2009年06月04日
Dr.NemoのASCOレポート vol.2
【30/May/2009 Day2】GHCメンバーの1人、Dr.Nemoがお届けするASCOレポートの第2弾です。
個人的に着目した演題を3つほど。
■肺がん Abs#7501
<NSCLC(Stage IB and II)におけるアジュバント療法>
vinorelbine+cisplatin vs 経過観察 PhaseIIIのアップデイト情報
昨年から着目していたのですが、NSCLCのアジュバントに化学療法を行なうか、経過観察のどちらがいいか、という比較です。
そりゃいれたほうがよかろうとおもわれがちですが、副作用等を考えた上で対効果としての価値があるのか、という、ほかのがん種でも議論すべきアジュバントの考え方です。
今回の発表では、効果、コンプライアンス、副作用、それらを総合したQOL諸々を考えると、経過観察も選択肢として十分にありえる、という印象です。化学療法のDFS延長効果は確かに認められるのですが、QOLとのバランスを考えることも重要、という命題かと思います。
■結腸がん Abs#3045
<治療ワクチンの予備研究>
転移性結腸がん患者の(FoxP3+)-T-cell という免疫細胞を賦活化させたうえで化学療法を行なうとどうか、という研究です。
この免疫細胞を増やすため、増殖能のない特殊な結腸がん細胞を注射するので、ワクチン、という考え方になります。
結果はあまりおもわしくなく、有意差が出ない程度の改善。ポスターの前にこの研究のリサーチャーがいたので、質問したところ、「ラットではね…」と、ありがちな返答。しかし、たしかにがん細胞を捕食する免疫細胞が増殖し、それなりに活動はしているようなので、将来性に期待したいところです。コストは?との問いには、苦笑い…察してくれ、というわけですね。
■QOPI関連 Abs#6505
<医療コストと治療成果のバランス(カナダ)>
GHCで注目中QI(医療の質のインジケータ)関連の演題です。
遠隔転移のある腎細胞がん(RCC)の治療法として、アジュバントに免疫療法、分子標的薬といった標準的治療を行なった場合のバランスを検討していたのですが、費用対効果では免疫療法(ILやINF)が上、との結論。確かに、RCCへの免疫療法は「効果が出る人には出る」治療法なのですが、効果発現率が低いところが問題で、効果が高い人にとっては費用対効果も高いでしょう。対して分子標的薬は非常に高価な治療となりますが、それなりのDFS延長が示されており、それが証拠にスニチニブやソラフェニブといった薬剤はポピュラーになってきています。QIとして肝要な部分「標準的治療はどれ?」を議論するに当たって、RCCは非常に難しいところではありますが、全体への治療効果のインパクトをとるか、コストパフォーマンスをとるか、議論も盛り上がっていました。
※この記事は速報であり、のちに改訂を加える場合もございます
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