは、GHCのお師匠こと、MMオフィスの工藤高師匠。DPC評価分科会で検討されている新・機能評価係数の中身について説明した上で、「これからのDPC病院はどうあるべきか?」について説明されました。
「新機能評価係数への対応」として、工藤師匠が挙げたのは、次の9つです。
1.DPC病院として正確なデータ提出
2.効率性指数(全病院の平均在院日数/自院の平均在院日数)導入時の対応
→稼働率優先の素泊まり入院の多い病院は戦術変更
3.後発医薬品への切り替え
4.救急医療と地域連携のさらなる充実
5.4疾病5事業関連への取組
6.診療ガイドラインに沿った医療提供
7.診療方針の明確化(アウトライヤー分析、標準化)とアウトカムの確保
8.医師、看護師、コメディカル、事務による多職種協働の「チーム医療」の徹底
9.DPCでの出来高部分の点数アップ→医学管理、リハビリなどの完全実施・算定
なかでも、「これからの急性期病院は、コメディカルが忙しい医師をいかに支えられるかが重要」と、多職種協働のチーム医療の徹底を強調しました。また、コメディカル自身の生産性を高めることも必要とし、「医師は医師にしかできない診療に特化するとともに、コメディカルも委託できるものは外部に委託し、各部署にも単純作業のための補助員を」と説明。実際に医事課長にセクレタリーをつけている病院もあるそうです。
続いて、「先進DPC病院の取り組み事例」として講演を行ったのは、NHKの「クローズアップ現代」でも取り上げられていた相澤病院の診療情報管理課長・椛島博彰さんと、聖フランシスコ病院の診療情報管理科長・山岡早苗さんのお二人。どちらもDPC分析システム「EVE」ユーザー病院さんです。
相澤病院・椛島さんは、DPCデータやその他院内のデータ、外部データを用いて実際に現場で行っている分析について説明。分析を行う際の視点は、「『悪い』ものは何? なぜ、『悪い』? 良くするには?」という、シンプルな三段階で考えればよいと話し、実際の分析事例を紹介してくださいました。また、「データ活用の一番のポイントは事務だけで持たず、現場にフィードバックすること」と強調。相澤病院では、病院経営会議、看護師長会議、診療部会議、病棟運営会議、各科会議などの院内での情報共有のほか、ホームページや紙媒体を利用した患者さんへの情報提供にも力を入れているそうです。(*
このページ、ご参照ください)
今年の4月にDPC対象病院になった聖フランシスコ病院の山岡さんは、医療の標準化と医療の質の向上のためには正確なデータが必須であるとし、データ精緻化に向けて行ってきた取り組みを紹介してくださいました。具体的には、医事課と診療情報管理科のコミュニケーション強化を図るため地下にあった診療情報管理科を医事課と同じ1階に増設するなどの“体制づくり”から、オーダリング、診療録、看護支援システム、医事システム、DPC入力支援システムを用いた“整合性の検証”、“適切なコーディング”を行うための対策、そして“教育”といった取り組みを行ってきたとのことです。
セミナーの最後には、工藤師匠の司会の下、3人の演者が登壇し、質疑応答が行われました。再入院の話から持参薬、平均在院日数、電子カルテ、NST、薬剤の選択についての話などなど幅広い質問が飛び交いました。「EVEなどのシステムを導入しても使いこなせないという話を聞く」という質問に対しては、椛島さんは「分析を行う時間がなかなか取れないですよね。ルーチンの時間を効率化することが先決かもしれません」「システムはあくまでもツールなので、あとはエクセルの技術等をいかにあげるかが重要」とコメント。また、山岡さんは「EVEを導入したことで単純な操作で分析が行えるようになりました。あとはEVEのデータと他のデータをいかに組み合わせるか」と述べました。1時間50分という時間設定に最初は驚いたものの、非常に充実した質疑応答タイムでした。
広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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